現在の企業は、かつてないほど大量のデータを保存するようになっています。しかし、営業、サービス、マーケティング、コマースなどで使用するビジネスアプリケーションとデータウェアハウスの間には、いまだにデータのギャップが存在します。この課題は、AIエージェントがビジネスアプリケーションで普及するにつれて、急速に拡大しています。顧客とのやり取り、自動化、AIを活用したインサイトでは、リアルタイムのデータアクセスが必要です。しかし、ETLやAPIなどの従来の連携手法では、レイテンシー、複雑さ、摩擦が発生します。Salesforce Data 360は、Salesforceゼロコピーにより、このギャップを解消します。
ゼロコピーとは、データをコピーせずにデータへのアクセスとクエリを可能にするデータフェデレーションテクノロジーです。データフェデレーションは、以前からさまざまな形態で存在していましたが、複雑であり、エンタープライズプラットフォームへシームレスに連携できない点がネックとなり、導入が遅れていました。しかし、Salesforce Data 360のゼロコピーは、従来のETLデータ複製が不要になるだけでなく、さまざまなビジネスアプリケーションやAIエージェントのニーズに合わせて拡張できるという点で際立っています。つまり、組織はすべてのアプリケーションにおいて最新のデータを使用することができ、コストと時間のかかるデータ移動を回避できるのです。
ゼロコピーのメリットとは?
Data 360ゼロコピーは、企業が直面している多くの重要な問題を解決します。以下はその一例です。
- メタデータによる複数ソースのデータのハーモナイゼーション
従来のアプローチでは、データサイロが発生し、営業、サービス、コマース、マーケティングのプラットフォームをまたいで統合・分析するのが困難でした。ゼロコピーならば、この問題を解消できます。データを複製または移動せず、元の安全な環境に置いたまま、データに直接アクセスできます。そのため、個人を特定できる情報(PII)を管理・移動するリスクや複雑さを緩和できます。
- リアルタイムのインサイトとデータの同期化
ゼロコピーを導入することで、ビジネスは複数のシステムをまたいでデータをリアルタイムでクエリできるため、常に最新の情報にもとづいて意思決定を下すことができます。
- シンプルなモニタリングとメンテナンス
従来のアプローチでは、データコピープロセスの失敗に備えて常に監視する必要がありました。ゼロコピーでは、データをコピーしないため、この負担から解放されます。
顧客体験、営業、サービス、マーケティング、コマース、AI、アナリティクス、自動化向けのAgentforceエージェントは、ガバナンスを確保しながらゼロコピーで企業の構造化データと非構造化データにアクセスし、社内外でAI体験を実現します。
ゼロコピー接続性の選択肢
現実的な話をしましょう。データ量や速度によって、物理的なコピーが最善の場合もあれば、データを元の場所に置いたまま運用する方が望ましい場合もあります。Salesforceゼロコピーは、既存のData 360機能を補完し、Data 360のデータレイクにデータを取り込みます。
データにアクセスしてパフォーマンスとコストを最適化する方法として、Data 360のお客様には以下の選択肢があります。
- 物理的な取得:データの種類、速度、量に応じて、データを物理的に取得してData 360にコピーする選択肢が常に用意されています。
- ゼロコピーによるライブクエリ:ゼロコピーの特長を活かしたライブクエリにより、Data 360はデータレイクのテーブルに動的にアクセスし、システム設計と指定された条件に従い、必要なデータのみを取得できます。この合理的な手法は、セグメンテーション、統合、実践的なインサイトの作成など、重要な業務に役立ちます。このデータはData 360のデータレイクでホストされません。保持されるレコードは、「Unified Individual」など、Data 360のキュレーション済みビューのみです。
- ゼロコピーのキャッシュアクセラレーション:ゼロコピーにより、Data 360内に外部データレイクテーブルを保持する必要がなくなりますが、状況によってはデータのコピーを一時的に保持あるいはキャッシュすることが必要または有利な場合もあります。キャッシュアクセラレーションを利用すると、Data 360は外部データを一時的にキャッシュし、そのコピーを定期的かつ段階的に更新できます。ストリーム単位で最適なオプションを判断できるため、テーブルやソースに一律の方式を適用する必要がありません。この最適化手法は任意です。必須ではありません。データキャッシュが推奨されるのは、大規模なデータセットに対するクエリパフォーマンスを強化したい場合や、クエリ数にもとづいてコストを管理したい場合です。
双方向のゼロコピー:フェデレーションと共有
Data 360のゼロコピーは双方向で機能します。つまり、外部データレイクのデータを、あたかもData 360内にネイティブに保存されているように利用できるとともに、Salesforce Data 360でエンリッチ化・統合されたデータを、コピーせずにデータレイクへ容易に連携または共有できます。そのため、あらゆるアウトバウンドETLプロセスが不要になります。
- データ入力(データフェデレーション):外部データソース(データウェアハウスやデータレイクなど)をSalesforce Data 360でライブクエリすることで、Salesforceシステムにコピーせずにデータにアクセスして使用できます。このフェデレーション機能には、クエリフェデレーションとファイルフェデレーションという2つの主要モードがあります。
- データ出力(データ共有):Salesforce Data 360で生成されたインサイト(セグメンテーション、ID識別、アナリティクスなど)には、Snowflakeなどの外部プラットフォームからリアルタイムでアクセスすることができ、複製しなくても同期を維持できます。
同時マルチソースゼロコピー
ゼロコピーでは、高度なメタデータ管理とクエリプッシュダウンテクニックにより、Snowflake、Data Bricks、Redshift、Big Queryなどのあらゆる大手ハイパースケーラーのテーブルをData 360で活用できます。選択したテーブルのコピーをData 360で作成、保持、ホストする必要はありません。ゼロコピーは、Data 360での外部データのクエリだけでなく、外部データレイクによるエンリッチ化または統合されたSalesforce Data 360テーブルのクエリもサポートし、アウトバウンドの複製なしでインサイトをリアルタイムで生成できます。このデュアル機能こそが、Data 360の特長です。
クエリフェデレーションまたはファイルフェデレーション
Salesforce Data 360は、高性能なオープンテーブルフォーマットのApache Icebergを利用して、大規模なデータを効率的に保存、管理、処理します。Icebergは、クラウドストレージ全体でペタバイト規模のデータセットを処理するように設計されています。さらに、高速クエリ、最適化されたデータバージョン管理、シームレスなデータレイクハウスのアーキテクチャ連携にも対応します。Icebergにより、Salesforceゼロコピーは外部データをコピーや複製することなくData 360にフェデレーションできます。つまり、Data 360はデータの保存場所でデータをクエリし、Icebergのインデックスおよびメタデータ管理を利用して最適なパフォーマンスを得られます。
さらに、Icebergはファイルフェデレーション(現在はベータ版)で重要な役割を果たします。Icebergにより、Data 360は、外部システムの演算リソースに影響を与えることなく、外部ストレージに直接アクセスできます。つまり、大規模データのクエリと連携というゼロコピー機能を支える基盤テクノロジーと言えます。
ゼロコピーは、データアクセスのフェデレーションに2つの方法でアプローチします。
1.クエリフェデレーション
クエリフェデレーションでは、Data 360は、JDBCドライバーを介して外部ソースへの直接クエリをフェデレーションすることで、外部データへのアクセスを可能にします。たとえば、Data 360のクエリでデータが必要になると、クエリエンジンは外部ソースを特定し、ハイパースケーラーのJDBCドライバーを利用してデータを動的に取得します。データはメモリで処理され、使用後に破棄されます。Data 360にデータは一切保存されません。
2.ファイルフェデレーション(現在はベータ版)
ファイルフェデレーションはクエリフェデレーションと同じように動作しますが、外部ソースの演算リソースには影響しません。外部システムがクエリを処理するクエリフェデレーションとは異なり、ファイルフェデレーションでは、Data 360が外部ストレージと直接やり取りしますが、外部データウェアハウスの演算レイヤーは操作しません。このアプローチにより、パフォーマンスやコスト効率を維持しながら、大規模なデータセットに効率的にアクセスできます。
ゼロコピーを介してすべての企業データをCRMに集約
Salesforce CRMデータは、ほぼリアルタイムでData 360と同期されます。新しい顧客レコード、商談の変更、サポートケースなど、あらゆる更新内容がData 360に瞬時に反映されます。このほぼリアルタイムの同期化により、もっとも重要なビジネスデータを常に最新の状態に保ち、外部ウェアハウスから取得したゼロコピーデータと簡単に結合できます。すべてのSalesforceアプリケーション(Sales Cloud、Service Cloud、Commerce Cloudなど)は、ゼロコピーされたデータを、AIを活用したインサイト、リアルタイムのパーソナライズ、フローの自動化、AIエージェントのレコメンデーションに利用できます。これは「ダブルゼロコピー」と言えます。つまり、ゼロコピーを介してData 360のデータにアクセスすると、物理的に再び保存することなく、Salesforceエコシステム全体でそのデータを利用できるようになります。この深い連携により、リアルタイムのインサイトと一貫したデータ可用性を確保し、ガバナンスとコンプライアンス基準も維持できます。
また、ゼロコピーは双方向なので、エンリッチ化されたデータ、AIを活用したインサイト、CRMウェアハウス結合データセットをデータウェアハウスに戻すこともできます。Data 360 Oneでは、接続された複数のSalesforce組織でフェデレーションデータを参照・使用できます。
ハーモナイゼーションの重要性
Data 360ゼロコピーでは、データをコピーすることなく、保存されている場所でデータにアクセスできます。しかし、ゼロコピーでアクセスしている外部システムのテーブルが変更された場合、たとえば列の名前が変更されたり、削除されたりした場合は、どうなるでしょうか?ここで、Data 360が効果を発揮します。Data 360は、データモデルオブジェクト(DMO)を使用して、物理データモデルとロジカルなビジネス向けのデータモデルを明確に区別します。DMOは、ID、セグメンテーション、データ有効化、アナリティクスといった後工程のデータコンシューマを、データレイクオブジェクト(DLO)と呼ばれる物理レイヤーの変化から隔離します。
こうしたData 360データモデルオブジェクトと、組み込みのAIを活用したData 360データマッピング体験をまとめて、Data 360ハーモナイゼーションと呼びます。ハーモナイゼーションにより、お客様は、データ命名法を標準化する、ビジネスに適したロジカルデータモデルを構築し、重要なビジネスシステムを物理データから隔離できます。
このハーモナイゼーションがない場合、外部Snowflakeテーブルが変更されると、数百ものダッシュボードやセグメントが破綻することになります。これは「構成可能な」ソリューションの大きな弱点です。物理データモデルを重要なビジネスシステムにさらすことで、予期しないメンテナンスコストや障害が発生します。Data 360ゼロコピーは、Data 360ハーモナイゼーションとシームレスに連携し、後工程の影響を意識せずに誰かが物理データを変更するという現実的な状況からクライアントを守ります。
ゼロコピーによる一元的なガバナンス管理
ゼロコピーを導入することで、Salesforceアプリケーションと外部データソース間のデータガバナンスをData 360内で管理できます。これは非常に重要です。営業担当者やサービス担当者などのSalesforceアプリケーションユーザーは、Snowflakeやその他のデータレイクと直接やり取りしないからです。
ゼロコピーでは、ウェアハウスメタデータをData 360にマッピングすることで、ガバナンスポリシーを一元的に定義してData 360で適用できます。そのため、Salesforceアプリケーションと外部データソース全体で、安全かつシームレスなアクセスが可能になります。
ゼロコピーがもたらすパフォーマンスとセキュリティ
Data 360ゼロコピーでは、クエリフェデレーションのための高度なクエリプッシュダウン、ファイルフェデレーション、セキュアなデータ転送など、多くの手法を用いてパフォーマンスとセキュリティを確保します。
ここでは、その方法を紹介します。
- 高度なクエリプッシュダウン:ゼロコピーでは、Data 360のデータレイクでホストされる完全なデータレプリカを作成しません。必要なデータのみを取得する最適化されたプッシュダウンクエリを使用して、データ検索を元のデータウェアハウスハウスやデータレイクに委託します。このクエリプッシュダウンの最適化こそが、他のソリューションとは一線を画しているSalesforceゼロコピーの重要な機能です。Snowflakeなどのプラットフォームのパフォーマンスを利用してクエリを実行することで、データ転送を合理化し、データ検索と応答時間を最小限に抑えることができます。
- セキュアなデータ転送:ゼロコピーは、データレイクからData 360へのセキュリティをエンドツーエンドで処理し、この責務を担当する連携チームの負担を軽減します。Data 360のプライベートコネクトを利用することで、セキュリティがさらに向上します。Data 360は、Redshift、Snowflake、DatabricksなどのAWS VPCに埋もれているデータソースにアクセスできるようになります。
拡大するゼロコピー
Snowflake、Databricks、Redshift、BigQueryを標準でサポートするゼロコピー機能を備えたSalesforce Data 360は他社に先駆けて市場に投入されました。今後も、SalesforceはMicrosoftやその他のデータレイクベンダーもサポートする予定です。その一方で、ゼロコピーエコシステムを最大化するために、2024年にゼロコピーパートナーネットワークを立ち上げました。これは、Salesforce Data 360との安全な双方向のゼロコピー連携に特化したエコシステムです。このイニシアチブは、初期パートナーのAmazon Web Services(AWS)、Databricks、Google Cloud、Snowflakeとともにスタートし、その後、MicrosoftとIBMが合流し、パートナーが一丸となってシームレスなゼロコピー連携の実現に取り組んでいます。パートナーネットワークの目的は、パートナーシップを継続的に拡大しながら、連携を最適化し、優れたセキュリティと使いやすさを実現することです。
このパートナーネットワークには、ゼロコピーネットワークを通じて自社データレイクやISVデータキットとシームレスかつ安全に連携する15社のデータエコシステムパートナーも参加しています。これらのパートナーは、アナリティクス、AIモデル、ビジネスインサイトを強化できる、価値の高い外部データソースへのアクセスを提供します。エコシステムパートナーには、Dun & Bradstreet、Moody's、ZoomInfo、Workday、The Weather Channelが含まれます。こうしたパートナーを活用することで、Customer 360をエンリッチ化し、より深いインテリジェンスと、より包括的な顧客インサイトを得られます。
データを自社のやり方で活用
Salesforce Data 360のゼロコピーは、単なる技術的な機能ではありません。データエステート全体でリアルタイムのインサイトと統合されたデータ管理の実現を目指す企業のための戦略的な成功要因になります。ゼロコピーは、企業が現在直面している重大な課題に対処し、Salesforceエコシステムの内外で、拡張性、柔軟性、他に類を見ない連携をもたらします。データの取得方法とそのタイミングを選択できるため、アーキテクトは自社のビジネスと運用ニーズに最適な手法を選ぶことができます。Salesforce Data 360は、データフェデレーションとデータ共有がもたらすメリットを絶えず拡大しています。そのため、データの可能性を最大限活用したいと考える組織にとって魅力的な選択肢と言えます。
Salesforce Data 360のゼロコピーは、革新的なだけでなく、実用的なソリューションでもあります。実世界のデータ課題に取り組み、価値創出までの時間を短縮し、連携コストを削減しています。
膨大なデータ量への対応:数十億行をリアルタイムで処理できるゼロコピーの効果は、お客様の本番環境で実証されています。事実、過去11か月間で、外部ソースから収集した11兆件以上のレコードを処理した実績があります。「ゼロコピーは大容量データセットに対応できない」という評価は過去のものです。
メタデータ管理レイヤー:データの出自を抽象化してシームレスな連携を実現するスキーマレイヤーは、基盤となる技術的な詳細やデータレイク構造の変化からマーケティング担当者やエンドユーザーを保護します。その結果、ユーザーがアクセスするデータのガバナンスを確保できます。
わかりやすいセットアップ:最初の導入には多少の労力を伴いますが、統合されたリアルタイムインサイトの長期的なメリットは、初期投資をはるかに上回ります。
エンタープライズ向けの拡張可能なソリューション:Salesforce Data 360は、データ集中型企業のニーズに対応し、比類ないスケールとパフォーマンスをもたらします。