マーケティングはテクノロジーとともに常に進化してきました。しかし今日、人工知能(AI)の登場によって、その進化は単なる前進ではなく、大きな変革へと加速しています。AIはマーケティング担当者の働き方そのものを変えつつあり、顧客の期待もこれまでになく速いスピードで高まっています。
従来の手法だけでは、もはや変化のスピードについていけません。エージェント型AIへの取り組みをためらったり後回しにしたりすれば、競合に後れを取るリスクがあります。マッキンゼーが2025年3月に実施した調査では、78%の組織が少なくともひとつの業務でAIを活用していると回答しており、その割合は前年から大きく増加しています。
そこで活躍するのがMarketing Cloudです。Salesforceのコアプラットフォーム上にネイティブに構築された、エージェント型マーケティング向けの包括的なソリューションです。アクションにつながるデータ、部門横断のワークフロー、そして支援にとどまらず自律的に行動するAIエージェントによって、エージェント型マーケティングを実現します。コンテンツの作成やオーディエンス構築から、キャンペーンの最適化、大規模なパーソナライズまで、AIエージェントは常時稼働のコラボレーターとして機能し、あらゆるチャネルを双方向の会話へと変えていきます。
従来のオートメーションとは異なり、エージェント型マーケティングでは「離反リスクのある顧客のロイヤルティを高める」といった戦略を組織側で定義し、その実行はAIエージェントが担います。AIエージェントはコンテンツの作成、オーディエンス構築、メッセージのパーソナライズ、パフォーマンスの最適化、さらに部門やチャネル間の引き継ぎを調整するところまで自律的に行い、チームが戦略、創造性、事業成長のための業務に集中できるようにします。
このガイドでは、エージェント型マーケティングのメリットを引き出す方法と、今日から始めるための5つの重要なステップを紹介します。
1.ビジネスケースを明確にする
ツールやテンプレートに取りかかる前に、まず立ち止まり、解決すべき具体的なマーケティング課題を整理します。たとえば、数日で終わるはずのキャンペーン制作が数週間に及ぶ、パーソナライズの内容がチャネルごとに異なる、あるいは何が成果につながっているのか明確に見えないままメディア予算が消化されていく、といった状況です。こうした課題こそ、まさしくエージェント型AI導入の第一歩です。
まず、以下のポイントを考慮し、何を優先すべきかを判断します。
- どの反復作業が業務のスピードを低下させているのか
- パフォーマンスのギャップを埋めるリソースが不足している領域はどこか
- より高いスピード、スケール、またはパーソナライズの恩恵を受けられる領域はどこか
高いインパクトが見込める目標を特定したら、次に組織のAI活用度を評価します。人材、プロセス、テクノロジーが現在どの段階にあるのかを把握することが、今後の取り組みを進めるうえでの指針になります。
明確なひとつのユースケースから取り組むことで、時間とともに価値が積み上がり、より広範な導入に向けた具体的で魅力的な実証ポイントが生まれます。
2.データをAI活用に適した状態にする
最初から完璧なデータは必要ありませんが、Data 360によって統合され、アクセス可能なシグナルを欠くことはできません。
Data 360により、マーケティング担当者はリアルタイムの顧客プロファイルにアクセスできます。そのためAgentforceは、継ぎはぎのスプレッドシートや遅延するバッチ処理に依存することなく、より高度な判断が行えます。また、あらゆる変数や意思決定ツリーをマーケティング担当者が逐一設定する必要もありません。メディア投資の最適化でも、ロイヤルティオファーのトリガーでも、Agentforceはエンゲージメントシグナル、購買行動、嗜好をもとに、その瞬間に応じて自律的に行動します。
さらに優れているのは、Marketing CloudがData 360上にネイティブに構築されている点です。これにより、次のことが可能になります。
- システムや部門に散在する顧客データを統合する
- コードではなくクリック操作で、クリック、購買、サイト訪問といった主要なシグナルを活用する
- リアルタイムの顧客データをもとに、即時のアクションや高度なパーソナライズを実現する
Pacers Sports & Entertainmentなどのブランドは、このアプローチを活用し、セールス、サービス、マーケティングのデータをつなげることで、ロイヤルティと収益を高めるリアルタイムのパーソナライズを実現しています。
最初のステップは変わりません。手元のデータから始めます。Webサイトの行動データ、メールのエンゲージメント、基本的なセグメンテーションを活用し、そこから、反復を通じて徐々に広げていきます。目標は、最初のAI活用ユースケースを立ち上げ、勢いをつけることです。早く始めるほど、学習も加速します。
3.Marketing CloudでAIエージェントのユースケースを稼働させる
次のステップは、ユースケースを実際に稼働させることです。Marketing Cloudは、パーソナライズを支援するプラットフォームです。アクションにつながるデータ、部門横断のワークフロー、自律的に動くAIエージェントに支えられた双方向の会話を通じて、顧客ライフサイクル全体で最適な瞬間をパーソナライズできます。
Marketing Cloudの利用が初めてでも、すでに活用していても、まずはMarketing Cloudを使って、一般的なマーケティング目標にもとづいて構築されたAgentforceのすぐに使えるテンプレートにアクセスできます。これらのテンプレートは、AgentforceのAIによるスキル、トピック、アクションを組み合わせて作られており、ゼロから構築する時間を減らし、成果創出により多くの時間を割けるようにします。
以下に、組織の優先事項に応じて選べる、効果の高い取り組み例を紹介します。
Agentforceでキャンペーンを生成する
キャンペーン開発に数週間かかってしまう場合は、このアプローチが最適です。目標を自然な文章で伝えるだけで、推奨ジャーニーやメール、SMS、WhatsApp向けのメッセージ草案を含むキャンペーン概要を数秒で生成できます。さらに、SQLではなくプロンプトでオーディエンスセグメントを作成することも可能です。
ペイドメディア最適化で無駄な投資を排除する
チャネル横断で成果が出ていない広告を可視化し、設定したパフォーマンス閾値にもとづいてAgentforceが自動で配信停止できるため、手作業での掘り下げは必要ありません。さらに、キャンペーン目標や投資配分に関する推奨調整をリアルタイムで受け取れるため、常時監視をすることなくROASを最適化できます。
Personalization Decisioningで、すべてのエンゲージメントを1:1にする
Agentforceが、顧客ニーズとビジネス目標の双方に応えるリアルタイムかつ常時稼働のコンテンツと商品レコメンデーションを実現します。戦略を設定し、ルールを定義したら、あとはAgentforceに実行を任せるだけで、あらゆるやり取りでパーソナライズされたレコメンデーションを提供できます。
Loyalty Promotion Creationでオファーを自動化し、アクティブ化する
ロイヤルティオファーの管理で手作業の負担に悩まされる必要はありません。Agentforceなら、「今月1,000ドル以上購入した顧客に500ポイントを付与」など、簡単なプロンプトでプロモーションを作成し、導入できます。メール文面の生成から、ビジネス状況の変化に応じたプロモーション調整まで、あとはAgentforceがすべて対応します。
4.Agentforceの仕組みを理解し、組織の成果につなげる
Agentforceは、よくあるスマートアシスタントのひとつではありません。Marketing Cloudに組み込まれたエージェント型AIエンジンであり、常時稼働のコラボレーターとして機能します。
AIエージェントのユースケースはそれぞれ次の要素によって構成されています。
- スキル:実行すべきタスク(広告最適化、オファー作成、コンテンツのパーソナライズなど)
- テンプレート:必要なロジックとアクションをまとめた事前構成済みセットアップ。最小限のセットアップで迅速かつ信頼できる成果を得られる
- トピックとアクション:AIエージェントが従う具体的な指示と実行するタスク
これらのすぐに使える機能により、コードではなくクリック操作だけで素早い立ち上げが可能です。さらに、プロンプトテンプレート、フロー、エージェントビルダーといったツールにより、あらゆるユースケースを動的でスケーラブルな戦略へと発展させることができます。
たとえば、新しい製品プロモーションの立ち上げは、Marketing CloudのCampaign Creationテンプレートから始められます。ひとつのプロンプトだけで、ジャーニー構成、チャネルミックス、メールやSMSメッセージの初稿までを含む、新規プロモーション立ち上げのための包括的な概要を生成できます。特に複数のプロモーション立ち上げを同時に抱えるチームにとって、大幅な時間短縮につながります。
そこから先は、プロンプトテンプレートを使って、オーディエンスやキャンペーンの状況に応じてコンテンツを微調整できます。よりカジュアルなトーンにしたい場合や、ロイヤルティ会員向けにプレミアム機能を強調したい場合にも対応可能です。トーンに適応し、状況を理解し、顧客起点のデータの活用方法に関するガイダンスに従う推論を作成できます。
次に、フローを使って、キャンペーンの顧客行動への対応を拡張できます。最初のメールへの反応に応じて異なるジャーニーを開始したり、高価値リードを営業に引き渡したりすることも可能です。また、クリックしたもののコンバージョンに至らなかった顧客にサービスフォローアップメールを送信できます。フローは、手動での調整を必要とせずに、キャンペーンをより広範な顧客体験へとつなげます。
最後に、今後のキャンペーンや製品ラインへこのモデルを拡張する準備ができたら、エージェントビルダーを使って、組織に合わせたカスタムユースケースを設計できます。たとえば、Agentforceを活用して顧客関心度の高い商品を自動検出し、ロイヤルティランク、在庫状況、オーディエンスの嗜好に合わせて最適化されたキャンペーンプランを生成することが可能です。
Agentforceは、以下の機能を含む、AIエージェント活用のためのツールキットと考えることができます。
- プロンプトテンプレート:パーソナライズされたメッセージを大規模に生成
- フロー:複数ステップのプロセスを自動化し、アクションを拡張
- エージェントビルダー:ビジネスに合った再利用可能なソリューションを構築
テンプレートを活用して素早く立ち上げ、ツールを使って組織に合ったエージェント型マーケティングに取り組むことで、組織を成長させることができます。
5.チームのスキルを高め、障壁を取り除く
新しいツールには新しい働き方が必要になります。しかし、それが足かせになってはいけません。
Marketing Cloudはマーケティング担当者のために設計されているため、SQLや開発者のサポートは不要です。ただし、成功のためには、チームが学び、試せる環境を確保することが不可欠です。
エージェント型マーケティングが最も効果を発揮するのは、チームがAIエージェントを置き換えではなく、より賢く働くための創造的な協働パートナーとして捉えられるときです。マーケティングチームにとって、このことは手作業でのキャンペーン構築、リスト抽出、レポート作成に多くの時間を費やす働き方から、戦略立案、クリエイティブディレクション、顧客体験設計により多くの時間を使う働き方へとシフトすることを意味します。
定着させるための実践的なアプローチ:
- AIエージェントを試し、成功事例を共有し、周囲を巻き込んでいける「AIチャンピオン」をマーケティングチーム内で特定する
- 社内ハブを作成し、成功事例、成果、再利用可能なテンプレートを集約し、今後のキャンペーンでも活用できるようにする
- コンテンツオーナーにはプロンプトテンプレートのトレーニング、マーケティングオペレーションチームにはフローオーケストレーション、マーケティング担当者にはData Cloudの基本 など、役割に応じたイネーブルメントを提供する
マーケティング担当者が再スキル習得で重点を置く領域:
- ヒューマンスキル:クリエイティブディレクション、ブランドボイスの維持と管理、顧客への共感力
- AIエージェントスキル:プロンプトエンジニアリング、AIエージェントの監督と管理、パフォーマンス最適化
- ビジネススキル:キャンペーン戦略、データにもとづく意思決定、ROIを伝えるストーリーテリング
完璧さではなく、好奇心を育てることが大切です。マーケティング担当者がエンジニアになる必要はありません。いま自分たちと一緒に動き始めているAIを、どう導き、どうスケールさせるかを理解すれば十分です。マーケティング担当者がAIエージェントをパートナーとして捉えられるようになると、導入が進み、成果物のスピードが上がり、仕事がより創造的で、パーソナライズされ、インパクトのあるものへと変わっていきます。
次の一手は、始め、学び、前に進み続けること
エージェント型マーケティングは、すべてを一度に変える大転換ではありません。小さなスマートステップを積み重ね、その勢いを育てていくアプローチです。キャンペーン作成、メディア最適化、ロイヤルティプロモーションのどこから始めたとしても、次の一手は試し、改善し、広げていくことです。
Marketing Cloudは、ひとつのユースケースから多くのユースケースへと簡単に広げられるよう設計されています。あらゆるマーケティング業務をカバーするツール群によって、手作業から自律型へ、リアクティブからリアルタイムへと進化できます。そして、この変化をいま受け入れたマーケティング担当者は、単に効率化を実現するだけではありません。他には真似できない体験を生み出す存在へと進化していきます。
エージェント型マーケティングの未来に備える方法は、Dreamforce の基調講演で詳しく確認できます。
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