



企業がデジタルで場所を選ばない新しい働き方という必須課題に取り組む中で、CRMプラットフォームは顧客関係の育成をどのように支援できるのでしょうか?
この記事では、CRMソフトウェアの誕生からこれまでの成長を振り返り、現在と近い将来の顧客関係管理を形作るトレンドを解説します。CRMの新たな時代に向けたインサイトと提言をぜひお読みください。
CRMソフトウェアの誕生と進化
1999年、Salesforceはサンフランシスコのアパートの一室で、ある明確なビジョンの下に創業されました。創業者たちの目標は、「Sales Force Automation(営業支援)のための世界クラスのインターネット企業」でした。当時、SFA(Sales Force Automation)は新しいテクノロジーとして台頭しつつあり、営業はこれを利用してコンタクトを整理し、協力して案件を成約させることができました。営業支援ソフトウェアは、営業チームが見込み客や既存顧客の情報を1つの中央データベースで管理するのに役立ちました。リードや顧客の数が増えても、営業は必要なすべての情報を手元で確認できたため、顧客との関係を効果的に管理できたのです。
SFAは、1995年に生まれた新しいテクノロジーカテゴリーである顧客関係管理、つまりCRMの一部でした。SFAが営業と新規顧客獲得を中心とした概念であるのに対し、CRMは顧客関係の整理と管理に使用される各種のフロントオフィスシステムの総称でした。
2006年頃になるとインターネットは変化を遂げ、CRMテクノロジーも同様に変化しました。インターネットが社会に広く普及するにつれて、企業はマーケティング、営業、カスタマーサービスの要求に応えるため、より高度なテクノロジーを必要とするようになりました。顧客関係管理のあり方も変わったのです。顧客が商品を購入する際の選択肢が増えたため、従業員一人ひとりが顧客体験の向上に専念する必要に迫られました。
この間、Salesforceを含むCRMプロバイダーは、他の部門もサポートし、追加のツールを提供するなど、事業範囲を拡大していきました。プロバイダー各社は、営業、マーケティング、カスタマーサービス、さらにはデジタルコマースといった部門ごとに、独立した専用のプラットフォームを構築しました。しかし、共有のインフラストラクチャや単一のリレーショナルデータベースがなかったため、アプリケーション間の連携やデータ共有は依然として困難でした。
特にデジタルチャンネルが猛烈なスピードで急増する中、チームが効果的に連携するため、従業員は顧客について、まったく新しい方法で理解する必要がありました。たとえば、マーケティングチームとカスタマーサービスチームのメンバーが、営業チームが使用しているCRMソフトウェアを活用できれば、最善のマーケティングおよびカスタマーサービス手法についてより深いインサイトを得ることができます。企業は、従業員にデータハブを提供するためのより優れた手段を必要としていました。
完全に連携されたCRMというビジョンが姿を現したのは、2007年にSalesforceが単一のクラウドベースプラットフォームから新しいアプリケーションを構築、実行できるカスタムアプリケーションプラットフォーム、Force.comを立ち上げ、クラウドベースのCRMを導入してからでした。
それ以来、Salesforceは「Sales Force Automation(営業支援)のための世界クラスのインターネット企業」という当初のビジョンをはるかに超え、社内のあらゆる部門と顧客データを単一の連携型CRMプラットフォームに集約できる企業へと進化しました。

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顧客体験を向上するCRM連携
Salesforce Einstein 1のような連携型CRMシステムでは、従業員全員が顧客一人ひとりについての統合ビューを得られます。このビューでは、各リードや顧客が中心に表示されます。一元化されたプラットフォームがあれば、企業はこれらのコンタクトとの関係をパーソナライズできます。
このテクノロジーは、従業員が成功するために必要なデータを提供するだけでなく、顧客自身にも力をもたらします。企業がCRMプラットフォームや連携されたビジネステクノロジーを利用すると、顧客がバイヤージャーニーで体験するパーソナライズも向上します。これらのカスタマージャーニーを動かしているチームが、適切なデータにもとづいて関連性の高いエクスペリエンスをデザインするため、リードは自分が求めている製品やサービスをより簡単に見つけられるようになります。購入に至るプロセスがスムーズであれば、顧客の負担が軽くなり、今後もその企業で購入する可能性が高まります。
CRMの未来においても、ビジネスの中心にあるのは常に顧客です。連携型CRMのテクノロジーはすでに利用可能であり、企業がスムーズなカスタマージャーニーを提供できるよう支援する体制が整っています。しかし、現在の導入レベルを見ると、企業はこれらのビジネスツールの力をまだ十分に活用しきれていないことが伺えます。今度はこの点について見ていきましょう。
現在のCRMのトレンドと課題
ほとんどの企業は、CRMテクノロジーの利点をあまり享受できておらず、今でも連携やデータ集約の課題と格闘しています。ほとんどの企業の現在の利用状況とCRMプラットフォームの全潜在力との間には、まだかなりのギャップがありますが、企業はそのギャップを徐々に埋めつつあります。
たとえば、SalesforceがForresterに委託して実施した調査では、回答者の58%が「顧客、見込み客、取引先のデータソースが多過ぎて、容易に把握することができない」という記述に同意、または強く同意しています。この調査結果は、多くの企業には、実用的なインサイトを引き出せるような一元化された顧客データベースがないことを示しています。また、同調査の別の設問では、回答者の58%が、「社内のどこにも顧客の全体像を把握する適切な手段がなく、それは問題である」という記述に同意、または強く同意しています。
現在、企業はCRMソフトウェアを特定の部門でのみ使用する傾向があります。たとえば、営業部門向け、あるいはカスタマーサービス部門向けのプラットフォームのような使い方です。多くの企業は、CRMソフトウェアを最大限に活用できていないことを認識しています。Forresterの調査結果によると、回答者の80%が「現在CRMの利用は営業部門とサービス部門に限定されているが、これら2つのチームをサポートする以上の、はるかに大きな有用性がある」と回答しています。さらに、大多数の回答者が、CRMが組織全体で断片化されており、少数、多数、あるいはすべての部門がそれぞれ独自のCRMを使用していると報告しています。
一部の企業では、複数の部門で1つのプラットフォームを使用し、各従業員が自身のニーズに合わせてソフトウェアをカスタマイズし、特定の部門のニーズに合わせて作成された、連携できない追加テクノロジーで補完しています。この方法でも一定の効果はありますが、リードや顧客の全体像が見えづらくなることがあります。たとえば、特定のEメールキャンペーンが顧客の関心を引いたとしても、営業チームはその情報に気付いていません。そのため、営業がリードとのやり取りを開始する際に、リードがマーケティング資料にどのように反応したかについて、営業に知らせるかどうかはそのリード次第になってしまいます。営業担当が状況を把握すれば、カスタマージャーニーはスムーズに継続できます。
適切に連携されたCRMシステムでは、各部門の情報を社内の全員が容易に利用できるため、営業はリードの状況を把握した上で対応でき、リードが何かを説明する必要はありません。未来に向けた顧客関係管理の目標は、すべての企業で営業、マーケティング、サービス、コマースの連携を実現し、企業が見込み客と現在の顧客にコネクテッドなオムニチャネル体験を提供できるようにすることです。

AIを活用したCRMへのジャーニーをマッピング
Forrester社が700名を超えるビジネスリーダーを対象に実施した調査をご覧ください。顧客サービス向上に向けて、ビジネスリーダーたちがどのようにAIを活用しているかをご確認いただけます。
CRMの未来とは?
現在最高のCRMテクノロジーは、クラウドベースでモバイルフレンドリーな、AIに最適化されたソフトウェアを利用しています。これらの機能は、もはや未来の技術ではなく、ますます標準的になっています。CRMは、企業がパーソナライズされた顧客体験を提供できる仕組みをすでに実現しています。
顧客関係管理の未来は、CRMテクノロジーのさらなる企業への普及、AI(人工知能)の拡大によって実現する深いインサイト、そしてより強固な顧客データ連携といった側面に見られます。CRMに投資する企業には、顧客に関する信頼できる唯一の情報源や、顧客ライフサイクル全体を通して一貫したサポートする手段を手にするという利点があります。
信頼できる唯一の情報源としてのCRMシステム
今後企業は、ますますCRMプラットフォームを信頼できる唯一の情報源(SSOT)として利用することになるでしょう。MuleSoft によると、SSOTとは「組織の多数のシステムに分散しているデータを単一の場所に集約すること」です。CRMプラットフォームを信頼できる唯一の情報源として使用する企業は、一貫した顧客体験の提供に向けて、従業員、チーム、部門、さらにはパートナーを連携させることができます。
前述のForresterの調査結果でも、CRMプラットフォームをSSOTとして使用するという考え方は支持されています。まず、回答者の80%が「顧客データの信頼できる唯一の情報源があれば、自社にとって非常に大きな、または大きな価値がある」と考えています。さらに、意思決定者の80%が、バラバラな複数のシステムのデータを照合するために、「CRMを使用する機会が増えている」と回答しています。ただし、現在、自社のCRMシステムが信頼できる唯一の情報源になっていると考えている回答者はわずか25%です。
CRMシステムで顧客ライフサイクル全体をサポート
SSOTを導入することで、顧客ライフサイクル全体を総合的にサポートすることができます。Forresterの調査によると、意思決定者の85%が、「CRMシステムは顧客ライフサイクル全体をサポートすべきである」ことに同意しています。これは企業がマーケティングから、営業やカスタマーサービスまで、あらゆる場面でCRMプラットフォームを使用できるということです。しかし、同調査の回答者のうち、自社のCRMシステムが「発見からエンゲージメントや定着まで、顧客ライフサイクル全体をサポートできる」と回答しているのはわずか32%です。共有CRMシステムで顧客ライフサイクル全体を管理することにより、収集するデータと得られる分析結果は一貫性があり、各顧客の全体像を描き出します。
すべての顧客対応チームは、この情報を活用して顧客体験にポジティブな影響を与えることができます。Forresterの調査では、企業の回答者は、自社の総合的な顧客体験を1から10の10段階で評価するよう求められました。適切に連携されたCRMシステムを持つ企業のうち80%が、顧客体験の評価で8点以上をつけています。別の設問でも80%が、自社のCRMシステムが、「組織のシームレスな体験を提供できる能力において役に立つ」ことに同意しました。
信頼できる唯一の情報源(SSOT)は、企業と顧客の双方に次の4つの重要な点で利点をもたらします。
- 企業がデータベースの誤りや古い情報をなくすことに取り組むことで、企業の統合プラットフォーム全体から収集されたデータは、集計、解釈、提示され、ユーザーはそれを参考にして、リードや顧客により良いサービスを提供できます。
- 貴重なインサイトは、人による調査とAIによるレポートおよび予測の両方から得られます。これらのインサイトは、意思決定者がより効果的にリーダーシップを発揮するのに役立ちます。
- 従業員はプラットフォーム1つで顧客データすべてにアクセスできるため、データの不一致や重複が削減されます。
- 従業員が仕事に必要なデータと技術を手にすることで、従業員満足度と顧客満足度の両方が高まります。
企業のCRMの未来
ファイルキャビネットに保管された書類も入れれば、どの企業にも何らかの形でCRMシステムは存在します。顧客満足度と従業員の効率を大幅に高めたい場合は、CRMテクノロジーへの投資が欠かせません。
企業における顧客関係管理の未来は、導入するテクノロジーと、それが顧客により良いサービスを提供するためにチーム間の連携を促進できるかどうかにかかっています。CRMプラットフォームへの投資を決定する際は、迅速に導入・拡大することができ、幅広いテクノロジースタックと連携できるシステムを見つけることが不可欠です。これが意味するところは、ツールは直感的で、クラウドベースで、モバイルに最適化されており、企業固有のニーズに合わせてカスタマイズ可能であるべきだということです。
投資は、戦略的アカウントチームでもサードパーティでも、信頼できるパートナーによって支えられるべきです。パートナーが現在必要なツールと将来検討すべきツールの選定をサポートしてくれます。CRMシステムのカスタマイズと導入が完了したら、従業員は新しいツールを使用するためのオンボーディングとトレーニングを受けることができます。できれば、Trailheadで提供されるような、パーソナライズされたオンデマンド学習が理想的です。CRMプロバイダーは、単なる予算の項目ではなく、パートナーであるべきです。
システムが完全に稼働したら、顧客データをより効果的に整理できるようになります。従業員が1つの中央プラットフォーム(信頼できる唯一の情報源)を使用することで、複数の場所で情報を検索したり、データについて他人に尋ねたりする必要がなくなります。
また、すべてのリードを顧客ライフサイクル全体を通じて追跡するための単一のリソースが手に入ります。連携システムがあれば、どのマーケティングキャンペーンが最初にリードの関心を引き、認知から検討へ移行した経路を確認できます。次に、見込み客が営業とやり取りしたり、デジタルストアフロントで製品を閲覧したりする際のニーズを監視して、コンバージョン段階に進ませることができます。一度顧客となってからは、CRMシステムは顧客のサービスリクエストの管理を支援し、顧客のニーズに特化して設計された、関連性の高いアップセル、クロスセル、感謝、キャンペーンなどを通じてロイヤルティを促進します。
CRMの将来のトレンドはCRMを使用する企業次第
CRMプロバイダーは、長年、技術革新の最前線に立ってきました。テクノロジーは将来も大きな役割を果たすでしょうが、CRMプラットフォームの未来は、必ずしもテクノロジーの進歩だけでは語れません。未来は、企業がCRMシステムを最大限に活用し、その潜在力を完全に開花させることを中心に展開されます。
世界の多くの場所でインターネットが日常の一部となって以来、わずか20年足らずで顧客関係管理はビジネスに革命をもたらしました。消費者は、たとえ大企業に対してもパーソナライズされた対応を期待しており、いつでも世界中のあらゆる企業を選び、支持する力を持っています。
企業はこれらの要求をサポートできなければなりません。既存のテクノロジーと十分に連携可能な、堅牢でありながら柔軟性のあるCRMシステムを導入し、従業員がそれを効果的に活用できるようトレーニングし、顧客ライフサイクル全体を通じて信頼できる唯一の情報源として使用することにより、企業は顧客の要求に応えるだけでなく、それを上回ることも可能になります。
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