

Salesforceの採用は2014年。属人的な営業スタイルをチームセリングに移行するにあたり、名刺情報の共有と営業システムの統合が望まれたためです。これにより顧客情報共有は達成されました。しかしながら、それ以上の活用に至るには高いハードルがありました。ダッシュボードはありましたが積極的に使われておらず、商談詳細はスプレッドシートによる管理が続いていました。会議資料の作成もスプレッドシートやスライドを利用しており、それらを作成する作業負荷を軽減し、営業スタイル改革をさらに進める必要がありました。抜本的な解決策を模索する中で、理想を実現するためには、入力業務をSalesforceに一本化し、Salesforceを“営業の背骨”となる基幹システムとして活用することが望ましいという結論に達しました。
2020年からSalesforce活用を拡大。すべての商談情報をSalesforceで管理することを徹底し、そのデータを使って意思決定をするように変革しました。営業担当者は、商談と活動の情報を更新するだけ良く、それに基づいて会議が開かれます。各部門にデジタルリーダーを置くサポート体制と商談進展と顧客フォローを支える情報提供など営業担当者に喜ばれる仕組みも提供することができました。
「C720」で顧客も社員も幸せに
2つの円から成るC720という大きなビジョンを描きました。片方は顧客に向けたもの。不動産オーナー、テナント、売主/買主、貸主/借主などさまざまな属性の顧客に対して総合的なサービスを提供していきたいという理念です。もうひとつの円は、社内へ。Salesforceを利用する社員に対して、デジタルを活用することによるさまざまな価値を提供したいと考えているのです。
営業担当者の“自分のメリットは何?”にこたえる
「詳細を入力しても管理側が喜ぶだけ」という意見を持つ営業担当者は少なからず存在しました。そこで各担当者の日々の営業仮説に対してフォロー出来ていない取引先や停滞している商談、過去成約した顧客一覧や失注からの掘り起こし、スコアリングなど営業に役立つ機能をリリース。また、すべての接触履歴から顧客の関心事項を抽出し、商談の際に役立てられる仕組みも提供しています。
トップのコミットメントと「アメとムチ」で情報入力を推進
CRM憲章としてSalesforceを利用する目的やルールを制定。社長がSalesforce活用を推進すべき理由について積極的に発信してくれていることがプロジェクト推進の原動力になっています。Salesforceに入力することで会議資料が完成するため、業務が楽になることを訴求する一方、人事考課にSalesforceの活用という項目を設けるなど、“ムチ”も取り入れました。
Salesforceとともにビジネスも成長
2014年にSalesforceを導入して以来、コロナ禍の停滞を経てもビジネスは成長してきました。現在、98%の担当者が毎日ログインしており、取引先登録数は年平均10.2%増、物件登録件数は同6.1%増えています。商談件数は年平均1万2000件。利用実態のアンケート調査では、約80%以上の営業担当がフェーズ管理、予実管理、Salesforceを使った会議ができているという結果が出ています。
流通系顧客向け業務の新展開とAI活用を模索
賃貸部門が始めたExperience Cloudを使った顧客やパートナーとのコラボレーションによる業務効率化が好評なことを受け、流通部門にも業務を効率化し、収益を高めるための仕組みを展開したい考えです。具体的には、賃貸同様に売主様や買主様、協力会社とのコラボレーションによる情報提供のプラットフォーム構築などです。現在、生成AIの活用テスト中で、Agentforceにも期待しています。
98%の担当者が毎日利用し、取引先数や物件登録は飛躍的に増加しました。商談登録も年間平均1万2000件あり、現在はフェーズ管理や会議でも活用しています。
打田 大輔 氏デジタル戦略部 CRM推進課長 流通事業部事業開発室 兼務, 三菱地所リアルエステートサービス株式会社
※ 本事例は2024年10月時点の情報です