アップセル・クロスセルとは?違いや活用方法、成功事例を紹介

 
最終更新日:2024.5.16
アップセル・クロスセルとは、どちらも顧客単価を高めるための営業手法で、アップセルは「より上位の商品を購入してもらうこと」、クロスセルは「別の商品を一緒に購入してもらうこと」を指します。概要から施策、アップセル・クロスセルを成功させるポイントまでご紹介します。
 
 
 
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アップセル・クロスセルとは?

アップセル・クロスセルとは、どちらも顧客単価を高めることを目的とした営業手法です。アップセルは、より高価格なものへの乗り換えを、クロスセルは、販売するメイン製品と関連した商品・サービスの購入をうながすことで、顧客への売上増を目指します。

ダウンセルとは、現在、顧客に提供や提案をしている製品・サービスよりも、より機能や品質が劣る安価なものを勧める営業手法です。単価を下げることで、購入の見送りや契約の解除を検討している顧客に再考をうながし、失注や解約を防ぐことを目的としています。

アップセルとは?

アップセルとは、現在、顧客に提供している製品・サービスよりも、より高機能で高価格なものへと乗り換えをうながす営業手法です。
 

代表的なやり方として、以下の3種類があります。

  • 上位機能やプランの提案
  • まとめ買いの提案
  • 定期コースの提案

もっともわかりやすいのが、「上位機能やプランの提案」です。たとえば、社内で使うパソコンを、より高機能な製品にアップグレードするよう勧めることは、まさしくアップセルに該当するでしょう。

「まとめ買いの提案」は、たとえばビジネスツールにおける「利用ユーザー(or アカウント)数」などが該当します。便利さや効果を実感した顧客に、「利用ユーザー(or アカウント)数を増やす」提案をするのは、サブスクリプション型サービスにおけるアップセルになります。

「定期コースの提案」は、たとえば「ミールキット」の販売において、単発で購入を続ける顧客に、定期での購入をうながすような事例が該当します。

クロスセルとは?

クロスセルとは、顧客に提供する製品・サービスと併せて、関連製品も提案する手法です。
 
図の例のように、タブレットを購入した、または購入を検討している顧客に、キーボードの購入も勧めることが該当します。キーボードを購入すれば、ノートパソコン感覚でスムーズにタイピングができるため、セットにすることで製品単体よりも高い効果を得られる商品・サービスがあるときに活用できます。
 
 
 
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ダウンセルとの組み合わせも有効的

ダウンセルは、顧客が高価な商品の購入をためらっている場合に、より低価格で基本的な機能を備えた商品を提案する戦略です。アップセルやクロスセルと組み合わせることで、顧客のさまざまなニーズや予算に柔軟に対応できます。

ダウンセルを適切に活用することで、顧客が購入を見送る可能性を減らし、長期的な顧客関係を築くことが可能です。顧客が自分のニーズに最適な商品を見つけやすくなるため、顧客満足度の向上にもつながります。

アップセルとクロスセルの違い

アップセルとクロスセルは、どちらも顧客からの収益を増やすための販売戦略ですが、アプローチに大きな違いがあります。アップセルは、顧客がすでに興味を持っている商品やサービスの高価格・高機能のものを提案するのがメインです。

クロスセルは顧客が購入を検討している商品と関連性のある別の商品やサービスを提案し、購入体験の拡張を目指します。アップセルは顧客の既存のニーズを満たすために価値を高めるのに対し、クロスセルは顧客のニーズを広げ、新たな価値を提供します。

アップセル・クロスセルのメリット

アップセル・クロスセルのメリットは、ただ顧客単価を高めて売り上げを増やすだけでなく、営業コストの削減や顧客生涯価値(LTV)の向上にも貢献します。それぞれに使いどころは異なりますが、うまく使えば自社の収益向上に大きく貢献できます。

ここからは、アップセル・クロスセルの大きなメリット3つを見ていきましょう。

効率良く収益を上げられる

新規の顧客を開拓して商品・サービスを販売するのに対し、アップセル・クロスセルは、既存の顧客に追加で売り込む営業手法です。取引を通じた信頼関係もあり、マーケティングや営業活動のコストは、新規顧客の獲得に比べて圧倒的に少なく済むため、効率よく収益を上げられるのです。

LTV(顧客生涯価値)の向上につながる

顧客生涯価値(LTV)とは、企業が顧客から得られる売上の総額のことです。営業の現場では、契約数や新規顧客数と並んで、指標を重視する傾向が強まっています。

アップセル・クロスセルは、この顧客生涯価値の向上に役立つ営業手法です。とくにサブスクリプション型サービスでは、利用ユーザー(or アカウント)の増加やオプション機能の追加などで月額課金額が増えれば、解約されない限りそれがずっと続くので、LTVの向上に大きく貢献します。

業務を効率化できる

アップセルとクロスセルの導入は、販売プロセスの効率化にも寄与します。顧客の過去の購買履歴や興味関心にもとづいた提案を行うことで、マーケティングや販売活動をより絞り込むことが可能です。

結果、ムダなリソースの投入を減らし、効果的な販売戦略を展開できます。顧客にとっても関連性の高い商品やサービスの情報を得られるため、購買体験の向上にもつながるでしょう。

アップセル・クロスセルのデメリット

アップセル・クロスセルはメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここでは、アップセル・クロスセルのデメリットを3つ見ていきましょう。

過剰にプッシュした場合に信頼を損なう

アップセルやクロスセルの提案を過剰に行うことは、顧客との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。必要としていない商品やサービスを強く推奨した結果、圧迫感を与えてしまい、信頼を失いかねません。

顧客のニーズや関心を十分に理解せずに行うと、顧客にとって価値がないと感じさせ、企業への不信感を生む原因となるでしょう。長期的な顧客関係の構築を困難にし、リピート購入の機会を減少させる結果となります。

不適切なタイミングでの提案は顧客のストレスや不快感につながる

アップセルやクロスセルの提案を不適切なタイミングで行うことは、顧客にストレスや不快感を与える原因となるため注意が必要です。たとえば、購入直後や顧客が他の問題で忙しい時に追加の商品を提案することは、顧客の反感を買いやすく、否定的な印象を与えられます。

顧客がリラックスして情報を受け取れる適切なタイミングで提案を行うことが重要です。不適切なタイミングでの提案は、顧客の購買体験を損ねる結果となるため、慎重な判断が求められます。

商品単価が上昇する

アップセルやクロスセルを積極的に行うことで、提案される商品の単価が上昇する傾向にあります。なぜなら、高価な商品や追加のサービスを購入することを促すためです。

しかし、すべての顧客が高価な商品を求めているわけではありません。予算内で最適な商品を選びたいと考えている顧客も多いため、戦略が顧客のニーズと合わない場合があります。

商品単価の上昇は、一部の顧客にとっては価値ある提案となり得ますが、購入の障壁となって購買意欲の低下を招く結果となるでしょう。したがって、顧客の予算や価値観を考慮した提案が重要となります。

アップセルの活用例

アップセルは、顧客がすでに興味を示している商品やサービスに関連して、より高価格や高機能のオプションを提案するための戦略です。最も効果的に使用できるタイミングは、顧客が購入を進める中で商品に対する興味や満足度が高まっている時です。

ここでは、アップセルの活用例を紹介します。

サービス導入時のトライアル期間

サービス導入時のトライアル期間を活用したアップセル戦略では、顧客にサービスの全機能や価値を実際に体験してもらうことが重要です。サービスの真価を理解し、正式なサブスクリプションやより高価値のプランへの移行を促します。

トライアル期間を通じて顧客がサービスの利点や効果を直接体験できることで、サービスの価値を実感しやすくなります。結果、アップセルの機会が自然と増えていくのです。

顧客にリスクなくサービスを試してもらい、満足度を高めることで、長期的な顧客関係を築く基盤となります。

キャンペーンやクーポンの提供

キャンペーンやクーポンの提供によるアップセル戦略では、特定の期間や条件を設けて顧客に特別なオファーを提供します。高価値プランへのアップグレードや追加購入を奨励するのが目的です。

顧客の購買意欲を刺激し、新しい製品やサービスへの関心を高めることで、企業の売上を効果的に増加させられます。キャンペーンやクーポンは、顧客にとって魅力的なインセンティブとなり、購入の決断を後押しする重要な要素です。

シミュレーションの提示

アップグレードのメリットを具体的にシミュレーションとして提示することで、顧客が得られる利益や改善点を明確に理解できるようにします。購入後の満足度向上を促すシミュレーション内容を作成し、顧客が価値を把握できるようにすることが重要です。

シミュレーションは、顧客にとって直感的に理解しやすいものが最適です。製品やサービスのアップグレードがもたらすポジティブな変化を具体的に示すことで、アップセルの成功率を高めます。

クロスセルの活用例

クロスセルは、顧客が購入を検討している商品と関連性のある他の商品やサービスを提案するための戦略です。効果的に活用するタイミングは、顧客が購入決定をした直後や特定の商品を購入した顧客に対して追加の関連商品を提案する時です。

ここでは、クロスセルの活用例を紹介します。

バンドル販売の実施

バンドル販売は、関連する複数の商品をセットで提案し、顧客に一度に複数の商品を購入させるクロスセル戦略です。必ず必要となる商品の組み合わせを一度に購入できる方が「この組み合わせは使用できるのか」といった疑問が解消され、購入の決断を容易にします。

本来であれば顧客は必要なものを別々で購入したり、商品同士の互換性を調べたりしなくてはいけませんが、顧客の疑問点や不安点を解消することで、顧客の購入意欲を促進することが可能です。

たとえば、カメラとレンズや、ホースとアタッチメント、モニターと変換ケーブルなどがあげられるでしょう。

バンドル販売は、顧客にとっての利便性を高めると同時に、企業の売上を効果的に増加させる戦略として機能します。

関連商品のレコメンド

顧客が興味を持っている商品にもとづいて関連商品を推薦することは、クロスセル戦略の中核をなすものです。関連商品のレコメンドは、顧客が購入プロセスの中で遭遇する追加のニーズを満たすことを目的としています。

たとえば、オンライン書店では顧客が特定の本を閲覧している時に、同じ著者の他の作品や類似のジャンルの本を推薦する場合もあります。レコメンドシステムでは顧客にとって価値のある提案を行い、顧客体験を向上させることで、追加購入を促す効果があるのです。

画面保護シートやケースの提案

スマートフォンやタブレットなどを購入する顧客に対して、画面保護シートやケースを提案する戦略は効果的です。画面保護シートやケースは、製品の保護やカスタマイズのニーズに応えられ、顧客の満足度を高められます。

また、追加製品を購入することで顧客は製品をより長く、より安全に使用できるようになるのです。顧客にとっての付加価値を高められ、追加購入を促し、企業の売上を増加させられます。

アップセル・クロスセルの成功事例

アップセルとクロスセルは、顧客一人あたりの単価を高め、LTV(顧客生涯価値)を向上させる重要な手法です。顧客のニーズや課題を深く理解し、それに応じた製品やサービスを提案することで、売上や顧客満足度を高められます。

アップセルやクロスセルを導入したことで成功した代表的な企業が、以下の通りです。

  • Amazon
  • Netflix
  • Microsoft

それぞれ詳しく解説します。

Amazon

Amazonは、レコメンド機能を通じてクロスセルの成功事例を築いています。レコメンドシステムによって顧客の購買履歴や閲覧履歴、関連性の高い商品データを分析し、それぞれの顧客にもっとも適した商品を提案する仕組みです。

パーソナライズされたアプローチにより、顧客は自分のニーズや興味に合った商品を容易に発見できます。また、Amazonは顧客一人ひとりにカスタマイズされたショッピング体験を提供することが可能です。

顧客の満足度を高めるだけでなく、追加購入を促し、結果として売上の大幅な向上に寄与しています。

Netflix

Netflixは視聴履歴や好みにもとづく推薦システムを用いて、サブスクリプションサービスのアップセルを促進しています。顧客が過去に視聴したコンテンツや評価したコンテンツを分析し、関連コンテンツを推薦することで、顧客のエンゲージメントを高めます。

顧客は新たなコンテンツを発見しやすくなり、満足度が高まるとともに、高価なプランへの変更を検討するきっかけとなるのです。Netflixがとるアップセル戦略は、顧客満足度の向上とともに、長期的な顧客関係の構築に貢献しています。

Microsoft

Microsoftは、Office製品のバンドル販売やクラウドサービスへのアップグレード提案を通じ、アップセルとクロスセルの両方を成功させています。顧客のビジネスニーズに合わせて最適な製品やサービスを提案することで、顧客の生産性向上に貢献しているのです。

たとえば、小規模ビジネス向けには基本的なOffice製品を提案し、企業が成長するにつれて上位プランへの移行を促しています。顧客の成長段階に応じた提案は、顧客のビジネスの成功をサポートし、同時にMicrosoftの収益の向上にもつながっているのです。

アップセル・クロスセルを成功させるための方法

アップセル・クロスセルがもたらす自社へのメリットを解説しましたが、自社の都合だけを押し付けても、アップグレードや関連商品の売り込みは成功しないでしょう。ここからは、アップセル・クロスセルを成功させるための5つのポイントをご紹介します。

1)顧客ロイヤリティを意識する

顧客ロイヤリティとは、顧客が商品やサービス、ひいては自社に信頼や愛着を抱いていることを指します。顧客ロイヤリティが低いと「アップグレードしよう」と考えることはないので、アップセルにとって重要な指標となります。

顧客ロイヤリティを測る指標の1つが「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」です。これは、顧客に「製品を他人に勧めたいか」と質問して0〜10の11段階で回答してもらい、9か10を付けた顧客を「推奨者」と分類する分析方法です。この推奨者にアップセル・クロスセルを提案することで、効率的な営業の成果を期待できます。

2)カスタマーサクセスの導入

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、製品やサービスを通じて顧客の成功を支援する概念です。アップセルやクロスセルにより、顧客へ新たな出費を求めるには、その製品やサービスを用いて顧客側に利益をもたらすための能動的な働きかけ、すなわちカスタマーサクセスへの取り組みが必要になります。

3)顧客のニーズを正確に理解する

アップセル・クロスセルを提案するにあたり、製品やサービスが顧客のニーズを満たすかどうかもきちんと精査しましょう。導入済みの製品・サービスの活用状況や、顧客が抱える問題を分析することで顧客のニーズを読み取り、それに応えるプロダクトの提案が可能となります。

4)タイミングを推し量る

アップセル・クロスセルの提案は、タイミングも重要です。たとえば「市況が変化した」「顧客側の事業拡大により、新たなニーズが生まれた」「顧客の課題を解決できる新製品を発売した」など、状況が大きく変わった時がチャンスです。顧客のニーズと併せてタイミングをしっかり推し量り、アップセル・クロスセルにつなげていきましょう。

5)顧客をより深く知る

ここまでに解説した顧客ロイヤリティにせよ、カスタマーサクセス、ニーズ、タイミングのいずれも、顧客のことを知らなければ実現できません。アップセル・クロスセルを成功させる背景には、「顧客をより深く知る」努力があるのです。

とはいえ、人力でそれをすべて賄うのは、膨大な労力が必要です。CRM(顧客関係管理ツール)やSFA(営業支援ツール)を活用し、顧客の情報を蓄積させたうえで、日ごろから分析しておくことが大事になります。

 
 
 
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双方が満足のいくアップセル、クロスセルを目指そう

より効率良く売上を高めていく上で、アップセルやクロスセルはとても有効な方法です。ただし、闇雲に提案しても逆効果となります。

今回、ご紹介したポイントに留意しながらタイミングを計り、最適なアップセル、クロスセルの提案を行ってください。そして、自社も顧客も満足のいく結果を生み出しましょう。

 
 
 
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