チャットボットと対話型AIの比較：相違点と使用例

チャットボットと対話型AIは、どちらもカスタマーサービスで使用されています。そしてこの2つは顧客の質問に答え、24時間体制のサービスを提供します。これらのツールはいくつかの点において似ていますが、同じものではありません。どちらもセルフサービス型の顧客体験にとっては重要なツールです。

当社の調査によると、顧客の61%は、単純な問題に対してセルフサービスを使用することを望んでいます。しかし、そこにミスの余地はありません。72%もの顧客が、たった1回のネガティブな体験で企業のチャットボットを再利用しないと回答しているのです。一方で顧客は、サービスを受ける方法に関係なく、以前よりも人間的な対応を期待しています。

ここでは、チャットボットと対話型AIを比較し、テクノロジーの比較と相違点、一般的な使用法、自社のカスタマーサービスプロセスで使用する際の考慮事項について説明します。

• チャットボットとは？
• 対話型AIとは？
• カスタマーサービスにおけるチャットボットと対話型AIの例
• カスタマーサービスにおけるチャットボットと対話型AIの比較
• チャットボットと対話型AIソリューションの選び方
• はじめに

チャットボットは、人間の対話を模倣するように設計された方法でユーザーと対話するコンピュータープログラムです。多くの場合、チャットボットは、ペルソナとともにWebサイトの下部にポップアップするダイアログボックスとして表示され、「何かお手伝いできることはありますか？」などの質問に答えるよう促してきます。

チャットボットは、消費者が簡単な質問に対する回答をすばやく得ることができる、人気のカスタマーセルフサービスオプションです。もっとも基本的なレベルでは、チャットボットはルールベースのプログラミングを使用しています。使用されたキーワードにもとづいて、クエリに対する最適な回答またはリソースを顧客に提供します。

顧客がダイアログボックスに質問を入力すると、プログラムは潜在的な回答で構成される知識ベースをスキャンして、最適な回答を特定できます。ナレッジベースには、よく寄せられる質問への回答、知識ベース記事、チュートリアルビデオなど、自身が作成した有用なリソースを含めることができます。そしてチャットボットは、見つけた回答のうち、もっとも関連性の高いものを提供します。

対話型AIは、自然言語処理と機械学習を使用して、ソフトウェアプログラムが会話テキストを理解して解釈し、会話応答を提供するのを支援するテクノロジーです。対話型AIは、音声入力とテキスト入力の両方に応答でき、チャットボット、AIエージェント、音声アシスタント（SiriやAlexaなど）に組み込むことができます。

対話型AIは、ルールベースのチャットボットよりも高度です。人間が話す内容の完全な文脈を認識するのにより優れているため、より正確な応答に繋げることができます。さらには、設定が非常に簡単です。

すべてのチャットボットが対話型AIを使用しているわけではありません。このテクノロジーのユースケースはチャットボット以外にも広がっています。ただし多くの場合、この2つの概念は正当な理由でつながっています。対話型AI機能を備えたチャットボットは、事前に作成された応答やリンクを提供するだけではありません。既存のコンテンツから応答を引き出して、より人間味のあるパーソナライズされた応答を作成することもできます。

チャットボットと対話型AIはどちらも、心強いカスタマーサービスツールになり得ます。実際にどのように見えるかを理解していただくために、想定されるユースケースの例をいくつかご紹介します。

カスタマーサービスにおけるチャットボットの例

企業はカスタマーサービスのチャットボットを使用して、以下のような多くの一般的な顧客ニーズを処理できます。

• 最適なページやリソースへの誘導：顧客は、ペットショップのウェブサイトで、アレルギー対応ドッグフードを特定するためにチャットボットに助けを求めることができます。チャットボットは、ニーズに沿った製品ページへのリンクや、最適な製品に関するブログ記事を検討材料として提供できます。
• 簡単な質問への回答：ペットショップが猫の処方箋を処理できるかどうかを知りたいと顧客が考えているとします。このような場合にチャットボットは、FAQページで適切な回答を見つけて、チャット内で直接提供できます。
• 注文の最新情報の提供：あるお客様が、愛犬の誕生日に間に合うように新しいおもちゃを手に入れたいと考えており、注文状況を知りたいと考えているとします。特定の注文詳細を引き出し、追跡情報を提供するようチャットボットをプログラムすると、このような状況に対応できます。
• 人間の担当者への顧客の引き継ぎ：得意顧客が間違った種類のキャットフードを受け取ったため、すぐに交換する必要があるとします。このような場合にチャットボットは、人間の担当者が必要な問題であることを識別し、顧客を自動的にサービス担当者に転送できます。

対話型AIを活用したカスタマーサービスの例

カスタマーサービスにおけるチャットボットと対話型AIのユースケースには、多くの共通点があります（詳細は以下を参照）。しかし対話型AIには、チャットボット以外にも以下のような注目すべき用途がいくつかあります。

• 電話または音声アシスタントによる注文：レストランで対話型AIを使用すると、顧客が人間とやり取りせずに電話や音声アシスタントを通じて、デリバリーを注文できるようになります。
• 音声チャネルでサポートを提供：レストランは、音声入力にもとづいたレコメンデーションの提供、簡単な質問への回答、顧客の注文状況の確認ができるようAIをプログラムできます。これにより、スタッフとの接触が不要になります。
• 人間の担当者への顧客の引き継ぎ：顧客が食物アレルギーに関する重要な質問で電話をかけてきた場合、対話型AIツールは、人間の支援が必要な質問であることを認識し、電話をスタッフに転送できます。

対話型AIを搭載したチャットボットの使用例：

企業にとっての問題は、チャットボットと対話型AIツールをどのように選択するかということではありません。対話型AI機能を提供するチャットボットを使用したいかどうかが重要です。対話型AI機能を備えたチャットボットは、一般的なチャットボットが実行できるすべてのことに加えて、以下のことを実行できます。

• さまざまな種類の顧客からの質問に答える：対話型AI機能を搭載したチャットボットは、データベースに既に存在する回答を提供するだけではありません。AIを搭載したチャットボットを利用する銀行の顧客が、2つの当座預金口座の選択肢を比較するためのサポートを必要としている場合、チャットボットは、それらのオプションを比較した特定の記事がなくても、複数のリソースから情報を引き出すことで有用な回答を提供することができます。
• パーソナライズされた提案を迅速に提供する：自律型エージェントは、顧客それぞれの入力内容に応じて応答を調整できます。顧客がビジネスバンキングの最優先事項をリストアップした場合、チャットボットはそれらのニーズに最も適した製品やサービスをパーソナライズして提案できます。
• 必要に応じて、顧客を人間担当者に引き継ぐ：これについては、正当な理由でも説明した通りです。チャットボットのベストプラクティスにおいてもっとも重要なのは、必要なときに簡単に顧客を人間の担当者に引き継げるようにしておくことなのかもしれません。これにより、顧客はいつでも柔軟性のあるエクスペリエンスを持つことができます。対話型AI機能を搭載したチャットボットは、より多くの問題を単独で処理できるはずですが、複雑な顧客からの問い合わせを人間のサポートスタッフに任せる方法が依然として必要です。

適切なカスタマーサービステクノロジーを選択することで、顧客体験を向上させ、スタッフの作業を容易にすることができます。どのテクノロジーが最適かを判断するのに役立つ比較方法をご紹介します。

カスタマーサービスにおけるチャットボットの利点

AI機能がなくても、基本的なチャットボットはカスタマーサービスチームに多くのことをもたらします。例として、以下の事柄が挙げられます。

• 消費者に広く採用されている：私たちの研究では、55%の顧客がセルフサービスのチャットボットを使用したと報告したことが明らかになりました。基本的な質問については、多くの顧客がチャットボットを使用して自分で答えを見つけることに満足しています。
• 時間を問わず、顧客が迅速に回答を得られる：チャットボットは、簡単な質問にリアルタイムで回答するので、顧客が必要とする情報をすばやく提供できます。顧客は長い保留時間について気にしたり、担当者からのメールの返信や折り返しの電話が来るのを営業時間まで待つことを心配したりする必要はありません。
• 人間の担当者の作業負荷が軽減される：顧客がサービス担当者の介入を必要とせず、自分で対応できるようになれば、カスタマーサービスチームの作業負荷が軽減されます。これにより人間の担当者は、より複雑なサービスの問題を処理し、より強力な顧客関係を構築するための時間を確保できます。
• 手頃な価格オプションである：予算が限られている企業の場合、AI機能を提供するチャットボットよりもルールベース型のチャットボットを導入する方が、手頃な価格に抑えられる傾向にあります。ニーズがシンプルなものであるなら、基本的なチャットボットが必要とする機能を低コストで提供できる可能性があります。

カスタマーサービスにおける対話型Alの利点

チャットボットだけでなく、より広い範囲にわたる対話型AIオプションを検討すると、以下のような対話型AIならではのメリットを提供できます。

• AIの能力をすべてのチャネルに拡張できる：実際、顧客の71%が、状況に応じて異なるチャネルを使用することを好むと回答しています。対話型AIを使用すると、時間の節約につながるカスタマーサービスの自動化のメリットを複数のチャネルで享受できます。
• 障がいを持つお客様のアクセシビリティが向上する：音声チャネルは視覚障がいの方に適していおり、テキストベースのチャネルは聴覚障がいの方にとって利用しやすいオプションとなります。対話型AIを使用すると、両方のグループでサポートを改善できます。

対話型AIを搭載したチャットボットの利点

AIチャットボットは、基本的なチャットボットの大多数の利点に加えて、さらにいくつかの利点を提供します。

• 幅広い質問に回答できる：AIチャットボットは、データベース内の事前定義されたルールや応答に限定されるのではなく、ユーザーの意図に基づいてパーソナライズされた関連性の高い回答を作成できます。
• より適切なパーソナライズオプションを提供する：AIチャットボットは、CRMからの顧客データに基づく入力内容に応じて、各応答をカスタマイズできます。
• 多言語サポートを提供できる：顧客が話す、すべての言語に堪能なカスタマーサービス担当者を採用することは、不可能ではないにしても難しい目標です。チャットボットはAIを使用して翻訳作業を行うことができるため、カスタマーサービスチームが話す言語とは異なる言語を使用する方にも快適な顧客体験を提供できます。
• あらゆるインタラクションから学習する：機械学習技術を搭載したAIチャットボットは、あらゆるインタラクションからのデータを使用して、将来の応答を改善し、快適なサポートエクスペリエンスを生み出します。
• 有益なデータと分析を提供する：AIチャットボットは、すべてのインタラクションから顧客データを自動的に記録でき、その一部が顧客関係管理ツールと統合されます。基本的なチャットボットは一部のデータを収集しますが、AI機能により、分析の量と質を向上させることができます。

適切なカスタマーサービステクノロジーは、お客様それぞれのニーズによって異なります。カスタマーサービスへの問い合わせの多くが単純である場合は、基本的なチャットボットツールで十分機能すると思われます。一方で、チームがより複雑な問題や質問を定期的に処理する場合は、対話型AI機能を搭載したカスタマーサービスチャットボットが適していると言えます。

以下の特徴を備えたソリューションを検討しましょう。

• セットアップが簡単で、ニーズに合わせたカスタマイズが可能
• 多言語サポートを提供
• 顧客が好むチャネル（Webサイト、SMS、WhatsAppなど）で利用可能
• カスタマーサービスの他のテクノロジースタックとシームレスに統合

適切なカスタマーサービスチャットボットや対話型AIソフトウェアは、チームのワークフローを簡素化し、作業負荷を軽減します。同時に、顧客満足度を向上させるのにも役立ちます。もっとも重要なのは、どのタイプのサービスが、あなたの会社のカスタマーサービスの目標と予算に適合するのかを判断することです。