多品種少量・短納期など、製造業は複雑化する市場への対応が求められ続けています。顧客の高い提案要求にこたえるためには、技術的に高度な知識や、社内の技術部門や関係会社のキーマンとの人脈、そして過去の多くの案件に基づく知見や経験が必要とされ、結果的にベテランの個人商店的な営業スタイルに頼らざるを得なくなっている企業が少なくありません。最適な提案をしてくれるベテラン営業は、顧客からの信頼も厚いために担当変更もできず、属人化は一層進むことになります。

ベテラン営業のおかげで、一部の顧客内シェアアップと安定した取引は実現できますが、ベテラン営業は大口顧客にかかりきりになるため、その他顧客を大口顧客にするための活動までは手が回りません。結果的に営業部門全体の売上は伸び悩むこととなるでしょう。人手不足の現在では、即戦力の採用だけに頼ることもできません。売上拡大のためには、ベテラン営業が持つスキルを他の営業部員へ移転する必要があります。

営業部門から報告される売上予測は、経営者にとって非常に重要な情報です。売上予測はコスト管理や設備投資など、経営を判断する際の重要な要素だからです。ところが、多くのケースで売上予測の精度が低く、実際の売上着地がブレることについて悩む営業管理職は少なくありません。

売上予測の精度が低い場合の多くは、案件管理方法に問題があるようです。一般的に売上予測を立てる場合、「売上予定金額」と「確度」の組み合わせによって売上予測を算出します。そこで問題となるのが、「確度」が営業個人の感覚的な判断に委ねられている点です。たとえば、見積もりを出したら「高確度」と判断する営業担当もいれば、具体的な納期日を聞けたら「高確度」と判断する営業担当もいて、判断基準が統一されていないことが多いのです。その結果、売上予測の精度が低くなってしまいます。売上予測に表計算ソフトを使用している場合には、複数の売上予測を集計する業務の煩雑さも課題となっています。

売上予測の精度は経営判断だけではなく生産管理部門や調達、物流部門にも影響を与えます。生産財企業をはじめとした製造業では、自社生産ラインの稼働率の効率化が欠かせません。別システムで運用されている生産管理もまた、売上予測の情報を参照するケースがあります。中長期の案件状況を把握することで生産ラインのスケジュール調整をスムーズにすることができるからです。しかし案件管理があいまいだと、売上予測の精度の低下を引き起こし、生産現場の混乱、ひいては営業との信頼関係の破綻を招くことにもなりかねません。個人の感覚に任せない案件管理のルール化と、案件管理業務の効率化は、いまの製造業に待ったなしの状況です。

リーマンショックを機に、従来型の「系列」取引中心から脱却して、成長のため積極的に新規顧客を開拓する製造業が増えてきました。しかし、新規開拓には既存顧客との取引とは異なるいくつかの課題が存在しています。

一つ目は人的リソースの問題です。これまで新規開拓を行なってこなかった企業ではそのための人的リソースがなく、やむを得ず新人が担当となることがあります。当然、技術知識や営業対応力が十分とはいえません。二つ目は開拓スキルの問題です。新規開拓においては、先方担当者との積み上げた信頼関係がないため、意図しないことで低い評価をされてしまうことがあります。部署内にも新規開拓先の担当者や製品など顧客について詳しい人がいないために、最適な提案に時間がかかった結果、失注してしまうこともあるでしょう。

ここまで製造業の営業にまつわる3つの課題について説明してきました。3つの課題の根本原因は、案件進捗などを含む顧客情報が可視化・共有されていないことにあります。

  • 属人化による売上と営業力の伸び悩み
  • 経営判断を混乱させる低い精度の売上予測
  • 新規開拓がうまくいかないリソース/スキル不足

属人化は、顧客や取引情報、商談の進め方が個人に封印されていることが最大の問題です。提案書など資料の共有だけでは不十分で、ベテラン営業が持つ最適な提案プロセスや、社内外のステークホルダーとのコミュニケーション、打ち合わせタイミングなどは目に見えない営業独自のノウハウとして共有したい情報です。そのためには、案件ごとにすべての情報を格納し共有できるSFA/CRMの活用が最適です。どのように誰とどのタイミングでコミュニケーションして成約まで進めていったのか、正しい商談進行のプロセスを可視化し、優れたノウハウを全社で共有すれば、会社全体の営業力の底上げにつながります。失注した場合にも状況が可視化されていれば要因が特定しやすいため、成約率の向上に役立てることができます。

案件の活動履歴をSFA/CRMで共有し可視化することは、売上予測の精度を高めることにも寄与します。なぜなら、営業活動とは商談のステージをひとつひとつ成約へとコマを進めていくことですが、この商談ステージを社内で標準化して案件の進捗を管理することで、営業担当者ごとのバラつきの無い、統一された正しい「確度」で営業管理職が売上を予測できるようになるからです。活動履歴も共有されているため、営業担当者が妥当なステージを認識して行動しているか、次のステージに進めるにはどうしたらよいのかのアドバイスも可能となります。

新規開拓においてもSFA/CRM活用は効果的です。企業情報や担当者情報、製品情報などの基本的な情報に加えて、自社への興味度合い、先方の課題、先方からの要望、先方へ提出した提案書や商談内容など、新規顧客のあらゆる情報をSFA/CRMに格納し、ベテラン営業が所属する営業部はもちろん、技術開発部門や保守サポート部門などエキスパートがいる社内関係者に共有します。つまり、SFA/CRMを用いて、リソース/スキル不足を全社のチカラで支援するのです。商談状況を把握した専門家からタイムリーに、的確なアドバイスを受けることで、既存顧客に近い最善の提案ができるようになります。新人営業、新規担当者を組織力でバックアップ、推進することが、新規開拓と新規案件獲得の近道です。

このように営業活動の情報が溜まっていけば、AIも営業活動を支援できるようになります。過去の行動とその成果の分析結果から、AIが次にどのような行動を行うべきかを提案することで、行動の抜けや漏れを防止していくのです。

ものづくりから「ことづくり」へ、IoTやAIを使いこなす次世代の営業組織となるために。製造業は今、どのようなSFA/CRMを選択すべきなのでしょうか。