国際的なEコマース戦略の策定
新たな市場に参入し、国境を越えた成功を実現する方法
新たな市場に参入し、国境を越えた成功を実現する方法
Eコマースをグローバルに拡大するメリットは明らかです。新たな市場や収益源を開拓し、ブランド認知度を高め、最終的な利益を押し上げられます。国際的に販売している企業では、平均で収益の39%が海外売上によるものです。一見、当然の選択に思えます。実際には、国際的なEコマースは複雑になることもあります。
越境コマースには、考慮すべき点が数多くあります。着手する前に、どの地域やロケールに最大の市場ポテンシャルがあるかを見極める必要があります。また、潜在市場ごとに参入障壁が異なる場合もあります。オンラインショッピングや顧客体験において、その地域ならではの事情はどのようなものでしょうか?見込まれるリターンは、投資やリスクを上回るのでしょうか?それとも逆でしょうか?
このガイドでは、数百ものブランドのグローバル展開を支援したSalesforceの経験にもとづいて、グローバル戦略を策定するための重要なステップを学びます。
業種や外国製品の需要は国によって大きく異なります。各市場の複雑さを理解するには、購入者が誰なのかを把握し、顧客に合わせてカスタム体験を構築する方法を知ることが重要です。評価すべき重要な要素には、以下のようなものがあります。
それぞれの評価方法を見ていきましょう。
人口統計を掘り下げる
CIAのWorld Factbook は、各国の詳細な比較に役立つ貴重な情報源です。たとえば、ベビー用のアパレルや用品を販売しているなら、このデータから対象国の年齢中央値や出生率を把握し、市場ポテンシャルをより正確に見積もることができます。
デジタル導入のレベルを評価する
特に新規市場や新興市場では、デジタル成熟度が重要な検討事項となります。消費者はテクノロジーの導入を始めたばかりですか?その場合は、他社に先んじて最初のデジタルプレーヤーとなるために、戦略的な投資を行う価値があるかもしれません。
ブランドのグローバル認知度を把握する
自社ブランドを認知している海外の顧客を探しましょう。そうした顧客に関するデータポイントを、Webトラッキングデータも含めてできるだけ多く集めます。トラッキングデータからは、自社サイトを閲覧している国が見えてきます。Googleトレンド も、同社の検索エンジンを使う海外の消費者にもとづいて地域ごとの関心を把握するのに役立ちます。ブランド名や製品名を検索するだけです。
海外市場に取引機能のないサイトを展開している場合は、自社サイトのトラフィック量やトレンドに加え、ソーシャルメディアからの流入やシグナルも分析しましょう。これにより、成長が見込める国を見つけられます。ブランド認知度が低い、または把握できていない場合は、認知度を高めるために時間もコストも労力もより多く必要になります。
グローバルおよび地域の競合を特定する
最大の競合相手は、ローカルブランドですか?それとも、既存のグローバル企業ですか?競合他社がまだ満たせていない自社製品へのニーズはありますか?競争戦略によって新たな市場に参入する道筋と、自社ブランドがどのように市場の空白を埋めるのかを示すアクションプランを作成しましょう。
現地のリソースを活用する
すでに海外に店舗を構えているものの、Eコマースは展開していない場合は、地域の店舗マネージャーや小売マネージャーを活用しましょう。市場の状況や文化面の課題、競合状況、ターゲットオーディエンスについて貴重なインサイトが得られます。現地の知識と現地契約の交渉力は、大きなメリットになります。
製品を製造、輸入、出荷すべきかを判断する
現地の担当者やパートナーと協力して、対象国内での商品の製造、輸入、出荷に関する要件を把握します。利用可能なリソースを活用することで、経済環境、貿易関税、その他の制限を把握し、アプローチを描くうえで役立ちます。
ビジネスチャンスが明らかになったら、ターゲット市場への参入の複雑さを考慮しましょう。ヨーロッパのブランドの多くはEUという枠組みがあるため他のEU諸国へ比較的容易に販売できますが、カナダへ進出する米国のブランドは通関手続きや関税、税金を考慮しなければなりません。
法務・財務の専門家に相談する
中国の巨大なEコマース市場に参入するなら、インターネットや消費者に関する規制を把握していなければ事業を確実に運営できません。法務部門と財務部門に相談し、こうした要件の影響を把握してください。事業形態によっては、自社の利益を代表する現地法人が必要になる場合もあります。
現地の規制を把握する
GDPRやカリフォルニア州消費者プライバシー法など、国や地域の規制を理解することが重要です。コマースプロバイダーが適切なツールでコンプライアンスとセキュリティを確保し、問題が起きた際には透明性をもって開示するかどうかを確認しましょう。
為替レートを監視する
通貨の変動が激しい国もあります。現地通貨で価格を設定しつつ本国市場で収益を確保したい場合は、為替レートを慎重に監視し、リスクと保険オプションを検討しましょう。
政治・経済の動向を追跡する
政権や政策の変更は、コマース事業に影響を及ぼす可能性があります。信頼できる情報源をもとに動向を注意深く追い、潜在的なリスクを特定しましょう。こうした変更は、環境や健康、社会の急激な変化によって起こることもあるため、現地の情報源で最新情報を確認してください。
関税と貿易政策を考慮する
米国が実施した国ごとに差別化した関税引き上げなど、最近の関税政策の変化を注意深く監視しましょう。特定の地域では輸入コストが大幅に上昇し、越境調達の採算性が崩れ、それまでコスト効率に優れていたサプライチェーンが立ち行かなくなるおそれがあるためです。
現地のインフラを評価する
現地のインフラも複雑さを増す要因となります。たとえば中国は中央集権的に統治されているため、インドと比べて配送事業者のインフラははるかに整っていますが、統一された街路名や郵便番号はまだ整備されていません。韓国では、詐欺は事実上存在しませんが、メキシコやロシアではより大きな問題となっています。
文化の違いやテクノロジーの好みにより、顧客の期待は国によって異なる場合があります。そのため、ブランドはあらゆるタッチポイントと地域で一貫したショッピング体験を提供する必要があります。その方法について説明します。
統合プラットフォームに集約する
ユニファイドコマースプラットフォームを基盤にすれば、ブランドはカテゴリーをまたいでサイトと製品データを共通のコードベースで同期できます。システム管理者は、ドイツやイタリア、米国でのサイト体験を妨げることなく、すべての現地サイトでプロモーションを実施したり、インドのディワリに合わせて特定のキャンペーンだけを有効にしたりできます。
マルチサイト・多地域のコマースを管理するツールを導入する
レポートやダッシュボードを活用すれば、ビジネスユーザーは任意のデータ範囲、行動データ、売上実績、プロモーションの収益性、よく使われるデバイスの種類などの指標を確認しながら、複数のサイトを管理できます。これらのインサイトをもとに、マーケティング担当者やマーチャンダイザー、Eコマースチームは、ブランド体験を地域ごとのニーズに合わせて調整し、より的確なビジネス判断を下せます。
AIでパーソナライズされた顧客体験を拡大する
単一のコマースプラットフォームに組み込まれた生成AIにより、ブランドは閲覧行動や購買行動にもとづいて地域ごとの相関関係を導き出せます。具体的には次のとおりです。
好まれるチャネルにコマースを展開する
どの新しい市場に参入しようとも、人々が買い物をする方法は世界的な規模で変化しています。ChatGPTやPerplexityをはじめとする生成AI搭載の検索エンジンなど、新しいチャネルはすでに世界中で広く使われています。TikTokやInstagramなど、顧客に好まれるソーシャルチャネルで存在感を保つことも引き続き重要です。
顧客が多くの時間をどこでどのように過ごすかは、国によって異なる点にも注意が必要です。たとえば、WhatsAppはヨーロッパやラテンアメリカで広く普及しています。アジア太平洋地域ではWeChatが主流です。ターゲット顧客がどこにいるのか、また生成AIの普及によって好みがどう変わっているのかを把握しましょう。市場ごとに柔軟に対応し、各地域に合わせたカスタム体験を構築できるコマースソリューションを検討しましょう。
購入後体験を効率化する
注文を受けた後は、迅速な配送、透明性の高い注文状況の共有、確実な配達によって、顧客が世界のどこにいても優れた顧客体験を提供しましょう。地域の税制に準拠した注文管理を統合することで、顧客は自分の注文状況を余さず把握できます。また、担当者は顧客情報を1つのビューで確認できるため、サービスの提供や返品、注文処理を迅速に行えます。
店舗ネットワークを連携させる
多くの企業は、実店舗とデジタルの両チャネルで顧客を一貫して理解し、サービスを提供することに苦慮しています。どこで販売しても、顧客はオンラインでも対面でも、ブランドとの一貫性のある体験を求めています。「オンラインで購入、店舗で返品」(BORIS)や「オンラインで購入、店舗で受け取り」(BOPIS)のように、店舗ネットワークを本当の意味で連携させる体験は、差別化と顧客ロイヤルティの向上に役立ちます。最新のPOSシステムをデジタル販売チャネルと連携させれば、こうした体験をはるかに容易に提供できます。
さらに最新のPOSを使えば、各店舗を小型の倉庫として活用し、店頭在庫やフルフィルメントセンターの在庫をデジタルチャネル全体で引き当てられます。「店舗別に商品を見る」や「クリック&コレクト」といったオンラインからオフラインへのサービスを本国市場で提供している場合は、他の国でも提供を検討しましょう。
マルチマーケットでの成功を支える基盤は、すべてのチャネルで一貫性のある在庫と価格設定です。それができれば、優れた顧客体験を構築できます”
Myron Kirk氏デジタルおよびリテールテクノロジー担当エンジニアリングディレクター, Pandora Jewelry社
グローバル展開は、新しい国で事業を始めたりWebサイトを翻訳したりするだけでは終わりません。言語のニュアンス、住所の形式、好み、地域性、買い物のピーク日に配慮して、市場ごとに固有の体験を作り上げることが求められます。
言語のニュアンスを考慮する
翻訳の質が低いことが、海外のWebサイトでのコンバージョンを妨げる最大の要因です。英国に進出する米国ブランドでさえ、小さな違いを考慮しなければなりません。たとえば、米国の「sweater」は英国では「jumper」と呼ばれます。
住所の形式に注意する
住所の形式は国によって異なります。これらの違いを決済プロセスに反映します。右から左に表示されるアラブ諸国もあれば、ヨーロッパの国々では次のように表示されます。
国ごとのUXベストプラクティスに対応する
使いやすさは、現地の顧客の心に響く体験を実現するうえで大きな役割を果たします。国ごとのUXベストプラクティスにどれだけ投資するかを見極めましょう。現地のモデルを起用した専用の商品写真や、本物であることを確認できるステッチやラベルのクローズアップを用意するのが賢明な場合もあります。
米国のGoogleや韓国のNAVERなど、各国で主要な検索エンジンのホームページを比較し、違いを確かめましょう。文化やデザインのアプローチの違いは、ひと目でわかります。
ローカライズされたコンテンツをAIで大規模に作成:生成AIは、現地の言語や文化的規範、季節のイベントに合わせた地域固有のコピー、製品説明、プロモーションテキストを即座に作成できます。AIを活用した製品カタログのローカライズにより、各市場の製品タイトル、属性、SEOメタデータを調整できます。
ソーシャルコマースのトレンドを調査する
絶えず変化するソーシャルメディアの世界では、さまざまな地域でもっとも普及しているプラットフォームを特定することが重要です。米国ではInstagramが主要なプラットフォームですが、中国ではDouyinとWeChatが大きな存在感を示しています。各プラットフォームのトレンドも地域によって異なります。中国ではミレニアル世代やZ世代の消費者の間でライブショッピングが一大市場となっていますが、米国ではようやく広まり始めた段階です。
キャンペーンをローカライズする
国によっては、他国よりも早くシーズン末のセールを始めます。半球が異なれば気候も変わり、必要な衣類も違ってきます。ブランドが南半球に展開する場合は、季節ごとの衣料品の販売を入れ替える必要があります。
商戦のピークとなる祝日を考慮する
現地のキャンペーンカレンダーでは、主要な祝日や買い物客が集中する日を考慮する必要があります。これらは本国とは異なる時期に訪れることがあります。たとえば、米国ではサイバーウィークがもっとも一般的ですが、中国では独身の日と旧正月が最大の商戦日です。複数の地域で事業を展開するブランドには、年間のさまざまな時期に訪れる商戦のピークに対応できる柔軟性が必要です。
限界を把握する
目指すブランドイメージが覆ってしまうほど過度にローカライズすると、かえって逆効果になりかねません。たとえばHollister社は、カリフォルニアらしい雰囲気を表現するために、アジア市場でも米国のモデルを起用した写真を使い続けており、マーケティングを現地の傾向や好みに合わせることは基本的にしていません。決済とコンバージョンに欠かせないサービスや言語の部分はローカライズを検討しつつ、体験そのものはブランドのコアバリューに沿ったものに保ちましょう。
キャンペーンやプロモーションにはどのようなアプローチを取りますか?すべての国で共通にしますか?国ごとに変えますか?
製品カタログと在庫の組み合わせはどのようなものですか?対象となるすべての国で同じ製品を販売している1つの中央倉庫がありますか?それとも国ごとに限定製品がありますか?
価格戦略はどのようなものですか?商品の価格はすべての地域で同じになりますか?
それぞれの国に個別のチームを設置しますか?チームの規模やWeb管理スキルのレベルはどの程度ですか?
決済と税務は、決済手段や好み、国ごとの税制が多様なため、もっとも複雑な要素の2つです。変化する法律や消費者の好みについて常に最新情報を入手するのは、経験豊富なブランドでさえ難しい場合があります。たとえば、オランダの消費者は消費者保護を重視し、米国や日本の消費者はスピードと利便性を重視しています。これらの違いにどのように対処しますか?
オーディエンスに適した決済手段を提供する
ターゲット市場を分析し、米国のクレジットカードやデジタルウォレットとは大きく異なる決済手段であっても、最適な組み合わせを把握して提供しましょう。たとえば、現地のデビットカード決済、銀行振込、後払い決済(BNPL)、地域特有の現金決済(買い物客がオンラインでバーコードを発行し、コンビニエンスストアで現金を支払うメキシコのOXXOバウチャーなど)が挙げられます。こうした現地で好まれる決済手段を用意すれば、顧客は使い慣れた方法で支払えます。
主要な税務・決済プロバイダーに対応するプラットフォームを選ぶ
ユニファイドコマースプラットフォームは、主要プロバイダーの決済、税務、通貨のプラグインに対応している必要があります。そうすれば、ターゲット市場に適した決済手段を簡単に導入できます。これにより、顧客は好みの決済手段で、現地通貨のまま支払えます。(選択肢が少ないプロバイダーや、自社サービスしか提供していないプロバイダーには注意が必要です。取引手数料が高くつくのが一般的です)。
海外での決済を受け付け、現地銀行の利用を検討する
現地のパートナーや従業員に現地通貨で支払い、本国で収益を精算するブランドは、高額な為替手数料が発生する可能性があります。特に投資段階では、細心の注意を払う必要があります。決済が複雑なことを考えると、海外に現地の銀行口座を開設するのが得策な場合もあります。申請プロセス全体をできるだけ早く完了させます。これを怠ると、サイトの立ち上げが遅れる可能性があります。
決済プロセスをローカライズして簡素化する
重要なショッピングアクションを強調し、クリック数を減らすことで、ブランドは顧客の負担を軽減し、決済までの時間を短縮します。決済体験の改善はコンバージョン向上に広く効果があり、さらにローカライズすれば大きな差が生まれます。
その1つが、決済フィールドをできる限り自動入力することです。Apple Payなどのエクスプレス決済を使えば、顧客はワンタッチで手続きを終えられ、スムーズでスピーディな決済体験を実現できます。
もっとも効果的なのは、戦略的で成長が見込める少数の国に的を絞り、残りの市場はPitney Bowes社のような実績あるサードパーティのフルフィルメントパートナーで補うことです。越境展開の実績がある事前認定パートナーであれば、決済やフルフィルメント、関税、通関、税務コンプライアンスを、自社の決済体験に組み込む形で提供できます。これらは、多くの市場を同時にテストするためのリスクの低いオプションです。
パートナーのグローバルなフットプリントを評価する
新しいパートナーと契約する前に、信頼できる子会社を持つサードパーティの物流プロバイダーを検討してください。たとえば、ヨーロッパの支払ゲートウェイがラテンアメリカでの決済にも対応している場合があります。既存ベンダーを総合的に評価し、本国市場以外での対応力やパートナーシップについて確認しましょう。場合によっては、既存のパートナーが他の地域のパートナーを推奨し、紹介することができます。
適切なシステムインテグレーターを見つける
システムインテグレーターは、新興市場向けのEコマースサイトを構築するうえで重要な役割を担っています。パートナーが適切な専門知識を備えているか、あるいは専門性の高い請負会社を確保して、要件を満たすプロジェクトを提供できるかを確認しましょう。
独立系ソフトウェアベンダーを検討する
顧客にアプローチするもう1つの方法は、顧客がすでに利用している現地のテクノロジーと連携することです。連携により、アジア太平洋地域のWeChatで顧客とつながるなど、地域固有の体験を強化できます。
連携が現地の要件を満たしていることを確認する
CMS(コンテンツ管理システム)は、ヨーロッパのウムラウトや日本語のような2バイト言語に対応できますか?自社の市場にどのモバイルウォレットパートナーが適しているか、判断がつかないことはありませんか?サードパーティのシステムやサービスが現地の要件を満たしているかを確認しましょう。満たしていない場合は、現地のソリューションに置き換える必要があります。
Salesforce AgentExchangeとパートナーマーケットプレイスには、事前認定済みのフルフィルメントパートナーが幅広く揃っており、迅速な連携が可能です。
どの国にも微妙なニュアンスがありますが、独自のローカライズされた体験を生み出すことは、必ずしも複雑な作業ではありません。Agentforce Commerceなら、柔軟性と信頼性、インテリジェンスを兼ね備えた複数のサイトを地域をまたいで立ち上げ、運用できます。ブランドの飛躍的な成長を後押しします。共通のコード、製品、コンテンツ、カタログを使用して、複数のブランドや国別サイトを1か所で管理できます。多国・多言語・多通貨に対応する標準搭載のローカライズ機能により、リスクやコスト、複雑さを最小限に抑えながら、地域展開を迅速に、自社に合わせた形で進められます。