



CRM(顧客関係管理)は20世紀末に登場した新しい概念だと思われがちです。用語自体はたしかに最近登場したのですが、顧客を管理する習慣はお金自体よりも古くから存在します。
最も古い商取引の記録は約2万年前にさかのぼります。現在のパプアニューギニアにあたる地域では、黒曜石のナイフが島々の間で取引されていました。黒曜石の鉱脈をもつ島と、そうでない島との間で交易が行われていたのです。当時、黒曜石はナイフやその他の切削道具に適していたことから、非常に貴重な資源とされ、初期のヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸でも広く取引されていました。
取引を成功させ、継続的にビジネスをするための必須条件を今と昔で比べてみると、何世紀にもわたって本質的にはほとんど変わっていないことに気づきます。成功に欠かせない3つのポイントをご紹介します。
- サプライチェーンにおける買い手と売り手
- その所在地
- 何を売買しようとしているのか
旧石器時代でさえ、「新しい顧客を見つけるよりも、既存の顧客に売るほうが簡単であり、その関係を大切に育むことが楽だ」という認識はあったに違いありません。当時、顧客情報をどのように記録していたのかは定かではありません。単に頭の記憶に頼っていたのか(それなら競合に知られる心配はありません)、あるいは昔の顧客リストのようなものが存在していたのかもしれません。ゴビ砂漠をラクダで横断したり、ちっぽけな船で大海原に乗り出したりするときのリスクを考えれば、当時の交易商が優れたマーケティングと営業の知識を持ち、顧客の情報をしっかり把握していたことは、ごく自然なことと言えるでしょう。

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取引が発生すれば会計も発生する
誰が何を所有していて、誰が誰にいくら借りているのかを記録するには、何らかの記号や恒久的な記録手段、そして何千年もの歴史を持つ「会計」という仕組みが必要でした。当然ながら、そこには人の名前や所在地といった情報も含まれており、それが初期の「顧客データベース」となっていたのです。また、当時からすでに簡単なセグメンテーション、つまり顧客の分類も行われていたはずです。おそらくは財力や支払い能力を基準にしていたことでしょう。したがって、「CRMの概念はいつ生まれたのか」という話をする際には、あまり視野を狭めすぎないようにしましょう。CRMははるか昔から存在しており、CRMこそが、ビジネスや行政機関、そして国家の成功を支えていたのです。
時代は20世紀へ
さまざまな記録管理や会計処理の手法、装置が現れては消え、やがて商用コンピューターが登場しました。1950年代後半から1960年代初頭にかけて、記録管理のニーズがあり、かつ十分な資金を持つ組織は、こぞって自動化技術を取り入れ始めました。当時の主な用途は、銀行や証券取引所、行政機関における会計記録の管理であり、それは会計専用機やコンピューター上で行われていました。その後、コンピューターの価格が劇的に下がったことで、1970年代には中堅・中小企業でも導入できるようになり、「コンピューター革命」は一気に広がっていったのです。
当時、顧客リストは経理部門が管理しており、営業担当者は自分用の記録をインデックスカードで保管していました。カードはトレイに並べたり、Rolodex に差して使っていたのです。意外なことにこの1950年代に発明されたRolodexは、今でもAmazonで販売されています。機械化に反対する人は想像以上にたくさんいるのかもしれません。そうだとしたら、彼らの意見にもう少し試験に耳を傾けるべきかもしれませんね。
やがて、他の分野、特に営業部門においても自動化の有効性が徐々に認められるようになり、わずか数年のうちに、デジタル形態のCRMが登場することとなったのです。
営業とマーケティングの自動化
現在知られているCRMの原型は1980年代に誕生しました。Robert KestnbaumとKate Kestnbaumは、データベースマーケティングの先駆者でした。データベースマーケティングは、顧客データベースを統計的に分析し、マーケティング施策に反応しやすい顧客を特定するダイレクトマーケティングの手法です。この概念は急速に広まり、KestnbaumはRobert Shaw とともに、顧客生涯価値やチャネル管理といった新しい考え方や手法を世に送り出しました。CRMを最初に考案したのは誰かについては諸説ありますが、Robert Kestnbaumが初期の取り組みで重要な役割を果たしたことは確かです。
CRMの誕生について別の見解を持つ人々もいます。そのような人々は、テキサス出身のPat SullivanとMike MuhneyこそがCRMの発明者だと主張します。彼らが開発した製品「ACT」は当初、「自動連絡先管理」の略称とされていましたが、自動化された初のCRMと見なすこともできるでしょう。
製品としてのCRMの誕生
こうした先駆者に多くの企業が続き、1990年代には顧客データを管理するための新しい製品が次々と登場しました。こうした製品は「SFA」(Sales Force Automation)という略語で呼ばれ、データベースマーケティング機能と連絡先管理機能を搭載していました。当時オラクルに在籍していたTom Siebelは、こうした製品の先駆者の一人です。自らのソリューションを提供する企業Siebel Systemsを設立。その製品は当時の市場をリードする存在となりました。一方で、ERP企業もこの市場にビジネスチャンスを見出し、競争は激化していきました。しかし、すべての企業が高額で大規模なソリューションを提供していたわけではありません。たとえば、Goldmine社(1990年)やMaximiser社(1987年)といった企業は、中堅・中小企業でも手が届くパッケージソフトを提供しており、それでいて多国籍企業にも魅力的と感じさせる十分な機能を備えていました。これらの企業は、現在もなお事業を継続しています。
1990年代半ばには、市場は急成長を遂げ、現在「CRMシステム」として知られる、さまざまな形態と規模の製品が次々と登場しました。顧客は豊富な選択肢に恵まれた一方で、企業間の積極的な買収合戦により、1年後にどのベンダーと取引しているかを予測するのが難しい状況になっていきました。
そして1999年、CRMの歴史において2つの大きな変化が訪れます。
- Siebel社をはじめとする企業が、モバイルCRMやe-CRMの提供を開始
- Salesforceが登場し、クラウド型CRMを市場に投入
電子CRMとモバイルCRMの登場
技術の進歩により、CRM市場にも新たなデバイスやチャネルが登場しました。こうしたイノベーションにより、社内業務用途と顧客対応用途の両方が大きな影響を受けました。シーベルが「Siebel Sales Handheld」を発売すると、他のベンダーもすぐに追随し、さまざまな完成度や信頼性の製品が登場しました。市場のニーズがこうした動きを後押しし、ベンダーたちはそれにすばやく対応したのです。
サービスとしてのソフトウェア:SalesforceがCRMのリーダーに
Salesforceは1999年に創業しましたが、当初はあまり注目されませんでした。多くの競合他社はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)を一時的な流行とみなし、CRMの有力な手段とは考えていませんでした。Salesforceはまず中堅・中小企業を主なターゲットとしましたが、クラウドに顧客が移行する傾向に競合他社が気づいた頃には、すでに業界をリードするEinstein 1 CRMを提供し、世界No.1のCRMプロバイダーとなっていました。

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21世紀のCRM
現在のところ、CRM製品市場はまだ飽和には達していないようです。クラウド型CRM製品を携えた新興企業が市場に次々と登場し、既存ベンダーも従来のオンプレミス型ライセンスからクラウド対応のライセンスモデルに切り替えつつありますそして今、最新の傾向として注目されているのが、ソーシャルデータの台頭と、さまざまなソーシャルチャネル上で顧客とやり取りする必要性の高まりです。
スマートフォンの普及により、モバイルCRMは今や不可欠なものとなりました。変化のスピードは非常に速く、多くのベンダーがチャットボットからビッグデータ、AIに至るまで、最新のイノベーションに追いつこうと奮闘しています。
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