日本の製造業が抱える営業課題である「営業の属人化」、「売上見込みの精度」、「新規開拓」を解決するには、SFA/CRMツールの導入と活用が効果的であることを第1回、第2回で解説してきました。

採用難の時代、製造業の営業部門が抱える課題 >

製造業の営業力強化のハードルとは:3つの課題とその解決策 >

多くのSFA/CRMツールがある中で、製造業における営業課題の解決が本当にできるものを選ぶ必要があります。どのツールも機能的には同じように見えるため、選定の基準を正しく知っておく必要があります。

製造業の業務プロセスの特徴的なものは、サプライヤー企業の存在です。サプライヤーは、単純な仕入れ先ではなく協力会社という立場で案件に深くかかわっています。案件の提案段階から見積もり、納品時期など綿密な情報連携が欠かせません。その場合、社内はもちろん社外も含めて案件に関する情報が一元管理され、すべての関係者で共有されていれば、競合他社に先んじて顧客へ最適な対応ができます。

しかし、サプライヤー連携ができないツールだと、社内はSFA/CRMで情報共有、社外関係者へはメールで連絡する、など、流れが煩雑になり、スピードと精度に問題が発生します。コミュニケーションミスはサプライヤー側の生産管理に影響を与え最悪の場合、納期遅れなどを引き起こしかねません。重要情報の伝達漏れやタイムラグの発生といった、コミュニケーションミスは極力排除する必要があります。
営業、設計、技術、製造、品質管理はもちろん、社外のサプライヤーも含めたチームで簡単に案件情報を共有できることは、製造業におけるSFA/CRM選定の必須要件のひとつです。

製造業の重要な業務のひとつである設備保全や機械保守。テクノロジーが進化した今では、工作機械や建機に搭載されたセンサーのデータを分析し、部品交換時期や故障の予兆を把握するケースが増えてきました。このようなIoT活用においても、センシングデータの分析結果を顧客と紐付けることで、「センサーデータがしきい値を越えた」「異常値が発生した」といった情報をメーカーは即座に知ることができます。このCRM連携によってアラート発信を受けた保守サポートや担当営業は、社内の関連部署はじめ社外サプライヤーへも情報を迅速に伝達し、アラートと同時に問題の解決をスタートできるでしょう。CRMと連携したIoTデータが蓄積されれば、AIも問題解決に組み込めます。保守対応のスピードが上がり、かつ効率的に保全ができれば、メンテナンス担当者の活動の効率化はもちろん、顧客満足度/エンゲージメントの向上が期待できます。

現在、多くの企業が「IoTに取り組んでいるが具体的なビジネスになっていない」と感じています。その理由のひとつは、IoTデータがインターネットの先にある顧客とつながっていないことにあります。センシングしたデータと顧客をCRMでつなげば、IoTによるデータ収集も顧客を知るチャネルのひとつとして捉え、これまで把握できなかった顧客の製品使用状況を網羅的に、タイムリーに入手することができ、マーケティング、営業活動、アフターサポートなどビジネスに直結する活用が可能となります。IoT連携できるCRMの選定は、自社の差別化に大きく影響することになります。

製造業の業務プロセスにフィットしたサプライヤー連携、IoT連携を備えたSFA/CRMが、セールスフォース・ドットコムの「Sales Cloud」です。これまでご紹介してきた「属人化」など営業力強化を妨げている問題解決(つながるセールス1 つながるセールス2)に加えて注目されているのは、人工知能(AI)機能です。案件に発展しそうな見込み客を、スコアリングを通じてはじき出したり、マーケット情報や受注分析から、営業担当者へオススメの代理店をアドバイスしたり、さまざまな活用が可能です。さらに経営者やマネージャーにとって役立つのは、AIによるリアルタイムな売上予測。精緻な売上予測は、経営におけるリスクやストレスを大幅に低減し、健全な事業活動の土台となります。

このSales Cloudは多くの製造業で利用されています。その理由は、クラウドサービスであるため、導入しやすいということ。かつて、システム導入に必要だった基盤構築やアプリケーション開発を行わなくても優れた機能をすぐに利用でき、利用者数の分だけを支払うというわかりやすい価格体系が提供できています。
また、Sales Cloudは年間3回バージョンアップが行われているため、その機能は常に世界で最新。古いやり方でビジネスに乗り遅れることがありません。もちろんSaaS(Software as a Service)で提供されているので、ユーザーはバージョンアップ作業を行う必要がなく、新たに追加された機能を使うだけです。このようにシステム運用をしないですむことは、クラウドの大きなメリットであり、情報システム担当がいない中小企業の負担を大幅に削減できるのはもちろん、大手企業の情報システム部門はより価値のある業務に集中することができます。セキュリティやデータベース管理などは、セールスフォース・ドットコムがシステム監視と運用を行い安定したシステム稼働を保証しています。
また、クラウドサービスであることは、社外関係者であるサプライヤーや、社外から得られるIoTデータとの連携のたやすさも実現しています。

Sales Cloudは日本を含む世界中の大手製造業から中堅・中小企業まで、幅広い企業規模で利用されています。

今回は、業績低迷と営業の属人化に悩む老舗メーカーが、Sales Cloudによって業績好転することができた事例を紹介します。Mipox 株式会社(東京都立川市)は、1世紀近い歴史を持つ老舗企業です。1925 年(大正 14 年)、ドイツ製顔料・箔の輸入商社としてスタートした同社は、研鑽と実績を積み重ね、2001 年には東京証券取引所(JASDAQ)へ上場、電子部品向けの研磨フィルム市場において世界トップの地位を確固たるものにました。

同社はニッチな領域で極めて高いシェアを保持し、業界内でブランドを確立していることに特徴があります。2005 年に売上高 110 億円、営業利益 13 億円の企業へと成長を遂げたものの、同年をピークとして、同社の業績は次第に低迷しました。4年後の2009年には売上高が 30 億、営業利益がマイナス13 億円にまで落ち込みました。不振の原因は、高いシェアを持ち、業界内でよく知られた存在であるというおごりからくる、お客様から呼ばれて初めて訪問するという受け身の営業姿勢にありました。社員には経験豊富なベテランがそろい、かつ優れた製品や技術もありました。ところが、社内に“情報共有”という文化がなく、ノウハウや知識がすべて担当者の頭の中にしかない属人化により、営業活動の再現性が低かったり、営業以外の部門が顧客のことをよく知らなかったりしたのです。部門・拠点間の交流も限定的で、横展開しようにも、どの部門の誰と話をすればいいのかもわからない状態にありました。

同社は解決のためSalesforce Sales Cloudを導入し、情報はすべてSales Cloudに蓄積するようにトップダウンで指示しました。Sales Cloud導入から3年で営業部門のTo Doの入力数は1万4218件となり、営業活動は完全に可視化されました。問題の受け身だった営業姿勢は、長期間コンタクトを取っていない顧客がいる場合、 Sales Cloud から担当者にアラートが飛ぶという仕組みにより、一変します。60 日間接触なしの顧客数は、最初の 2カ月間で 280 件から3件に激減したのです。こうした業務改善の成果は、営業にとって重要な指標にも顕著に表れました。導入初年度下期、135 件だった商談数は 3 年後に 531件、成約数は43件から 132 件まで一気に3倍以上に伸びたのです。

同社事例にあるように、製造業の営業活動は属人化しやすい傾向にあります。また優れた技術や製品を持つがゆえに受け身の営業スタイルとなり、新規開拓や既存顧客拡大といった攻めの営業が苦手な企業も多いでしょう。日本の製造業ものづくり文化の強さに加えて、Sales Cloudを活用した攻めの営業へ挑戦、そして第4次産業革命を勝ち抜く「ことづくり」の製造業へと変革の舵を切ってはいかがでしょうか。

 
 
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