新しい同僚の名前は「Aibou(相棒)」。中部電力ミライズが Agentforce で雇ったAIエージェント

声で吹き込むだけで、録音できない商談も AI Ready なデータに。社内業務 年間約3,500時間削減(想定)を見込む。

概要

中部電力ミライズの法人営業本部 ビジネス営業推進部は、Agentforce Sales、Tableau、Marketing Cloud Account Engagement を組み合わせた基盤で、CRM利用率30%→100%、主要営業KPI+20%という土台を積み上げてきました。それでも残ったのが、「録音できない場面」で生まれる活動データのバラつきです。 同社は Agentforce 上に独自AIエージェント「「Aibou(相棒)」」を実装。声で吹き込むだけで、優秀なマネージャー視点の深掘り質問と約400語の社内用語集が、活動履歴を整えます。社内業務は年間約3,500時間の削減。人とAIが共に育つ営業組織へ、舵を切りました。

企業情報

中部電力ミライズは、中部圏を中心にエネルギーサービスを提供する電力・ガス販売会社です。法人営業本部のビジネス営業推進部は、中堅規模のお客さまを担当する部門。電気・ガスを軸に、近年は脱炭素系ソリューションなど付帯サービスの提案も急速に広がっています。法人向けのアウトバウンドコールセンターも運営し、対面と非対面の両輪でお客さま接点を設計してきました。

成果

30%→100 %
CRM利用率
+ 20 %
主要営業KPIの改善
- 3,500 時間/年
Agentforce 活用による社内業務削減
物理的に増える業務、削られる対話の時間。AI Ready ではないデータの壁を、どう越えるか。

中部電力ミライズの営業現場では、さまざまな業種の法人のお客さまと向き合っています。日々の対話やこれまでの接点を通じて、本業である電気を中心に一社一社に合った提案や対応へとつなげていく営業です。

一方で、脱炭素ソリューションをはじめ、電気ガスに付帯する商材やサービスが増え、不慣れな業務を覚えたり、調べたり、学んだりする時間も増えています。その結果、本来最も大切にしたい、お客さまと向き合う時間が物理的に削られてきていました。

価格競争に陥りやすい業界で選ばれ続ける鍵を、同社は「お客さまへのレスポンスの質とスピード」に置いてきました。Agentforce Sales をデータ基盤の中核に据え、Tableauで営業活動を「活動・提案・成果」の3軸に分解。Marketing Cloud Account Engagement で非対面接点を維持する。マルチクラウドの構成のもとで、CRM利用率は30%から100%へ、主要営業KPIは+20%、月100時間の集計作業はほぼゼロになりました。データドリブンな営業組織として、確かな実績を積み上げてきたのです。

しかし、次の壁が見えてきました。CRMに入る活動データそのものが、人や状況に依存してバラついていたのです。業界未経験の20代から経験豊富なベテランまで、入力の丁寧さは人それぞれ。多くは帰社後に思い出しながら入力するため、忙しさで深さや網羅性が変わります。対面が中心の商談には、録音できない場面、録音を忘れる場面が必ずある。人手で入力したものとAIが録音から作ったもの、その間に大きなGAPが生まれれば、AIから引き出せる示唆の精度は安定しません。「データドリブン」の次に進むためには、活動データそのものを AI Ready に整え直す。そこが、次のテーマでした。

Agentforce で形にする「次世代の営業インフラ」構想

中部電力ミライズが見据えたのは、AIツールの導入ではなく、営業組織そのものを「人とAIが共に働く」かたちへ組み替えることでした。Agentforce を起点に、お客さまへの「準備・即対応・改善」をAIが支援し、CRMへの入力や報告などの社内業務はAIに任せる。それで生まれた時間を、お客さまと向き合う対話に振り戻す。同社はそんな絵を描きました。マルチクラウド基盤の上に、AIエージェントを「同僚」として迎え入れる構想です。

独自AIエージェント「Aibou(相棒)」が、現場の声を引き出す

最初に形にしたのが、Agentforce 上に構築した独自AIエージェント「Aibou(相棒)」です。商談を終えた営業担当者は、移動中や休憩中にスマートフォンを取り出し、「Aibou(相棒)」に向かって話しかける。話す順番も構造も考えなくていい。思い出した順に情報を吹き込めば、それで足ります。

「Aibou(相棒)」のプロンプトには、ふたつの工夫が組み込まれました。ひとつは、「優秀な営業マネージャーの視点で問いを網羅的に洗い出し、自社が重視する観点で3つに絞り込む」プロセス。「具体的な導入時期や予算は?」「お客さまの要望や期待は?」「商談推進プロセスは今どんな状態?」と、忙しい営業担当者がつい抜けがちな観点を補う深掘り質問が返ってきます。もうひとつは、約400語の社内用語集の組み込み。例えば中部電力ミライズを指す「MZ」のような社内・業界の専門用語や略語をAIが正しく解釈し、文脈を取り違えずに要約・登録までを行います。

録音できなかった商談の直後でも、声で吹き込むだけで活動履歴がAIに使える粒度で整う。一連の体験そのものが、「データドリブンの先」へ進むための土台になっています。

動的データと社内ナレッジを束ね、個々の状況に最適な支援へ

「Aibou(相棒)」が整えた活動データは、Tableauで可視化される営業のレベルデータ(得意・不得意、AIロープレ評価、1on1や日々のアセスメント)と、ベストプラクティスや社内マニュアル、ルールといった社内業務ナレッジと組み合わさってこそ、本来の威力を発揮します。Agentforce が、個々の営業担当者が今どんなお客さまと向き合っているのか、どんな提案を準備すべきか、誰に相談するのが最適か。そうした「個々の状況」を理解したうえで、最適なタイミングで最適なアドバイスを返す。同社が描いているのは、そんな姿です。

この仕組みは法人営業の現場にとどまりません。約100名規模の法人アウトバウンドコールセンターを含む顧客対応の現場にも段階的に広げ、対話の質とスピードをAIの力で底上げしていきます。

新しいツールを単に導入することは、現場にとって大きな負荷になりかねません。だから、すでにある業務プロセスの中にAgentforce を組み込むことで、忙しい現場がストレスなくAIを使ってもらうことを意識しました。

内田 親良 氏
中部電力ミライズ株式会社, 法人営業本部 ビジネス営業推進部

目の前のコストパフォーマンスだけで判断する取り組みとは位置づけていません。中長期的に、営業組織の“収益インフラ”を築いていく。そのビジョンを Salesforce さんと一緒にチャレンジしていきたいと考えています。

村上 将之 氏
中部電力ミライズ株式会社, 法人営業本部 ビジネス営業推進部 課長代理
データドリブンから AI ドリブンへ、自然に橋を架ける土壌がある

中部電力ミライズが Salesforce に見出しているのは、製品単体の機能ではなく、データドリブンから AI ドリブンへ、自然に橋を架けられる「土壌」です。Agentforce Sales、Tableau、Marketing Cloud Account Engagement、そして Agentforce が、同じCRMデータの上で連携する。データの蓄積から可視化、AIエージェントによる自律的支援までが、一本の線でつながります。業務フローと権限のガバナンスが整っているからこそ、新しく雇い入れるAIエージェントも安全に働ける。その地ならしが、すでに済んでいるのです。

加えて、モバイルでの音声入力や会議文字起こしといった標準機能の上に、社内固有の用語集や“優秀なマネージャー視点”といった自社の文脈を載せて、独自エージェントへ仕立てる柔軟性。Salesforce が他社支援で培ってきたCRMデータ分析・AI活用のベストプラクティスと、現場が積み上げてきた営業の知恵が、無理なく一つに重なります。