
アノテーションとは?AI活用における意味と必要性を解説
AI分野におけるアノテーションは、機械学習の正確性を高めるために必要なデータのラベリング作業です。本記事では、アノテーションの意味と必要性、種類を解説します
AI分野におけるアノテーションは、機械学習の正確性を高めるために必要なデータのラベリング作業です。本記事では、アノテーションの意味と必要性、種類を解説します
AI分野におけるアノテーションとは、テキストや画像などの正しいラベリングによって、AIモデルに学習させるデータの質を高める作業です。
AIモデルの構築に活用されている機械学習では、コンピュータが大量のデータを分析するなかで、パターンやルールを学習します。AIモデルがデータを正しく認識できないと、予測や判別の精度が下がるため、質の高いアノテーションが重要です。
本記事では、アノテーションの意味と必要性、やり方を解説します。アノテーションについて理解を深め、AIの活用効果を高めましょう。
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アノテーションを実施する目的は、AIに活用されている技術のひとつである機械学習のうち、教師あり学習という手法において、AIモデルにデータを正しく理解させることです。
AIモデルに正しくデータを学習させられれば、その分、データをもとにした予測・判別の精度を高められます。
以下では専門用語の解説を加えながら、順を追って解説します。
アノテーションは、機械学習の予測・分類精度を高めるために必要なプロセスです。
機械学習とは、大量のデータからパターンやルールを発見し、これを活用して新たなデータを識別したり予測したりする技術です。AIを構成する要素のひとつとして、人間の「学習」に相当する仕組みを再現します。
アノテーションは機械学習の予測・分析精度に、機械学習はAIモデルのアウトプット精度に影響を与えます。そのため、アノテーションはAIの活用における重要なプロセスなのです。
アノテーションは、教師あり学習の基盤となる教師データの作成に必要です。
機械学習には、3つの学習手法があり、それぞれ活用方法が異なります。
機械学習の学習手法 | 概要 | 活用例 |
---|---|---|
教師あり学習 | ・正しくラベリングされたデータ(教師データ)を学習させる手法 ・データの分類や判別、予測に用いる |
・画像の分類 ・テキストの判別 ・売上予測 |
教師なし学習 | ・正解のラベルがないデータから学習させる手法 ・類似性や共通点を見つけてグループ分けをする(クラスタリング) |
・顧客のグルーピング ・アソシエーション分析 |
強化学習 | ・コンピュータが一定の環境下で試行錯誤を行い、報酬を与えることで学習させる手法 ・システムやロボットの制御に用いられる |
・対戦型ゲーム ・自動運転技術 |
このうち、教師あり学習の基盤となる教師データは、アノテーションによって正しくラベリングされたデータです。
たとえば、大量の写真データをもとに新たな写真を分類するケースでは、アノテーションの有無によって以下のように判別・分類の仕方が変わります。
教師あり学習と教師なし学習は目的に応じて使い分けるため、優劣はありません。新たなデータを正しく分類したい、判別させたいときは、教師データのアノテーションが重要です。
アノテーションを実行する際は、アノテーションの質にも注意しなければなりません。
たとえば、「人」の写真に誤って「ペット」というタグを付与すると、新たなデータの判別で誤った判断を下す可能性が高まります。誤ったラベルが増えれば、誤学習のリスクも上がります。
こうした質の低いアノテーションを行なうと、教師あり学習の精度が低下するため、命名規則や分類方法を統一したうえで、正しくラベリングすることが重要です。
アノテーションは、ビッグデータをAIで活用する際に必要です。ビッグデータとは、人間が把握できないほどの大量のデータ群を指します。
ICT機器やAIの発展にともなって、企業では取り扱うデータ量が増えています。たとえば、顧客の名前や住所といった従来のデータだけではなく、Webサイト上の行動履歴やメルマガの開封率など、さまざまなデータを取得できるようになりました。
企業が扱うデータはビッグデータに該当するほど膨大になっており、分析するためにAIを活用するケースが増えています。このとき、AIが正しくデータを理解できないと、正しい分析結果を得られません。
そこで、アノテーションによって、ビッグデータに「これは何か」という正確なラベルをつけることでAIモデルが学習しやすいデータを構築し、予測や分類の精度を高めるのです。
大量のデータを無秩序なまま保持していても、意図した通りにAIに活用させることは難しいため、アノテーションを通じてデータを整理し、データの価値を引き出す基盤を作る必要があります。
アノテーションには、大きく分けて4つの種類があります。
各手法を理解すると、AIの活用イメージがより具体化されるので、参考にしてみてください。
テキストアノテーションは、文章をテーマに沿ってラベリングし、分類する手法です。AIモデルは、テキストアノテーションを通じて、大量の文書データから特定のテキストを抜き出したり、類似性の高いテキストを集約したりします。
たとえば、論文に「医療」や「経済」などのラベルを事前に定義付けておくと、AIモデルはテキストから論文内容を判別し、カテゴリ分けを行ないます。
テキストアノテーションによって、AIモデルによる文書の要約や記事の分類が可能になるのです。
画像アノテーションは、画像に対してラベリングを行なう手法で、AIモデルが視覚情報を理解するための基盤となります。
画像アノテーションには、5つの手法があります。
画像アノテーションの手法 | 概要 |
---|---|
バウンディングボックス(物体検出) | 物体を矩形で囲み、位置と大きさを特定する |
セマンティック・セグメンテーション(領域抽出) | 画像をピクセル単位で分類し、各領域を明確化する |
ポリゴンセグメンテーション(多角形による領域指定) | 複雑な形状の物体を多角形で囲み、精密に領域を指定する |
ランドマークアノテーション(目印の検出) | 目や口などの目印を検出・マークし、詳細な情報を付与する |
クラシフィケーション(画像分類) | 画像全体にラベルを付与し、カテゴリを決定する |
これらの手法により、AIは画像内の情報を正確に認識・分類が可能です。
なお、連続した画像データで構成される映像データにも、画像アノテーションの技術が活用されています。
音声アノテーションは、音の種類や音量、音声の内容をもとにラベリングする手法です。まずは、音声を文字起こししてテキストデータに変換します。その後、テキストアノテーションを通じて、各単語やテキストに意味を付与する流れです。
音声アノテーションは、コールセンターでの顧客対応の分析や、スマートスピーカーにおける音声コマンド理解など、音声認識の分野で広く活用されています。
高品質な音声アノテーションにより、AIモデルが音声データを正確に理解することで、適切な応答やサービスの提供が可能です。
動画アノテーションは、映像内の対象物や動作、音声をもとにラベリングし、AIモデルの学習に必要なデータを提供する手法です。
動画は連続した画像と音声で構成されているため、画像アノテーションと音声アノテーション、テキストアノテーションの技術を組み合わせて実行します。
これにより、AIは映像内の情報を正確に理解し、行動認識や映像分類への応用が可能です。
アノテーションの実行方法には、「手動」と「自動化ツールの活用」の2種類があり、違いは以下のとおりです。
方法 | 手動 | 自動化ツールの利用 |
---|---|---|
概要 | 人間がデータに対して直接タグを付与する | 専用ツールを使い、データに自動でラベリングする |
メリット | 少量のデータであればすぐに実行できる | 短時間で大量のデータをラベリングできる |
デメリット | 大量のデータへの実行は非現実的で、時間と労力がかかる | 導入や運用にコストが発生する |
企業がビッグデータをAIに活用する際、手動でのアノテーションは現実的ではありません。 そのため、自社のニーズに合ったアノテーションツールを導入し、効率的に教師データを作成することをおすすめします。
AIを用いるデータプラットフォームであれば、アノテーションの自動化機能が標準搭載されていることが多い傾向にあります。こうしたツールであれば、アノテーションツールを導入しなくても、作業の自動化が可能です。
アノテーションを実行した教師データを活用する教師あり学習には、次の活用場面があります。
活用場面 | 概要 |
---|---|
自動運転 | ・歩行者や車両、信号機などの物体を認識する技術 ・安全な運転行動やルート選択を支援する |
画像認識 | ・写真や動画から物体・人物を識別する技術 ・防犯カメラや医療画像解析など多岐にわたる分野で活用される |
自然言語処理(NLP) | ・人間の言葉を理解し処理する技術 ・翻訳、感情分析、チャットボット開発などに利用される |
需要予測 | ・過去データや市場動向をもとに将来の需要を予測する技術 ・在庫管理や生産計画の最適化に活用される |
高品質なアノテーションによって作成された教師データを用いることで、AIモデルの性能を向上させ、実用的なシステムの構築が可能です
日本気象協会は、AIを活用して商品需要を予測する「商品需要予測コンサルティング」というサービスを提供しています。
商品需要予測コンサルティングでは、日本気象協会が収集している気象データと、各企業の販売データをAIで解析し、将来的に必要なモノの量を予測できます。AIの需要予測を活用することで、製造や販売計画、出荷量の最適化を図ることが可能です。
たとえば、気象データをAIで解析する際には、気温や降水量などがラベリングされており、教師データとしてAIモデルに学習させていると推測できます。
本事例から、アノテーション実行後の教師あり学習が高精度な需要予測を支えていることがわかります。
出典:AIリテラシー【第1回】AIが変える社会(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000816680.pdf
)
(2025年1月10日に利用)をもとに作成
アノテーションを実行する際のポイントは、次の3つです。
AIの予測や判別精度を高めるためには、適切なアノテーションが求められます。ポイントを押さえたアノテーションを実行して、AIモデルの活用精度を高めましょう。
アノテーションにおいて、不規則あるいは無秩序なラベリングは、AIモデルの学習精度を低下させるおそれがあるため、一貫性が重要です。
ラベリングのルールを事前に明確に定め、すべてのデータに対して統一された基準でアノテーションを実行することが大切です。
これにより、AIモデルの性能向上と信頼性の確保が期待できます。
偏ったデータは、AIモデルの誤判断(バイアス)を引き起こし、精度の低下を招くおそれがあります。
多様なデータを収集し、バランスの取れたデータセットを構築することが重要です。
たとえば、オーバーサンプリングやアンダーサンプリング、SMOTE(Synthetic Minority Over-sampling Technique)などの手法を用いて、データバランスの調整が求められます。
アノテーションの一貫性や品質を確保するためには、事前のデータ統合が重要です。
データが分散したままアノテーションを行なうと、データの欠落や矛盾が生じて、AIモデルの学習精度が低下するおそれがあります。
そのため、データプラットフォームを導入し、分散しているデータの整理・統合が必要です。データの統合によって、整合性を保つとともに、データ管理やアノテーションの効率化が可能です。
その結果、高品質な教師データを構築でき、AIモデルの性能向上につなげられます。
アノテーションの事前準備として、データ統合プラットフォームである『Data Cloud』を導入しましょう。
『Data Cloud 』は、企業内のすべてのエンタープライズデータを1つのプラットフォームに集約し、データの分断を防止します。顧客情報のように構造化されたデータだけでなく、PDFやメール、通話内容の書き起こしといった非構造化データにも対応している点が特徴です。
SalesforceのAIである『Agentforce』と連携し、出力内容を正確かつ信頼性の高い状態にブラッシュアップする「グラウンディング」を自動化できるため、高度なモデルトレーニングは不要です。
アノテーションとは、機械学習における教師あり学習の基盤となる教師データの作成に必要な作業で、テキストや画像などのデータを正しくラベリングする作業です。
AIモデルは、アノテーションによってラベリングされたデータから情報を理解し、パターンやルールを発見します。アノテーションの質がAIモデルのアウトプットの精度を左右するため、質の高いアノテーションが求められます。
企業が扱うビッグデータに対してアノテーションを手動で実行することは、非現実的です。そのため、アノテーションの自動化ツールや、アノテーションの自動化機能を搭載したデータプラットフォームの活用をおすすめします。
AI搭載型のデータプラットフォームに社内データを統合すれば、データ管理の効率化や活用精度の向上も期待できます。
『Data Cloud 』は、企業のデータを統合し、管理・分析をサポートするデータプラットフォームです。SalesforceのAIエージェントである『Agentforce』や、各ツールとの連携も可能であるため、業務効率の向上につながります。
以下の資料では、AIを活用して生産性を向上させるヒントを幅広く紹介しているので、あわせてご覧ください。
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