

足利市では、2022年からの8か年を対象とする「第8次足利市総合計画」を策定し、その中で目指すべき4つのチャレンジの1つに「デジタル技術で暮らし向上」を掲げています。日本最古の学校といわれる「足利学校」を有する同市は、教育にかける思いが深く、教育DXを推進する最善の体制として「産学官」による連携スキームを組みました。足利市からは行政経営部と教育委員会が参画したほか、地場の民間企業であるAeroEdge株式会社からCIO補佐官を迎え、足利大学から教育DX推進支援員(大学生)、そしてデロイト トーマツ コンサルティング合同会社から教育DX戦略アドバイザーが参画するプロジェクト体制を構築しました。KPI(重要業績評価指標)などでの実行成果の把握と施策検討への活用に留まらず、将来的には教育分野におけるエビデンスに基づく政策立案、すなわちEBPM(Evidence Based Policy Making)の実践を目指し、市内全ての小中学校(33校)でTableauを導入。導入から展開までの期間もわずか3か月足らずでした。
経験と勘のみに頼るのではなく、データを根拠に施策を考え、学校と情報共有を行うことが必須でした。統合的視点から可視化・分析できるようなTableauの存在が不可欠でした。
秋山 伸夫 氏行政経営部 行政管理課 総務・法規担当 総括主幹, 足利市
教員の働き方改革や児童生徒の「個別最適な学び」などを目指した各種教育関連システム運用を始めるにあたって、足利市が必要としたのは、さまざまなシステムから得られるデータを統合的に可視化し、インサイトを得られる分析・可視化ツールでした。学校現場の現状を踏まえつつ、さまざまな議論を経て、導入のしやすさやデータ連携の即時性という観点から、データ分析基盤としてのTableauの導入を進めていきました。
産学官連携により、教育DXでEBPMを目指す
現在、多くの自治体が学習系や校務系のシステムを導入していますが、統合的にデータを可視化し、EBPMの実践に向けてPDCA体制を整備するまでにはなかなか至っていません。そのような中、足利市の取り組みは先進的な実例であり、それを実現できた理由の1つとして、産学官連携で進められたことが大きいと言えます。
大学との連携がプロジェクト成功につながる
産学官連携の体制において、民間からCIO補佐官と教育DX戦略アドバイザーを招聘したことで、客観的な視点を入れられました。さらに“学”の部分では、足利大学の参画がプロジェクト体制の成功要因の1つになりました。将来、SEとしての活躍が期待される学生2人がPBL(Project Based Learning)として参画。Tableauに投入される各システムのデータの加工集計やマスターの整理などに携わり大いに活躍したのです。
広範なデータ分析による指導力、学力向上を目指す
現在は各システムの定着化のためにTableauを活用している段階ですが、足利市は将来的な構想としてより広範なデータ分析からインサイトを得ることによる教員の指導力向上、児童生徒の学力向上の実現を目指しています。学習における児童生徒の弱点が見えてくれば、教員が指導上どこに力点を置くべきかデータにもとづいて適切に判断できます。
児童生徒や教員それぞれの視点に立ってTableauを活用
足利市のプロジェクトでは学力の向上を標榜していますが、それは単に数字が上がればいいという偏差値至上主義のものでは決してありません。教員の負荷をできる限り軽減し、児童生徒一人ひとりに寄り添いながら、自ら学び、問題を解決していく児童生徒の育成を目指しています。「1人の児童生徒のため」という同じ方向性を共有するすべてのステークホルダーの力になるために、Tableauの活用を目指しています。
※ 本事例は2024年6月時点の情報です