

奈良県では、2022年3月に「奈良デジタル戦略」を策定し、DX施策を推進しています。そのビジョンは大別して2つ。1つは、県民に対する行政サービスの質を高めること。もう1つは県庁内における業務生産性の向上にあります。特に行政サービスの質の向上に関しては、行政側が給付対象となる人に対してプッシュ型でプロアクティブにアプローチし、サービスを提供していくという「届ける力」の改革が最重要課題だとしています。一方で庁内業務の生産性向上については、就労人口が減少する中で、職員1人あたりの仕事量は増大し、残業時間が増えてしまう現状に対応する必要があります。奈良県では、「クラウド・バイ・デフォルト」を掲げ、デジタル活用前提で業務プロセスを全面的に見直すとともに、クラウドで提供されているサービスを活用し、急激な社会変化にも対応できるようDXを進めています。
「届ける力」を高めるという私たちの構想に、1人の住民を起点に考えるSalesforceのCustomer 360のコンセプトが合致したのです。
湯山 壮一郎 氏副知事, 奈良県
組織や業務ごとにバラバラに提供されていた子育て支援サービスを統合的に提供する仕組みとして、奈良県が取り組んだのがSalesforceで構築する「奈良っ子はぐくみアプリ」の開発でした。関係機関が連携し、県民一人ひとりにパーソナライズされた子育て関連サービスをデジタルで提供するというものです。
「届ける力」を重要視、スピード感のあるサービス展開を目指す
たとえばコロナ禍では、感染予防やまん延防止策、さらに経済面でも給付金の支給など、とにかく一刻を争う場面に直面しました。ですが、誰がダメージを受けているのか、困窮しているのは誰なのかを把握することは難しいという課題が浮き彫りになりました。「今後は『届ける力』が重要であると考え、スピード感のあるサービス展開を目指してSalesforceを活用した」と言います。
住民1人に寄り添うサービス展開がSalesforceの思想と合致
住民視点に立ったパーソナライズされたサービスの展開を目指した奈良県ですが、その構想にSalesforceの思想が合致していました。奈良県では、行政の施策としてキーとなってくるのは、施策の拡充だけでなく、いかに必要な支援を必要とする人に届けるかだと考えます。市民を顧客と見立て1人の情報を360度見渡せる、まさにSalesforce Customer 360の概念は奈良県のデジタル戦略に重なるものでした。
共通基盤が整備されたことにより、今後はスピーディなサービス実装が可能に
まだスタートしたばかりの「奈良スーパーアプリ」ですが、今後さまざまな行政サービスを展開する予定です。Salesforceをプラットフォームに活用し、標準化された共通基盤が整ったことから、早ければ1、2か月というスピード感のある形で新たなサービスの実装も可能になると言います。奈良県の湯山副知事は「データ駆動型の政策を行う第一歩が整った」と語ります。
プッシュ型のアプローチで“県民ジャーニー“を見据えていく
奈良県は今後、スーパーアプリから申請できる手続きを拡充させ、住民利便性を向上させる予定です。1つのサービスを横展開することだけでなく、将来的には、データを活用し、たとえば子育て世帯への支援など、必要な人にプロアクティブな行政サービスをプッシュ型で届けることを目指しています。カスタマージャーニーならぬ“県民ジャーニー”を見据え、デジタル改革を加速させていきます。
※ 本事例は2024年3月時点の情報となります。掲載している内容、所属や役職は取材当時のものです。