

少子高齢化が進む中、約377万人が住む日本最大の基礎自治体(市町村)である横浜市も例外ではなく、少子化が始まっています。その対策として同市では、2025年までの中期計画の基本戦略に「子育てしたいまち」を設定。さらに市民に「大切な時間をお返しする」ことを目指した「横浜DX戦略」を策定しています。その戦略を具現化するべく横浜市が取り組んだプロジェクトの一つが、Salesforceを活用した子育て応援アプリ「パマトコ」の開発でした。市長直轄のプロジェクトチームを組むことで、これまで分断されがちだった子育てに関する機能と情報の集約に成功。CRM基盤を活用したことで、出産、幼児期、就学期と子育てのステージに合わせた切れ目のない包括的なサポートを可能にしました。将来的には、データを利活用したEBPMの実現も視野に入れています。
データの有効活用を念頭に置いていました。そのためにもパーソナライズした情報が不可欠。 その意味でもCRMで世界No.1の実績を持つSalesforceがマッチすると期待しました。
永松 弘至 氏こども青少年局総務部企画調整課 担当課長, 横浜市
「パマトコ」アプリは、職員側をLightning Platform、住民側をExperience Cloudで構築。CRM基盤を活用することで、住民一人ひとりの情報を「360 °View」で一元化し、出産から就学時まで切れ目のない子育て支援を実現しています。このシームレスなサービス提供を実現するためには、各部署に存在する既存のシステムとSalesforceを連携。その際、Salesforceプラットフォーム上でシングルサインオンを実現するなど利便性の高い仕組みを整えました。
市長直轄プロジェクトで徹底的に機能と情報を統合、さらには柔軟な改修も実現
縦割りで分断されてしまいがちな自治体プロジェクトですが、横浜市では市長直轄プロジェクトとしてチームを組織し、全庁への影響力を持つ部署と連名で通知を出す、など横串を差しての体制で推進するための様々な工夫を実施しました。その結果、調整部門が多岐にわたる中でも「子育て」関連サービスを集約することに成功しました。さらに、つくって終わりのシステムとはせず、利用者の要望を取り入れながら改修を続けています。利用者のアプリに対する関心も高く、3か月で700件の要望が寄せられています。
わずか1年半のスピード構築・導入を実現
パマトコは、構想から含めてわずか1年半の驚異的なスピードで展開しています。スピード導入が実現した背景には、横浜市がプロジェクトチーム体制を推進したことはもちろん、パートナーであるデロイト社がSalesforceを活用した自治体システムに知見を持ち、自治体のデータモデルのアセットを保持していたことも寄与しています。
単なるサービス統合アプリではなく、「住民CRM」によるデータ利活用を描く
当初からデータの利活用を目指していたことから、システム内に蓄積するデータの帰属も重要でした。パッケージシステムの中にはデータの主権がメーカー側にあるものも散見されますが、Salesforceはデータ主権がユーザー(住民)である点も評価されています。既に次の施策につながるデータ活用も始まり、キャンセル待ちのイベントを可視化し、次年度の計画に役立てることも実現しています。
市が持つ基礎データシステムと連携を拡大、職員の業務効率化にも注力
パマトコでは、現在、就学前の子育て支援を行っていますが、今後は中学生まで対象児童を拡大すると共に、システム連携も強化する予定です。母子健康手帳とデジタル庁が開発した情報連携システム(Public Medical Hub:PMH)やマイナンバーとの連携することで、利便性を向上。さらには、職員の業務効率化を進め、労働力不足に備える人的負担の軽減に取り組んでいきます。
※ 本事例は2025年2月時点の情報です