2. 現場主導・本社支援の綿密なプロジェクトでSalesforce導入・定着化を推進
同社は、“Fit to Standard”を実現する新たなシステムとして、Salesforceの導入を決めました。選定の際に評価したポイントは、世界でもっとも導入実績の豊富なCRM・SFAであり、多くの企業のノウハウを取り入れられることや、名刺管理アプリのSansanをはじめ、社内で利用しているソリューションとAPIで容易に連携できることなど。中でも決め手になったのは、顧客に寄り添いながらも迎合することなく、対等なパートナーとしてともに導入・定着化を進めようとするSalesforceの企業姿勢だ、と小川氏は話します。
「Salesforceは、顧客のいうことならなんでも受け入れるというわけではありません。たとえば私たちの要望に疑問を感じたら、『そのようなニーズは聞いたことがなく、Salesforceの機能にもありませんが、本当に必要ですか?』と端的に指摘してくれる。すると私たちも、これは当社だけの特殊な感覚なのだ、世界標準とは違うのだと気づき、“Fit to Standard”という目的の達成に近づくことができる。そういう企業姿勢にもとづくコンサルティング力が、他社とは異なる優れた点だと感じました」(小川氏)
2022年3月、同社はSalesforceの導入に着手しました。ただ、CRM・SFAを利用する法人営業の社員約8,000名を擁する巨大組織において、新たなシステムの利用を定着させるのは容易ではありません。
そこで北島氏をオーナー、小川氏をリーダーとする推進チームは、綿密な計画を立て、Salesforceの導入を段階的に進めていきました。まず取り組んだのが、経営トップを巻き込み、率先垂範・プロアクティブなマネジメントを徹底することです。
具体的には、機会のあるたびに経営層から社員に対し、「データドリブン経営の実現には皆の協力が必要だ」とSalesforceの利用を訴えてもらい、かつ各部門の部長クラスに率先してSalesforceを使うよう働きかけることによって、今後は全社でSalesforceを利活用するのだ、という社内の雰囲気を醸成しました。また、幹部向けのダッシュボードを用意し、従来のように幹部が部下の報告を受けてからマネジメントするのではなく、自らデータを見て能動的にアクションを起こすよう促していきました。
同時に、推進体制も強化しました。事業エリア全域から部門ごとの営業責任者を集めて200名体制のワーキンググループを組織し、当初は定着活動を本社主導で短期間で実施、徐々に現場主導・本社支援の形で現場の実態に合ったシステムづくりと定着化を推進しました。また、推進業務は兼務ではなく、営業戦略部門を事務局として専担化しました。
ほかにも、Salesforceを使いこなすための営業ガイドブックの作成や、支店長・営業責任者・マネージャーの順に行うマネジメント層重視の研修、会議・意思決定フローをSalesforceに置き換える業務プロセス改革など、さまざまな観点からSalesforceの定着化を進めました。
「定着を特に促したポイントはいくつかあります。まず、プロジェクトの序盤戦で“突き抜ける組織”を作ったこと。最初から全拠点を公平に扱うのではなく、パイロット拠点にリソースを集中投下して成功事例を作ることで、社内の競争意識が醸成されました。また、定量的で明確なKPIを設定して目標をわかりやすく示したことや、本社主導から現場主導へ徐々にシフトチェンジを図ったことも効果を発揮しました。
そして、中でも大きかったのは、外部の力を活用したことです。Salesforceの4名のコンサルタントの方に事務局に常駐していただき、フレームワーク・事例の提供やペースメイキング、専門家としての各施策の権威づけを行っていただけたことは、定着のスピードや質の向上に直結したと感じています」(小川氏)