

「お客様に親しまれ信頼され地域社会の発展に寄与する」という理念のもと、琉球銀行は沖縄で最も長い歴史を持つ地域金融機関として、地域経済の発展に寄与してきました。中期経営計画「Empower 2025」のもと、個々のお客様のライフイベントに寄り添うサービス品質の向上を重視。伝統を大切にしながら、サステナビリティ(SDGs)やデジタル化への取り組みを強化し、地域とともに持続的な成長を目指しています。
Salesforce導入以前、琉球銀行の営業支援体制は複数の課題を抱えていました。
既存のCRMツールは2014年の導入から10年以上が経過し、老朽化が進行。オンプレミス基盤のサポート終了に伴い障害が頻発していました。加えて、ノーコード/ローコードの仕組みではなかったため、改修にはコーディングが必要で、修正も容易ではありませんでした。結果としてシステムは複雑化し、現場での継続的な利用が困難な状況に陥っていました。
また、情報は複数のシステムに分散して属人化が進み、顧客対応の質やスピードにばらつきが生じていました。案件情報も融資関連のみに限定され、それ以外は担当者ごとに個別で管理されていたため、顧客の全体像を把握した上での、より深い提案は困難でした。
さらに、営業店の行員が減少傾向にある中、顧客一人ひとりに十分な時間を割くことが難しくなっていました。若手行員の増加に伴う業務知識やスキルの不足も課題となり、その負担が経験豊富な役席者に集中していました。
経営層にとっても、営業状況をリアルタイムで把握する手段が限られていました。営業実績の集計には膨大な時間(担当者1人が1カ月を要するほど)がかかり、正確なデータに基づく戦略的な意思決定が遅れるという問題も抱えていました。これらの課題が、業務効率の低下、情報共有の遅れ、部門間の連携不足を招き、紙ベースの業務が依然として多いことも、現代的な働き方への移行を妨げていました。
顧客理解の深化と「営業スタイルの高度化」の実現
お客様一人ひとりを深く理解する上で、ご結婚やご退職といった「ライフイベント」や、ご家族構成などの「世帯情報」は極めて重要です。FSCは、こうしたお客様の人生に深く関わる情報を、標準で備えています。
これにより、取引履歴や案件情報だけでは見えなかったお客様の背景までを一体的に把握できるようになりました。
さらに、今後はAIがこれらの包括的な顧客情報を分析し、最適な提案を「ネクスト・ベスト・アクション(NBA)」として営業担当者へ提示する機能の活用を検討しています。これにより、お客様の状況に真に寄り添った、金融商品にとどまらないコンサルティングやビジネスマッチングなど、多角的な提案へとつなげていきます。
自分たちの手で“育てる”銀行システムへ
琉球銀行がSalesforce導入を決断した最大のポイントは、自行で柔軟に運用できる点でした。旧CRMは外部ベンダーへの依存度が高く、改修のたびに時間とコストが膨らみ、スピードと柔軟性を損なっていました。Salesforceはノーコード/ローコード基盤を備えており、機能の変更・追加を内製で迅速に実施できると判断。現場のニーズに即応できる体制を構築しました。標準機能の定期的なアップデートや、「AppExchange」を活用した高い拡張性も評価の対象でした。導入後は、営業統括部、総合企画部デジタル業務革新室、事務統括部システム企画課、システム子会社(リウコム)のメンバーで組成された内製化チームを結成し、「標準機能の優先」を方針に継続的な改善を進めています。これにより、従来1~2カ月を要していた軽微な修正がわずか1~2日で対応可能となり、業務スピードは大幅に向上しました。
業務効率化とリアルタイムな意思決定の支援
Salesforceの導入は、従来多くの時間を要していた事務作業を効率化しました。入力項目の集約、モバイル活用(スマートフォンでの操作や音声入力、AppExchange「UPWARD」連携)、レポート・ダッシュボードによる集計の自動化によって、行員は「お客様と向き合う時間」の創出に成功しています。特に、営業店の行員が自ら条件を設定し、レポートやリストを作成できるようになった機能は現場から高く評価され、本部への依頼削減と情報取得のリードタイム短縮につながりました。各担当者・店舗の活動や案件の進捗がリアルタイムで可視化されたことで、経営層は営業状況を即座に把握し、迅速な戦略的意思決定を行えるようになりました。結果として、不正確なデータに依存するリスクも低減されています。
今回の取り組みは琉球銀行だけの改善に留まらない。地域全体のデジタル化を促し、沖縄の次の一手を創る一歩になるはずです。
遠田 祐介 氏総合企画部 デジタル業務革新室 調査役, 株式会社 琉球銀行
琉球銀行がSalesforceを選択した最大の決め手は、他社製品にはない将来性と柔軟性でした。オンプレミスシステムの単純更新も検討しましたが、数年ごとの更新コストや手間が課題となり、クラウドベースのシステムへと舵を切りました。国産のクラウド製品とも比較した結果、コスト面ではSalesforceが上回ったものの「内製で新しい機能を追加し続けられる点」や「AIなど最新技術を継続的に取り込める点」進化し続ける基盤であることが大きく評価されました。
Salesforce Professional Servicesによる伴走支援も、他社との大きな差別化要因でした。プロジェクト初期の課題に対し、技術アドバイザーとして参画。難易度の高い要件を安易なカスタマイズに頼らず、標準機能で実現する方法を粘り強く策定し、プロジェクトに貢献しました。このアプローチは、将来の拡張性やメンテナンス性を担保し、継続的なシステム改善に向けた強力な基盤となります。Salesforceの定期的なバージョンアップにもスムーズに対応でき、長期的な利用価値を最大化する上で非常に有益な支援でした。
将来的には、琉球銀行グループへも展開することで、更なるシナジーの発揮を目指しています。更に本プロジェクトを通じてSalesforceのスキルを習得し、その知見を活かして沖縄県内の他企業への導入支援を行う構想も描かれています。これにより、地域全体のDXを加速させ、持続的な成長を実現することを目指しています。