「個人の力で売り切る営業」から「チームで勝つ営業」へパナソニック エレクトリックワークスがSalesforceと進めるデータドリブン営業改革
現場の強さを、データで組織の力へ。Salesforce、MDM、商談特化で実現する「20億円」の創出ストーリー。
現場の強さを、データで組織の力へ。Salesforce、MDM、商談特化で実現する「20億円」の創出ストーリー。
同社の営業は、もともと現場の圧倒的な遂行力を持っていました。月末の売上を「個人の気合と根性」で泥臭く追い切り、代理店との強固な関係性を活かして数字を作る力は、長年にわたり同社の成長を支えてきた誇るべき強みでした。
しかし、その強さは時代とともに次の壁へと変わっていきます。
取扱商品数が10万品番を突破したことで、営業担当者個人の知識だけで全ての提案をカバーすることが困難になりました。また、同じ地域に複数の代理店が存在する構造上、自社商品同士での競合や社内での激しい価格競争(値引き合戦)が発生していました。
さらに、BtoBtoBのビジネスモデルゆえに、売上の約6割を占める「代理店からの自発的な注文」と、「営業自身が動いて獲得した案件(約3割)」がデータ上で混在。営業が本当に追うべき案件が見えにくく、月末に売上が不足すると翌月以降の注文を前倒ししてもらう「押し込み営業」が発生し、正確な活動管理や見通し管理が機能していませんでした。
現場の努力に頼る「属人的な営業」から、データを武器に組織で動く「再現性のある営業」へ。同社の抜本的な改革がスタートしました。
従来の営業担当者が出す見通しは、“予測”というより、今月を何としてもやり遂げるという“決意”に近い数字でした。Salesforceでデータを分離・可視化し、さらにMDMによって顧客や施設の情報をつなぎ合わせたことで、月末の数字合わせではなく、チーム全体で本当に注力すべき利益率の高い案件にリソースを集中できるようになりました。データがあるからこそ、AIを活かした次のマネジメントの型が見えてきています
荒木 貴史 氏パナソニック エレクトリックワークス株式会社, マーケティング本部 ビジネスアーキテクトセンター センター長
まず、経験や意志に頼っていた売上管理をデータ化するため、過去2年分・5,000パターン以上の出荷データを徹底的に分析しました。データ上で混在していた「代理店からの自発的な注文」と「営業が追うべき案件」を分離し、データに基づく見通し管理を導入したことで予測精度が劇的に向上し、月末の無理な押し込み営業の完全廃止に成功しています。
この移行により、売上計算や資料作成といった付帯業務を月間約1万時間(年間約2億円相当のコスト)削減。生み出されたリソースを優先順位の高い案件の活動に特化させる「選択と集中」により、約20億円もの売上・利益面の効果創出を見込んでいます。同時に、Salesforce上で案件や活動状況をリアルタイムに共有する基盤が整ったことで、2024年4月には個人の売上目標を完全に廃止しました。利益率や将来性を基準に優先順位をつけ、チーム全体の目標と活動の質を評価する「チームで勝つ営業」へと大きく舵を切りました。結果、マネージャーが個人の不足分を詰めるマネジメントは自然と消滅。代わりに、「実る可能性の高い案件」を全員で見極め、優先順位をつけてリソースを集中させる議論がチームの主役になりました。個人の小さな箱では機能しなかった「選択と集中」が、チームという大きな箱で初めて力を発揮しています。
データドリブンな営業を支える強固な土台として、散在・重複していた取引先、施設、キーパーソンのデータを約2年半かけて統合し、マスターデータマネジメント(MDM)を構築しました。ゼンリンやユーソナー(uSonar)といった外部データベースとリアルタイムで連携して常に最新情報を維持するだけでなく、営業担当者によるデータの独自入力を廃止し、データ管理部門へ入力を一元化する徹底したガバナンスを効かせています。
この高精度なマスターデータはCDPを通じて多数の連結子会社へ横展開されているほか、年間約80万件の問い合わせを受けるカスタマーサポート部門に導入したAgentforce Serviceともシームレスに連携。CSに寄せられた顧客の声を営業へフィードバックする仕組みが確立され、すでに約1.5億円の新規案件を創出するなど、部門の壁を越えた大きな成果に繋がっています。
活動入力ルールの厳格化に伴い営業活動のデータは従来の10倍に増加する見込みであり、同社はその膨大なデータのマネジメントにAIを積極的に組み込んでいます。
また、営業部門では、代理店からの問い合わせ対応を従来の人による一次受け・差配からSalesforceのAI機能による完全自動化へと移行し、約2割の工数削減を実現しました。
Salesforce Platform に蓄積された活動履歴や販売実績データを元に、従業員向け自律型AIチームメイト「Agentforce Coworker」に自然言語で質問するだけで、社内の最適な有識者を即座にリストアップし、フォローアップメールの作成といった次のアクションまで実行してくれます。さらに、商談の成約・失注要因の分析や次のアクション提案などの検証も進めており、意思決定の迅速化と営業生産性の大幅な向上が期待されています。
こうした一連の高度な変革を支えているのが、当初5名から約60名(半数は内製化メンバー)へと拡大した強力な推進組織です。現場のリーダーにトップランナーを据えて定着を後押ししたこの取り組みは、2025年度、SFUG CUPでの準優勝、パナソニックホールディングス全体のDXコンテストでも272件の中から最優秀に選ばれるなど、社内外で高く評価されています。
パナソニック エレクトリックワークスにとって、Salesforceは単なるSFA(営業支援ツール)に留まりません。
出荷データ、外部データ(ゼンリン/ユーソナー)、CS部門のAgentforce Service、そして基盤となるMDM/CDPまでを「ひとつの顧客起点プラットフォーム」として統合できる点が最大の価値です。分断されていた情報がつながることで、売上予測の自動化、チームでの最適な案件管理、そして最先端の生成AIエージェントAgentforceの活用までを一気通貫で実現する、同社の営業変革に不可欠なデジタル基盤となっています。