3. 3つのオブジェクトの実装でデータに基づく営業活動の実践を支援
Salesforceの導入により同社が目指したのは、円滑かつスピーディな営業情報の共有をベースに、これまでのアナログな情報管理の中で取りこぼしていた顧客ニーズなどをしっかりと拾い上げて、売上につなげていくことです。そうした考えに則り、同社では主に3つのオブジェクトをSalesforce上に実装しました。
1つは、「活動の記録オブジェクト」。これは、すでに述べた同社の営業情報の源泉である、各営業担当者による日々の報告をSalesforceで行うものです。「当社の場合、従来から日報の提出を徹底していましたから、幸い、定着化の問題は発生しませんでした」と水門氏。現在、同社におけるSalesforce上での日報入力率は99%を達成しているといいます。
日報を戦略的に活用する同社の取り組みとして注目されるのが、上長が日報の採点を行う運用がとられていることです。「例えば、自分の考えを明確に述べているか、事実関係を正確に伝えているかといった記述上の視点、およびお客様企業のキーマンに会えているか、製品にかかわる要求をしっかりヒアリングできているかなど活動内容の視点の双方で採点を行っています」と藤村氏は説明します。
これら採点結果は、一定期間で集計されて各担当者自身の評価にも活かされることになります。こうしたことが、各担当者の間に日々の日報入力を定着させ、報告内容のブラッシュアップや日々の営業活動の強化を目指すうえでの重要なモチベーションになっているものといえます。
「また、このオブジェクトには営業活動の目的や手法をデータ化し、感覚に頼るのではなくデータに基づいて活動するという、営業担当者の行動変容を促すための各種の仕組みも実装しています」と水門氏は説明します。
さらに、作成された日報は、関係する支店や営業担当者に直ちにChatterで共有されます。必要な事項についてタイムリーに確認を求めることができる、スピードアップのための工夫です。
2つ目は「お問い合わせ記録オブジェクト」です。ここでは、顧客から受けた問い合わせをデータとして蓄積し、誰もがスピーディかつ正確な問い合わせ対応ができるようになることが目指されています。
「蓄積されたデータの内容を分析して、カタログや商品の改善、新しい商品開発につなげていくというデータ活用の推進もこのオブジェクトにおける重要なポイントとなっています」と水門氏は説明します。
そして3つ目が「アイデア提案オブジェクト」です。同社では1975年から、アイデア提案制度を展開してきました。「この制度では、全社員が半期に製品開発や業務改善に関する新規アイデアを提出することが求められていますが、提出されたものをデータとして管理していなかったため、ビジネスが拡大し社員が増える中で、評価側の作業も追いつかなくなり、制度自体が形骸化してしまっている感がありました」と藤村氏は言います。
そこで、このオブジェクトによりアイデア提案の管理をSalesforce上で行えるよう整備。誰がどういう提案をしたのか全社員が閲覧できるようにし、キーワード検索の仕組みも整えました。「その結果、2021年の1年間で採用された提案が数件程度に過ぎなかったものが、2022年に入って半年程度の間に数十件以上の採用提案が現れる結果となりました」と藤村氏。まさにSalesforceを使った制度運用が、アイデア提案に向けた社員のモチベーションを大幅に向上させたものといえます。