左側の画像は、お客様とLennar社のAIエージェントが家の内見についてチャットで調整している様子を示しています。右側は、バックエンドでAgentforceが指示し、アポイントのスケジュール調整フローが進行している様子を示しています。

AIがあればシステムは作れる。それでもサイバーエージェントがSalesforceを選ぶ理由

「作れる」からこそ「作らない」。Agentforceがもたらした、AIによる営業プロセスの完全自動化。

概要

「営業の情報が、組織に残らない」 サイバーエージェントのAmebaLIFE事業本部が直面していたのは、そんな構造的な問題でした。 かつて、顧客情報はスプレッドシート、議事録は個人のドキュメントツールで管理されていました。情報は属人化し、「退職者が出ると過去の経緯にアクセスできなくなる」という状況が現場の悩みとなっていました。 この状態を打破するため、サイバーエージェントはSalesforce Agentforce Salesを導入。バラバラに散らばっていたリード情報、議事録、提案資料を一元管理する営業基盤へと統合しました。 特筆すべきは、「AI活用」を全社テーマに掲げ、「内製文化」の強い同社が、あえてSaaSであるSalesforceを選択した点です。 生成AIの普及によって「SaaS is dead」という議論も聞かれるようになりました。 しかしサイバーエージェントの選択は、その議論に対して「別の現実」を示しています。 AIがあれば、システムは作れる。 しかし、作ったシステムを作り続けるコストは決して小さくありません。 だからこそ同社は、基盤はSaaSに任せ、 エンジニアの力を本来のプロダクト開発に集中させるという選択をしました。 「SaaSが必要かどうか」ではなく「SaaSをどう使うか」。 この事例は、その問いに対するひとつの答えになっています。

企業情報

株式会社サイバーエージェントは、広告事業、メディア事業、ゲーム事業を主軸とするインターネット企業です。 メディア事業に属するAmebaLIFE事業本部。同事業本部では、Amebaブログをはじめ、ポイント交換プラットフォームのドットマネー、デジタルギフトサービスのドットギフト、塾検索サービスのAmeba塾探しなど、複数の自社メディア・サービスを展開しています。 なかでもAmebaブログは、30代から40代の女性ユーザーとの接点を強みとするメディアです。広告主や広告代理店に対して、インフルエンサーを活用したPR投稿や記事・動画コンテンツなど、コンテンツマーケティングの提案を行っています。 こうした複数のプロダクトを横断して営業活動を行うBtoB組織が、Salesforceを営業基盤として活用しています。

成果

- 50 %
営業関連業務の削減
x 2
月間アポイント数
100
活動履歴入力率
1/3
レポート作成工数

同部署が直面していたのは、「多忙な営業現場において、ナレッジが組織に残らない」という構造的な問題でした。

導入前、営業情報の多くはスプレッドシートで管理されていました。  

一部ではEvernoteなどの個人ドキュメントツールも使われており、議事録や顧客リードの情報は担当者ごとに分散。チームごとに管理フォーマットも異なっていました。

その結果、

・顧客リードの全体像が見えない  

・過去の提案履歴を横断的に把握できない  

・営業活動を分析するためのデータが揃わない

といった状況が生まれていました。

こうした「情報の断絶」は、現場の負担をさらに重くしていました。 

メディア営業では、1人の担当者が50社ほどの顧客を抱えることも珍しくありません。情報が整理されていないため、久しぶりに連絡する顧客について「以前どんな提案をしていたのか」「どこまで話が進んでいたのか」を思い出す作業だけでも、多大な時間を費やしていたのです。

「案件管理は100%入れていましたが、活動履歴は正直ほぼゼロでした」

この状態では、営業の知見は「個人」の中に留まり、「組織の資産」になりません。

この悪循環を断ち切るため、同社は「営業基盤の再設計」に踏み出しました。

営業情報をひとつの基盤に集約

サイバーエージェントは、まずAgentforce Salesを中心に営業基盤を整備しました。

顧客情報、案件、活動履歴をSalesforce上で統合。 これまで分散していた営業情報をひとつの基盤にまとめました。

これにより、マネージャーが必要な情報にすぐアクセスできるようになり、営業活動の分析やレポート作成の精度が大きく向上しています。

Agentforceで営業プロセスを再設計

営業基盤の整備に続き、同社が次に着手したのがAgentforce を活用した「営業プロセスのAI化」でした。

背景には、サイバーエージェント全社で進められている強力なAI活用文化があります。

事業部ごとのAI活用状況を競う「AI番付」という独自の評価制度もあり、営業現場からも「AIでさらなる進化を遂げられないか」という声が上がっていました。

そこで同社は、まず少数ライセンスでのテスト導入を開始。現場のメンバーが実際の商談で使いながら、実務にどこまで適応できるかの検証を重ねました。

当初は「AIでどこまでできるのか」と慎重な見方もありましたが、機能を深く知るうちに評価は一変します。

「私たちがやりたかったことが、これひとつで全部できるじゃないか」

そう確信したことを機に、現在は、約10名の営業組織全体へと活用が広がっています。

商談後の業務を大幅に削減

Agentforce の導入によって劇的な変化を遂げたのが、商談後のルーティンワークです。

これまでは、オンライン商談が終わるたびに「録画を確認し、議事録を作成し、AIで要約して、さらに別のツールやSalesforceへ転記する」といった、分断された作業が営業担当者を圧迫していました。

現在は、このプロセスがSalesforce上でひとつの流れるような体験(シームレスなフロー)に統合されています。商談が終了すると同時に録画がレコードに紐付き、AIが自動で議事録を生成。活動履歴の更新から次回のネクストアクションの提案までが、自動で行われます。

「複数のツールを行き来していた時間が、すべてなくなった」

この統合によるインパクトは大きく、営業担当者の体感では、商談に関連する事務作業が約50%も削減されるという結果をもたらしています。

事務作業の削減で「顧客との接点」が倍増した

この変化がもたらした効果は、単なる「時短」に留まらず、営業活動の「質と量」を根本から変えつつあります。

最も顕著な変化は、顧客とのアポイント数に現れました。以前は事務作業に追われ、月10〜15件程度が限界だったアポイント数が、現在は月30件程度へと約2倍にまで増加しています。

「商談後の作業負荷が激減したことで、その分、次のアポイントへ向かうエネルギーと時間を自分たちで生み出せるようになりました」

浮いた時間を事務処理ではなく、本来の目的である「顧客との対話」に充てる。そのシンプルな変化が、営業活動のあり方そのものを塗り替えつつあります。

事務作業から解放されたことで生まれた時間と余力が、「営業組織全体の機動力」を引き出す原動力となっています。

トップライン(売上)を伸ばすためのところに注力していくために、社内ツールを構築し管理することにリソースは割きづらいです。長くアップデートし続けてくれるSalesfroceをはじめとしたSaaSを活用することで、長い目で見た持続可能性として良いと思っています。

樋山 敬太 氏
株式会社サイバーエージェント, AmebaLIFE事業本部 ライフスタイルセールス ドットグループ セールスリーダー

現場にとって「空気」と言えるほど浸透した基盤。

しかし、「AI活用」を全社テーマに掲げ、強い内製文化を持つサイバーエージェントだからこそ、「AIがあれば、システムは自分たちで作れるのではないか」という疑問が浮かぶかもしれません。

実際、生成AIの普及によって「SaaSの時代は終わった(SaaS is dead)」という議論も聞かれるようになりました。

しかし同社の判断は、少し違いました。

重要なのは「作れるかどうか」ではなく「進化させ続けられるかどうか」だったのです。

社内ツールは、一度作れば終わりではありません。保守、改修、機能追加――ビジネスの変化に合わせて進化させ続けられなければ、システムはすぐに「技術的負債」となります。

サイバーエージェントにとってエンジニアは、事業成長に直結するプロダクトを生み出すための重要な資産です。営業管理ツールの保守にリソースを割くよりも、自社のメディアやサービスを伸ばす開発に集中すべきだと同社は考えました。

そこで同社が選んだのが、「基盤はSaaSに任せ、活用は自分たちで拡張する」というアプローチです。

AIがあればシステムは作れる。

しかし、作り続けるコストは決して小さくありません。

だからこそ同社は、基盤をSaaSに任せ、「エンジニアの力」を本来のプロダクト開発に集中させることを選びました。

それが、AI時代におけるサイバーエージェントの確かな選択でした。