2. 標準機能で全体最適化を図るSalesforce統合プロジェクトを推進
そうした状況を受けてNTT Comは、データ連携によって顧客体験価値の最大化を図るべく、3社のSalesforceの統合を決断しました。もちろんその実現は、膨大な数の従業員を擁し、長年それぞれの方法でSalesforceを利用してきた巨大企業グループにとって、一般的な企業以上に困難なことです。また、高い技術力と豊富なリソースを有する同グループには、新システムの内製や他のソリューションの導入など、さまざまな選択肢があったはずです。それでもSalesforceの統合に踏み切った理由について、丸山氏とグエン氏はこう話します。
「従来、当グループでのSalesforceの使い方は、社内の生産性向上に特化しがちでした。しかし、Salesforceは本来、数あるCRMの中でも、お客様とのさまざまな接点の情報を一元化できるという点で、顧客体験価値の向上という経営課題に対してもっとも強力な武器となり得るものです。それなら、他のシステムに手を出すより、Salesforceに経営資源を集中投下すべきだ、という経営トップの強い思いがありました」(丸山氏)
「開発面では、確かにいろいろな解決策が候補に挙がりました。それでも、使い慣れていてユーザーの学習コストが低い、各種システムとの連携が容易で開発コストを抑えられるといった利点から、Salesforceを統合して継続利用するのがもっとも合理的だという結論に達しました」(グエン氏)
そうした経緯で始まった、Salesforce統合プロジェクト。統合の基本方針は“Fit to Standard”、すなわち3社の業務に個別最適化され乱立していた機能を可能な限り減らし、標準機能で統一して全体最適を図ることでした。ただし、開発側が独断で要件定義を行うのではなく、グループ全体から意見や要望を吸い上げ、最終的な意思決定を下せるようにするため、開発側・業務側の双方のメンバーで構成されるステアリングコミッティ、通称「ステコミ」を設置しました。開発側の参画メンバーの1人であるグエン氏はいいます。
「ステコミでは、プロジェクト開始時から開発側と業務側が密接に連携し、繰り返し意見を交換して解決策を見出していきました。ただ、自分の使い慣れた機能を残したいというのは誰しも思うことなので、利害関係の調整は大変でした。それでも、“Fit to Standard”の観点から、ユーザーと直接交渉して理解を得たり、ユーザー同士で話し合ってもらったりしながら、全体最適化されたシステムの実現を目指しました。もちろん、システムだけを統合しても、各社で業務プロセスが違うままでは仕事を回せないので、業務側と協力しながらプロセスの見直しも同時に行いました」(グエン氏)
一方、業務側としてステコミに参加した丸山氏はこう話します。
「最初のステコミでは、NTT Comの業務側の課題点を挙げて欲しいといわれ、いわゆる名寄せの問題について話しました。大企業向けの部門と中小企業向けの部門とではデータベースが別々だったため、重複して登録されているお客様を別人格として扱ってしまっていたのです。そういう課題がグループ全体でほかにもたくさんあったので、段階を踏んで標準化、解消していくことにしました。たとえば、ある時期までは基本的に各社のシステムや業務プロセス、文化を踏襲するけれども、それまでに最低限、Salesforceの用語や営業のフェーズ分け、評価の指標を統一すると決める、といった工夫で、徐々に標準化を進めていきました」(丸山氏)