

ヤマハ発動機株式会社とヤマハ発動機販売株式会社は、だれもが無料で利用できる「My Yamaha Motor Web」の展開により、バイクオーナーと新たな関係を構築しようとしています。YAMAHAは、メーカーと販売会社、そして販売店を通してバイクを消費者に届けるという長いデマンドチェーン(B2B2B2C)を抱えています。しかしながら、保有するデータは出荷した製品の情報と購入者の情報のみ。新車販売時点の顧客情報だけでは、リアルなバイクオーナーの行動をつかむことができませんでした。一方、YAMAHAはレース活動なども行っており、YAMAHAに憧れを抱くバイク愛好者は数多く存在します。こうしたファンに販促しすぎず、「次の購入機会にYAMAHAを一番に考えてくれるとうれしいです」というレベルで繋がり続けるマーケティング活動の柱が、このポータルサイトなのです。
サポート窓口で活用中のSalesforce Service Cloudと、Loyalty Managementを連動させることで、短期間にポータルサイトのデータ基盤を構築。Salesforceの標準レポート機能でMy Yamaha Motor Web会員の分析が可能になりました。また、この基盤により、YAMAHAとオーナーの繋がりの強さに応じた様々な体験サービスを提供できるようになりました。
購入という大きなイベント以上に、関係を維持することに注力
デジタルをキャンペーンの軸に据えて施策をやりすぎると、顧客から“嫌われてしまう”リスクも増してしまいます。YAMAHAがやりたいのは、“ちょうどいいマーケティング”。デジタルは顧客とのコミュニケーション手段と位置づけ、ビジネスに偏重しないように配慮しながら繋がり続けることを目指しています。
会員の3割以上が非ヤマハオーナー
約7万人の会員のうち、ヤマハオーナーは約6割。少子化によって国内市場が縮小する中、ヤマハオーナーでなくてもバイクに関心を持つ層を取り込むことは必須で、YAMAHAのオーナに限らず給油やメンテナンスの記録、アンケート回答などで、オーナーと愛車の接点を活用してバイクへの興味関心を保ってもらい、さらにはYAMAHAへのロイヤルティを高めることを目指しています。
再購入周期は平均6年
バイクオーナーの多くは、愛車に長く乗り続けます。買い換えのタイミングは人それぞれで、タイミングが合わない「売る」ためのアプローチは敬遠されてしまいます。一方、新モデルやそれに搭載される新技術には興味津々。次の買い換えまで心地良い関係を続け、YAHAMAを第一想起してもらうためにも、この「My Yamaha Motor Web」はなくてはならないマーケティングツールとして機能しています。
将来は販売店もスキームの一員に
今回のプロジェクトは、メーカーのデジタルへの知見と、販売会社のマーケティングノウハウの組み合わせで実現しました。将来はB2B2B2Cの3つ目のBである販売店もこのスキームに巻き込みたい考えです。販売店のデータを加えることで得られる/提供できる価値について考察を深め、3つのBが強力なタッグを組み、顧客を理解した上でビジネスを成長させられる世界観を展望しています。
※ 本事例は2024年12月時点の情報です
ライフタイムバリューは、ライフタイムマネーではありません。お客様に提供できる価値と、お客様から提供いただく価値について深く考えることになりました。
藤本 勝治 氏経営戦略本部デジタル戦略部データドリブンビジネス推進G, ヤマハ発動機株式会社