UBE三菱セメント 「主語は新会社」を合言葉に。Salesforceで描く新会社の業務基盤

「FAXと電話」から「ひとつのポータル」へ。Salesforceで結び直す、約1,900社の取引先との取引体験。

概要

2022年4月、宇部興産株式会社(現・UBE株式会社)と三菱マテリアル株式会社のセメント事業およびその関連事業等が統合し、UBE三菱セメント株式会社(通称:MUCC)が発足しました。発足時は基幹システム(SAP)の会計領域以外は、統合前の2社のシステムを併用して事業を立ち上げざるを得ず、自社システムへの統合を、発足から5年後の2027年4月までに完了させる必要がありました。 同社のIT部門が選んだのは、Gartner Magic Quadrant(マジック・クアドラント)で「右上(Leaders)」に位置する製品を対象にするという明確な選定方針。SAPはFit to Standardを目指し、社外との接点となるフロント基盤はSalesforce Experience Cloudに集約しました。販売店・サプライヤー約1,900社が日々利用する「セールスポータル」「購買ポータル」がすでに稼働し、すべての顧客情報とサプライヤー情報がSalesforceで一元管理されています。これを土台にAgentforce SalesによるCRM展開やAIチャットボット導入の構想が動き始めています。

企業情報

UBE三菱セメント株式会社は、2022年4月に宇部興産株式会社と三菱マテリアル株式会社のセメント事業およびその関連事業等が統合して発足した、国内有数のセメントメーカーです。 セメント関連事業を中核としつつ、カーボンニュートラル社会の実現を見据えた「環境・リサイクル事業」を第二の柱に据え、海外展開も視野に事業構造の再構築を進めています。発足から4年あまり、統合前の2社のシステムを併用する体制で事業を始動させ、現在は基幹システムの完全統合と業務基盤の整備を進めながら、新会社としてのシステム基盤の完成を加速させています。

成果

1,900
Salesforceでつながる社外取引先数
2社のシステム併用の船出から、自社の基盤へ。新会社の足元を固めるために、限られた時間で。

「2社のセメント事業を1年で1つの会社に統合する」。UBE三菱セメント株式会社の設立は、IT部門にとって極めて短い時間との戦いでした。発足の2022年4月時点では、新会社のシステム基盤は会計領域(SAP)以外はまだなく、2社のシステムを併用して事業をスタートさせざるを得ない状況。このシステムを、段階的に自社のものへ統合していく必要があります。発足から5年後の2027年4月までに、統合システムで事業を回せる姿に整える。残された時間は限られていました。

また、これらを新会社のスタンダードへと統合する作業を、業務を止めずに進める必要がありました。

旧2社それぞれの帳票やフォーマットを一つに統合する局面では、「旧システムを残したい」という現場の声も上がりました。そこで情報システム部門を率いる国井氏が打ち出したのが、「主語は新会社」というシンプルな指針です。過去の慣行を持ち寄って折衷するのではなく、新会社としての最適な姿を追求しながら、ステークホルダーの皆様にとっても、より使いやすく円滑に取引いただける仕組みづくりを目指しました。経営とIT部門が早い段階でこの考えを共有できたことが、社内に大きな抵抗を生まずにプロジェクト進捗を加速させた理由でした。

「マジック・クアドラントの右上」だけを選び抜く。Salesforce、Informaticaで描いた新会社のフロント基盤。

製品選定で迷っている余裕はありませんでした。「比較検討に時間をかけるよりも、確実な製品を導入して事業への貢献スピードを上げる方が重要だ」。情報システム部長の国井氏が掲げた方針は、マジック・クアドラントで「右上(Leaders)」に位置する製品から選び抜くという明確な指針でした。基幹システムはFit to Standard(クリーンコア)の方針で割り切る一方、社外との接点となるフロント基盤はSalesforceに集約。基幹とSalesforceをつなぐETLには、同じく「右上」のInformaticaを選定しました。「確実な製品で迷いなく前に進む」というIT部門の哲学が、設立から短期間での立ち上げと、その後の継続的な拡張を支える土台になっています。

Salesforceが結ぶ、社外1,900社と新会社のフロント。FAXと電話の商習慣を、ポータル一つの画面へ。

社外との接点を一手に引き受けるフロント基盤は、Salesforce Experience Cloud上に構築した二つのポータルが担います。販売店約300社からの注文を受け付ける「セールスポータル」では、受注、出荷手配、タンクなどの貸出品の依頼までを一つの仕組みに統合。北陸支店からスタートし、東京、名古屋、大阪へと段階的に拠点を広げているところです。UBE三菱セメント株式会社の業務効率化だけでなく、販売店の皆様にとっても、注文状況や各種手続きの確認をより分かりやすく行える環境を目指し、利便性向上の観点から整備を進めています。サプライヤー約1,600社向けの「購買ポータル」では、見積依頼から発注処理、支払通知書の連携までを一つの仕組みに統合。これまでバラバラに動いていた業務が、社外のサプライヤーから社内の発注担当・経理担当までデータでつながりました。現在、すべての顧客情報とサプライヤー情報がSalesforce上で管理されており、基幹システムとリアルタイムで連携しているため、品番ごとの取引状況やサプライヤーごとの発注実績の即時把握が可能です。

今後は、フロント基盤として築いた現場のデータを起点に、Agentforce Salesを活用した営業活動の可視化と顧客情報の共有、すなわち本来のCRM/SFAへと活用領域を広げていく構想です。AIチャットボットによる納期確認の即応など、ポータル展開が一巡したタイミングで、次のフェーズに踏み込む準備が進んでいます。

スマホひとつで完結する受注・承認と、自分で見て動ける現場へ。

セールスポータルの効果は、社外接点の整備だけにとどまりません。外出の多い営業担当者は、これまで帰社しなければ処理できなかった契約や承認の業務が、スマートフォンひとつでその場で完結するようになりました。販売店にとっても、サプライヤーにとっても、社内の担当にとっても、自分でシステムを見てステータスを把握できる。「自分で見て、自分で動ける」というシンプルな環境が、業務のスピードと正確性を底上げする効果があると期待をしています。

UBE三菱セメント株式会社が目指すのは、こうして浮いた時間で人員を減らすことではありません。「効率化で生まれた時間を、客先訪問など本来の営業活動に振り向ける」。トップラインの拡大に直結させることが、IT部門が経営に約束した本来の狙いです。

主語は新会社。新会社にとって何が一番良いかで議論する。それが、プロジェクトを動かす唯一のルールでした。

国井 巌 氏
UBE三菱セメント株式会社, 情報システム部長
セキュリティ、ローコード、エコシステム。「三つの確かさ」と人を介した信頼関係が、新会社のIT部門を後押しした。

社外1,900社の取引先が日常的に使うフロント基盤を、限られた時間で立ち上げる。この規模とスピードを両立させるためにUBE三菱セメント株式会社が評価したのは、「セキュリティ」「ローコード開発の柔軟性」「基幹連携まで完結するエコシステム」の三点でした。社外との接続を一手に引き受ける以上、自社で構築し保守する重みは大きく、Salesforceというクラウドにそのリスクを移転できたことは、新会社のIT部門にとって決定的な意味を持ちました。

加えて、コンペの場で要件を聞いた直後にデモ画面を組み上げ、「これで要望を十分満たせる」と関係者に実感させた技術担当の提案。日々の関係性のなかでUBE三菱セメント株式会社の方向性を理解し、AIなど最新動向を継続的に持ち込むSalesforceの担当営業の姿勢。固定メンバーで伴走するチームの厚み。機能だけでなく、新会社を支える「人」と「エコシステム」の総合力が、Salesforceを選ぶ判断を後押ししました。