猛暑の修理を、止めない。双葉電機、Agentforce Field ServiceとSlackbotで年間4,500件のエアコン修理に応え続ける体制を確立
Claude Codeによるヘッドレス開発で、現場の2名がSalesforceを毎日進化させる
Claude Codeによるヘッドレス開発で、現場の2名がSalesforceを毎日進化させる
夏になると、修理依頼は一気に押し寄せます。気候変動や省エネ補助金を背景に業務用・家庭用ともに空調需要は伸び続け、双葉電機の修理受付は2002年の年間約2,500件から2024年には約4,500件へと約1.8倍に増加。保守契約数は同じ期間で約4倍に増え、繁忙期には1日100件近い依頼が集中することもあります。
一方、対応するサービスマンは約20名。空調・冷熱機器の修理には高い専門性が求められ、独り立ちまでには最短でも1年半、通常は2〜3年を要します。依頼が増えたからといって、すぐに人を増やせる仕事ではありません。常に需要が供給を上回るなか、一人ひとりの熟練でリソースを絞り出してきました。
限られた技術者を、どの現場へ、どの順番で送り出すか。その判断は、長く紙の予定表と熟練者の経験に支えられていました。なかでも、勤続18年の担当者が持つ土地勘は「頭の中のGoogleマップ」と呼ばれるほど。現場の場所、作業時間、技術者のスキル、前後の移動を瞬時に組み合わせる判断は高い精度を誇る一方、「あの人がいないと予定が回らない」状態が常態化し、担当者が変わると安全を見すぎて予定を詰め切れず、処理件数や収益性が落ちるといった品質のばらつきも生じていました。
現場のサービスマンはタブレット化が進んでいたものの、ディスパッチ業務は紙のまま。シーズン中はA2サイズの予定表と作業指示書が机を埋め尽くし、電話で受けた内容を紙のメモから基幹システムへ打ち直す工程では、細かな抜け漏れも生まれていました。「あの案件、今どうなっている?」と確認の電話が入るたび、担当者は手を止めて紙を見に行く必要がありました。
増え続ける修理依頼に応えながら、熟練者の判断を、誰もが使える仕組みに変える。それが、双葉電機が乗り越えるべき「次の壁」でした。
修理依頼の多くは電話で入ります。双葉電機はCTIのCT-ONEを起点にPartner Contact Center(旧称 Salesforce Voice)で通話をリアルタイムに文字起こしし、Agentforce for Serviceが会話を要約してSalesforceのケースへ反映する仕組みを整えました。オペレーターは要約済みのケース内容を見ながら基幹システムに起票でき、耳で聞いた内容を紙のメモに書いて打ち直す工程で生じていた抜け漏れが解消されました。
双葉電機は、報告書や作業予定の電子化、作業標準時間(ST)や技術者スキルの可視化を段階的に進めてきました。その蓄積を実際のアサインへと変えたのが、Agentforce Field Serviceです。
ディスパッチャーコンソールを軸に約20名への割り当てを再設計し、案件の位置・所要時間・スキルをスケジュールポリシーが総合的に判断。現在はアサインの約50%を自動化し、複雑な案件は人が調整するハイブリッドな運用を行っています。1件あたり約5分かかっていた調整は1分未満へ短縮され、「ディスパッチ待ち」による案件の滞留もほぼ解消しました。
自動スケジューリングの結果は熟練者の判断に近く、担当者が「多分ここに入るだろうな」と考えたルートにぴたりと一致する一方、ときには人が見落としていた、より効率的なルートを示すこともあります。
双葉電機はSlackを全社導入しており、日々のコミュニケーションだけでなく、案件を次の工程へつなぐ「運搬レール」としても活用しています。基幹システムから出力された作業指示書のPDFをSlackbotに投げ込むと、納入先の表記揺れなどを整えたうえでSalesforceを検索し、ケースに不足情報を補完します。
社内問い合わせはグループメンションでSlackに集約され、botが自動で拾ってケースとして起票。さらにSalesforce上でフェーズが更新されると、別のbotがSlackスレッドに「対応中」の絵文字スタンプを自動で押します。誰が何を対応しているかが依頼者にも一目で分かり、「あの案件、今どうなっている?」という確認の電話や声かけが激減。抜け漏れゼロの体制と「見てもらえている」安心感を、同時に届けています。
特筆すべきは、Agentforce Field Serviceを含むSalesforce拡張のほぼすべてを、冷熱ソリューション&メンテナンス部の現場担当者2名が内製している点です。会社の判断で2名に管理者権限が付与され、開発の主導権は現場に委ねられています。
日々の開発フローは、VS Code上でClaude CodeやCodexと対話しながらApexコードとLightning Web Componentsを書き、CLIでサンドボックス環境にヘッドレスでデプロイして検証、本番へ順次リリースするというもの。基幹システムの色使いに寄せた「作業予定表」画面や、案件のフェーズをドラッグして進捗を可視化するカンバンボードなど、痒いところに手が届くUIが日を追って追加されています。
「ここが見づらい」「この確認作業をなくしたい」。日々の気づきを、外部ベンダーの対応を待たずにそのまま次の改善へ変えられることが強みです。次は、Slackに作業指示書を投げるだけでケース、ワークオーダー、サービス予定までを自動生成する構想も現場発で動いています。ヘッドレス開発は、改善のスピードと、それを担う人の成長を同時に生み出しています。
今まで感覚と経験値でやってきたディスパッチと、Agentforce Field Serviceの自動スケジュールが出す結果が、驚くほど近しいものになってきました。たまに人の頭では見落としてしまうところに、“確かにそっちの方が効率的だ”と唸らされるルートを提案してくることもあります。もう本当に、ありとあらゆる機能を使いつぶしてやろうというぐらいの気持ちで使い倒しています。
部長代理 森永 陽 氏、チーフ 山田 和弥 氏、宇佐見 恭音 氏双葉電機株式会社, 技術統括本部 メンテナンス本部 冷熱ソリューション&メンテナンス部 インサイドセールス
双葉電機は導入にあたり、ディスパッチに特化した他社製品も比較検討しました。しかし、基幹システムとの連携や部門をまたいだ情報共有に課題があり、同社が求めていたのは、たんに予定を効率よく組むためだけのシステムではありませんでした。修理受付、顧客情報、社内問い合わせ、ディスパッチを、同じ顧客データの上でつなぐことで「共有できないとダメだ」というのが結論でした。
もうひとつの決め手は、AI時代の内製をそのまま業務に載せられるプラットフォームであったことです。Partner Contact Center(旧称 Salesforce Voice)、Agentforce Field Service、Slackが同じCRMデータ基盤の上で組み合わせられ、Claude Codeによるヘッドレス開発で書いたApexコードやLightning Web Componentsが、そこにそのまま乗ります。1日100件を超える受付をさばく繁忙期に、改善要望を外部ベンダー任せにしていては間に合いません。
完成されたシステムに現場を合わせるのではない。現場が、自分たちの仕事に合わせてシステムを育てていく。Salesforceは双葉電機にとって、導入して完成するシステムではなく、「熟練者の知恵」を組織の力へ変え、現場とともに進化していく仕事の基盤なのです。