株式会社リバネス

ビジネスの中心はSalesforceデータ連携・集約・分析が実現する複数サービス間シームレス個客体験

サービス成長に伴い顧客数増加だけでなく顧客属性の多様化に直面したリバネス
Heroku連携機能追加で「個客」分析、開発効率、生産性向上
顧客データ集約・活用サイクルの確立で新たなビジネスチャンスの源泉に繋げる

株式会社リバネス(以下、リバネス)は、Salesforceを長く使ってきた企業です。Salesforce導入により営業改革を達成した後も、次々とSalesforceの新たなサービスだけでなく、AppExchangeパートナーのソリューションも追加し、さらに人材育成の仕組みも整えることで、Salesforceを中心に業務を回す体制を定着させています。その同社が、Herokuを加え、C360の効果をさらに引き出す仕組みに進化させたことで、革新的なプラットフォーム戦略を実現しました。
 
 

1. 商談を管理する文化の定着から、会員管理、社員教育、AIの活用までフォロー

リバネスは、Leave a Nest(巣立ち)という言葉を社名とする企業です。15人の理工系学生によって2001年に創業し、「サイエンスとテクノロジーをわかりやすく伝える」ことをコアコンピタンスとして、研究者と教員、学生をネットワーク化し、人材教育商品の開発や若手研究者の研究支援、企業の海外進出支援など、科学技術領域における多様な事業を手がけています。

同社はまだ社員数が約30人程度であった 2014 年に Salesforce を導入し、活用をはじめました。導入のきっかけは、従業員それぞれが表計算ソフトを使った見積、売上、請求を行っていたために、請求漏れが目立ち始めてきたことでした。Salesforce導入により、ファイルとして分散していたデータをSalesforce上に集約、プロセスを一連の流れとして可視化する仕組みを構築したことで、売上予測も可能になっただけでなく、各マネジャーのレポート作成にかける時間をほぼなくすことができました。また、Sales Enablement (旧 myTrailhead) も導入。Sales Enablement にクイズ感覚で取り組める社内向け教育コンテンツも集約することで全社員が利用するように。Sales Enablement を社員教育・評価プロセスの基盤として活用することで社内での Salesforce 定着促進と、マネージャーによる評価の透明性確保という一石二鳥の成果を得ました。
こうして Salesforce 利用が組織に定着し、従業員およびその組織の生産性向上を実現した次のステップとしてさらなる機能拡張を重ねていきました。AppExchangeから経費精算のアプリを追加し、クラウド名刺管理アプリとも連携。Account Engagement(旧Pardot)も導入し、会員向けのメール配信と連動した行動追跡も可能になりました。
さらには、Einsteinの活用も本格化。商談のスコアリングでは、レポートとダッシュボードの限界値より詳細な項目を設定し、多くの情報を視覚的に把握できます。会員データも掘り下げ、インフルエンサーや自社のファンなどを発見したり、イベント参加意欲をスコアリングして個別にアプローチしたりできるようになりました。

このように、同社はSalesforceを中心として、さまざまな取り組みを行い、社内プロセスの合理化やサービスの付加価値向上に取り組んできました。その過程で、自然に Salesforce上に社内・社外のさまざまなデータが集約されていき、Salesforce はマスターデータを統合・管理基盤の中心となっていきました。取締役CIO 吉田 丈治氏は、次のように話します。

「2019年のDreamforceに参加してC36Oのプレゼンテーションを聞き、“自分たちが元々やりたいと考えていた形をうまく表現してくれた”と感じました。弊社の場合、すべてのデータはSalesforceに入っている状態になっているわけです。そこで、次にどう活用しよう、どのように実装すべきだろうかと考え始めました」

 
 

2. 「リバネスID」の導入でログイン集約、個客体験の向上のサイクルを構築

当時、同社は会員数の急増と共に、会員属性の多様化という課題に直面していました。それまでの主なターゲットは科学技術領域に親しむ小中学生たちでしたが、大学や研究機関の研究者に加えてビジネスに携わる人から定年退官後に思索を巡らす研究者までもが含まれるようになってきたのです。同社のサービスは、一時的につかうものではなく一生使うものへと育ってきていたのです。

各会員「それぞれにとっての」優れたサービスを提供したり、興味・関心の強いサービスを提案したりするためには、会員一人一人が違う興味や関心を持つことを踏まえて、それぞれがその人生の中で利用したサービスの履歴を正確につかんでおく必要があります。どのタイミングで、どんなサービスに関心を示してくれたのか、サービス利用後の満足度はどうだったのか、などの各会員ごとに付随する行動記録があるとより良い価値の提案に繋げることができます。
ただ、会員のライフサイクルが一生に及ぶとなると、メールアドレスや住所、電話番号のみならず、ライフイベントなど人生の節目や、所属先が変わったり、それにより関心を持つ分野が変わることを考慮していく必要があります。さらに、同時に複数の所属先を持つ研究者も少なくありません。会員数が増えれば増えるほど、各会員一人一人に対して、こうした情報を把握するためには、情報をアップデートする必要がありますが、それを社員が対応していくのは現実的ではありません。したがって、会員ご自身で自分の情報アップデートをセルフサービスで行うことができる仕組みが必要なのです。

とはいえ、単に会員情報のアップデートをセルフサービスで行えるようにするだけでは、利用者に支持を得られるとも限りません。そのため、まず会員にとって有用な情報を提供して利用を促進させつつ、会員がさまざまなアクションを容易に実行できるようなカスタマーポータルを開設する方向性を決め、まず研究費申請のためのポータルを移行してスタートさせる形を取りました。

この中核となるのが「リバネスID」です。リバネスの提供する事業は複数に渡りますが、各サービス毎に必要としていたそれぞれのログインIDを一元化することで、会員の利便性の向上を実現しました。さらにすべての会員のデータをSalesforce内で管理する仕組みにしました。

一方で、フロントの UI の開発プラットフォームにはHeroku を採用。Salesforce と Heroku 間のデータを同期できる Heroku Connect の活用が決め手の一つでした。Heroku Connect でデータ連携する際にデータベースの管理処理を Salesforce 上で実装すると、バックエンドのユーザーインターフェースを作る必要がないだけでなく、ノーコードで対応することができる点が魅力でした。吉田氏は、「Heroku Connectにはデータの更新ログをトラッキングできる機能が標準提供されている為、ユーザーが何を行ったのかの履歴確認機能を自分たちで構築する必要がありません。ユーザーが預けてくれた情報を大切にするからこそ、この機能を高く評価しました」と話します。

情報戦略事業部 新田 翔氏は、「HerokuならGitHubと連携させることでコードを管理できるだけでなく(※)、連動性の高いパイプライン管理機能があります。運用環境と開発環境、検証環境を一致させられることで、開発環境と運用環境のギャップをなくすことができる仕組みが備わっていることがすばらしく、サービスで今、求められていることをタイムリーに実現し、すぐに提供できるよう、必要な機能をマイクロサービスで素早く作り、リリースすることができます」と話します。こうしてHerokuをフロントエンドプラットフォームとし、さらに Salesforce と連携させることで、約3万の同時アクセスに耐えながらも的確なサービスを提供できる基盤となる会員ポータルを作り上げることができました。

(※) Heroku Dashboard でアプリの Deploy タブからクリック操作だけで GitHub と統合することができます。

 
 
 
 
 

3. 個客を「深く知る」ことから生まれるビジネスニーズへの気づき

リバネスIDを中心としたサービス集約の結果、組織全体で会員の行動データ取得から集計・分析を実行する能力は飛躍的に高まりました。行動データはAccount Engagement (旧称 Pardot)で取り、TableauとCRM Analytics(旧称 Tableau CRM)をフルに活用し、会員それぞれにまつわるすべてのアクティビティを可視化したことで、だれが何に興味あるかを一目瞭然にすることができました。なお、会員数は順調に増加していったことで、リバネスID数は初期の2000から2023年1月現在で28,000へと急増しています。

このように、すべての履歴をリバネスIDに紐づけていくことで、いままで以上に顧客を深く知ることができるようになりました。例えば、有料サービス顧客でもある会員の場合、営業担当者とのコミュニケーション履歴も紐づけて管理できます。このように、営業担当に求められるプロセス効率化だけでなく、担当者が代わっても、過去の経緯をきちんと振り返ってより良い提案をできる体制を作り上げることができたことにより、会員に提供するサービス品質の向上と、均質化にもつなげることができたのです。

科学技術に特化した領域で多くの会員が増加したことで、さらなるビジネス展開の展望も視野に入ってきました。情報戦略事業部 藤井 友哉氏は、「リバネスIDの認証サーバをHeroku上に立て、検証を進めています。将来は、たとえば研究機関のWebサイトにリバネスIDでログインできるようなプラットフォームへと育てていきたいです」と話します。

Salesforceの社内活用については、海外拠点におけるさらなる効率化に取り組んでいます。情報戦略事業部 木須 陵太氏は、「すべての拠点でSalesforceを使っていますが、日本ほど浸透していません。日本で過去に失敗したことをやってしまっているケースも散見されるため、同じ水準でSalesforceを活用していけるよう、日本からノウハウを発信することに力を注いでいきます」と話しています。

吉田氏は、「Salesforceを使い始めてから、会社全体として年平均20%成長しています。私たちのビジネスを支えてくれているのがSalesforceだと言えるでしょう」と終わりなきプロジェクトを総括してくれました。

 
 
※ 本事例は2023年3月時点の情報です
 

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