AIがあればシステムは作れる。それでもサイバーエージェントがSalesforceを選ぶ理由
「作れる」からこそ「作らない」。Agentforceがもたらした、AIによる営業プロセスの完全自動化。
「作れる」からこそ「作らない」。Agentforceがもたらした、AIによる営業プロセスの完全自動化。
同部署が直面していたのは、「多忙な営業現場において、ナレッジが組織に残らない」という構造的な問題でした。
導入前、営業情報の多くはスプレッドシートで管理されていました。
一部ではEvernoteなどの個人ドキュメントツールも使われており、議事録や顧客リードの情報は担当者ごとに分散。チームごとに管理フォーマットも異なっていました。
その結果、
・顧客リードの全体像が見えない
・過去の提案履歴を横断的に把握できない
・営業活動を分析するためのデータが揃わない
といった状況が生まれていました。
こうした「情報の断絶」は、現場の負担をさらに重くしていました。
メディア営業では、1人の担当者が50社ほどの顧客を抱えることも珍しくありません。情報が整理されていないため、久しぶりに連絡する顧客について「以前どんな提案をしていたのか」「どこまで話が進んでいたのか」を思い出す作業だけでも、多大な時間を費やしていたのです。
「案件管理は100%入れていましたが、活動履歴は正直ほぼゼロでした」
この状態では、営業の知見は「個人」の中に留まり、「組織の資産」になりません。
この悪循環を断ち切るため、同社は「営業基盤の再設計」に踏み出しました。
営業情報をひとつの基盤に集約
サイバーエージェントは、まずAgentforce Salesを中心に営業基盤を整備しました。
顧客情報、案件、活動履歴をSalesforce上で統合。 これまで分散していた営業情報をひとつの基盤にまとめました。
これにより、マネージャーが必要な情報にすぐアクセスできるようになり、営業活動の分析やレポート作成の精度が大きく向上しています。
Agentforceで営業プロセスを再設計
営業基盤の整備に続き、同社が次に着手したのがAgentforce を活用した「営業プロセスのAI化」でした。
背景には、サイバーエージェント全社で進められている強力なAI活用文化があります。
事業部ごとのAI活用状況を競う「AI番付」という独自の評価制度もあり、営業現場からも「AIでさらなる進化を遂げられないか」という声が上がっていました。
そこで同社は、まず少数ライセンスでのテスト導入を開始。現場のメンバーが実際の商談で使いながら、実務にどこまで適応できるかの検証を重ねました。
当初は「AIでどこまでできるのか」と慎重な見方もありましたが、機能を深く知るうちに評価は一変します。
「私たちがやりたかったことが、これひとつで全部できるじゃないか」
そう確信したことを機に、現在は、約10名の営業組織全体へと活用が広がっています。
商談後の業務を大幅に削減
Agentforce の導入によって劇的な変化を遂げたのが、商談後のルーティンワークです。
これまでは、オンライン商談が終わるたびに「録画を確認し、議事録を作成し、AIで要約して、さらに別のツールやSalesforceへ転記する」といった、分断された作業が営業担当者を圧迫していました。
現在は、このプロセスがSalesforce上でひとつの流れるような体験(シームレスなフロー)に統合されています。商談が終了すると同時に録画がレコードに紐付き、AIが自動で議事録を生成。活動履歴の更新から次回のネクストアクションの提案までが、自動で行われます。
「複数のツールを行き来していた時間が、すべてなくなった」
この統合によるインパクトは大きく、営業担当者の体感では、商談に関連する事務作業が約50%も削減されるという結果をもたらしています。
事務作業の削減で「顧客との接点」が倍増した
この変化がもたらした効果は、単なる「時短」に留まらず、営業活動の「質と量」を根本から変えつつあります。
最も顕著な変化は、顧客とのアポイント数に現れました。以前は事務作業に追われ、月10〜15件程度が限界だったアポイント数が、現在は月30件程度へと約2倍にまで増加しています。
「商談後の作業負荷が激減したことで、その分、次のアポイントへ向かうエネルギーと時間を自分たちで生み出せるようになりました」
浮いた時間を事務処理ではなく、本来の目的である「顧客との対話」に充てる。そのシンプルな変化が、営業活動のあり方そのものを塗り替えつつあります。
事務作業から解放されたことで生まれた時間と余力が、「営業組織全体の機動力」を引き出す原動力となっています。
トップライン(売上)を伸ばすためのところに注力していくために、社内ツールを構築し管理することにリソースは割きづらいです。長くアップデートし続けてくれるSalesfroceをはじめとしたSaaSを活用することで、長い目で見た持続可能性として良いと思っています。
樋山 敬太 氏株式会社サイバーエージェント, AmebaLIFE事業本部 ライフスタイルセールス ドットグループ セールスリーダー
現場にとって「空気」と言えるほど浸透した基盤。
しかし、「AI活用」を全社テーマに掲げ、強い内製文化を持つサイバーエージェントだからこそ、「AIがあれば、システムは自分たちで作れるのではないか」という疑問が浮かぶかもしれません。
実際、生成AIの普及によって「SaaSの時代は終わった(SaaS is dead)」という議論も聞かれるようになりました。
しかし同社の判断は、少し違いました。
重要なのは「作れるかどうか」ではなく「進化させ続けられるかどうか」だったのです。
社内ツールは、一度作れば終わりではありません。保守、改修、機能追加――ビジネスの変化に合わせて進化させ続けられなければ、システムはすぐに「技術的負債」となります。
サイバーエージェントにとってエンジニアは、事業成長に直結するプロダクトを生み出すための重要な資産です。営業管理ツールの保守にリソースを割くよりも、自社のメディアやサービスを伸ばす開発に集中すべきだと同社は考えました。
そこで同社が選んだのが、「基盤はSaaSに任せ、活用は自分たちで拡張する」というアプローチです。
AIがあればシステムは作れる。
しかし、作り続けるコストは決して小さくありません。
だからこそ同社は、基盤をSaaSに任せ、「エンジニアの力」を本来のプロダクト開発に集中させることを選びました。
それが、AI時代におけるサイバーエージェントの確かな選択でした。
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