ITSM(ITサービス管理):完全ガイド
ITSMは、テクノロジーをビジネス目標に沿って活用する体系化されたプロセスやベストプラクティスによって、ITサービスの提供を効率化します。本記事では、その仕組みについて解説します。
ITSMは、テクノロジーをビジネス目標に沿って活用する体系化されたプロセスやベストプラクティスによって、ITサービスの提供を効率化します。本記事では、その仕組みについて解説します。
社内ITの対応が遅い、ばらつきがある、あるいは正確でないといった状況では、生産性が低下し、従業員の不満や顧客満足度の低下につながります。ヘルプデスクが課題の根本原因を迅速に特定できない場合、サービス品質だけでなく、評判やコスト、法令遵守、監査対応にも悪影響が及びます。
ITサービス管理(ITSM)は、体系化されたプロセスを整備することで、問題解決の迅速化やセルフサービス機能の提供、チーム間の連携強化を実現し、インシデント管理における従業員エンゲージメントと顧客体験の向上を支援します。
本記事では、ITSMの概要や重要性、効果的な導入方法について解説し、サービス運用の効率化につなげるポイントを紹介します。
ITサービス管理(ITSM)は、組織内で提供されるITサービスを、ライフサイクル全体にわたって設計、導入、管理するための体系的なアプローチです。インシデント解決、変更管理、資産管理などの標準化されたプロセスを通じて、IT業務をビジネスニーズに整合させることに重点を置いています。単に問題が発生してから対処する受け身の対応ではなく、サービスライフサイクル全体を見据えたプロアクティブな計画と継続的な改善を重視する点が特徴です。
ITSMのビジネス価値は、運用効率の向上やダウンタイムの削減、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上、そしてコンプライアンスとセキュリティ基準の維持を実現できる点にあります。ワークフローを効率化し、サービス提供の一貫性を確保することで、コスト管理やリスク管理を支援し、ビジネス全体の目標達成を後押しします。最終的には、ITを単なるカスタマーサポート機能から、ビジネス成功を支える戦略的な存在へと変革します。
これらの関連する概念は連携しながらも、それぞれ異なる役割を担っています。違いを整理すると次のとおりです。
ITSMは、プロセスの効率化や摩擦の軽減、全体的な満足度の向上を通じて、従業員エンゲージメントや顧客体験の向上に貢献します。以下はその具体例です。
AIが会話だけでトラブルを解決する「Agentforce IT Service」なら、チケット起票も不要。IT部門を解放しDXを加速させる業務変革を、10分の動画でご紹介。
ITSMは、チームが毎回ゼロから解決策を考えるのではなく、明確なプロセスに沿って業務を進めることで、効率的な働き方を実現します。その結果、問題解決がより迅速に行われるようになり、ダウンタイムも減少します。これは、業務を効率的に進めたい従業員にとっても、サービスを利用する顧客にとっても大きなメリットです。
ITSMの財務面でのメリットも積み重なっていきます。たとえば、未使用のソフトウェアライセンスのような無駄が見つかる、保証が適用されるはずの修理費の支払いを避ける、リソースを消耗する重複作業を防ぐといったことが可能になります。また、インフラの追跡精度の向上やプロセスの標準化によって、セキュリティ態勢やコンプライアンスの強化にもつながります。
ITSMは、社内の従業員を大切な顧客のように扱い、セルフサービスポータル、チャット、メール、電話など、従業員が利用しやすいチャネルでサポートを提供します。セルフサービスは、従業員自身が知識ベースで回答を見つけたり、パスワードリセットなどの共通のリクエストに対応する自動化されたワークフローを実行したりすることで、ITのサポートを待つことなく即座に解決策を得られるようにします。
これにより、すべての従業員の生産性が向上します。従業員は修正を待つ時間を短縮できます。ITチームは定型的なチケット対応が少なくなるため、より複雑な問題への対応に時間をかけることができます。その結果、チケットやインシデント、各種リクエストにおける全体の平均解決時間(MTTR)が短縮されます。
ITSMのメリットは、IT業務の改善だけにとどまりません。組織全体に測定可能な価値をもたらします。主なメリットは次のとおりです。
ITSMによって、重要なITサービスの安定性、モニタリング、プロアクティブなメンテナンスが確保されます。インシデント管理、問題管理、変更管理といった体系化されたプロセスを活用することで、チームはダウンタイムを最小限に抑え、より迅速に問題を解決できます。その結果、効率的なビジネス運営を維持できます。
ITSMによって、従業員とITチームの双方がインシデントやチケットの解決にかかる時間を大幅に短縮できます。体系化されたワークフロー、自動化されたルーティング、アクセスしやすい知識ベースによって、課題がより早く適切な担当者に届き、解決策も迅速に実施されます。MTTRの短縮により、業務の中断が減り、生産性が向上し、あらゆる領域でより良い体験がもたらされます。
ITSMは、内部ITチームのインシデント管理を効率化し、インシデントの特定、対応、解決にかかる時間を短縮します。これにより、従業員と外部顧客双方のユーザー満足度の向上につながります。
ITSMフレームワークは、明確に定義された役割、責任、ワークフローを確立します。特に、規模が大きい組織や、複雑な組織では、混乱を減らし、作業の重複をなくし、重要なタスクの見落としを防ぐことにつながります。
ITSMは、部門間のチームをつなぐことでサイロ化を解消し、課題解決に向けたより統合されたアプローチを実現します。これにより、問題解決の迅速化、ナレッジ共有の向上、コミュニケーションの強化につながり、最終的には従業員体験と顧客体験全体を高めます。
IT資産やサービスパフォーマンスの可視性が高まるため、組織は予算策定、調達、人員配置に関してより的確な判断が可能になります。ITSMは、作業の重複を避け、無駄を減らし、支出を最適化します。必要な場所にリソースを適切に配分し、未使用のソフトウェアライセンスなどのコストも削減できます。
ITSMは、ITサービスをビジネスの優先事項に合わせて最適化し、組織が達成しようとしている目標をテクノロジーが直接サポートするようにします。これにより、ITは単なるサポート機能ではなく、戦略的なパートナーとして位置付けられるようになります。
標準化されたプロセスに従うことで、内部ポリシーや外部規制への準拠が容易になります。ITILやISO/IEC20000のようなITSMフレームワークには、ガバナンスや監査の準備をサポートするベストプラクティスが組み込まれています。
総計値、フィードバックループ、体系的なレビュープロセスにより、ITSMは継続的な改善を促進します。チームは過去の課題から学び、ワークフローを最適化し、サービス品質を継続的に高めていくことができます。
チームが拡大し、業務がより複雑になっても、標準化されたITSMプロセスとワークフローによって、混乱の発生を抑えられます。新しい従業員は整備された仕組みにスムーズに参加でき、追加のサービスも実証済みの方法で展開できます。
ITSMが導入されていることで、新入社員は必要なツールやサポートを遅延や混乱なく利用できます。ITリクエストが一貫して処理され、アクセス権も適切に付与されるため、従業員は技術的な問題に妨げられることなく、本来の業務に集中できます。これにより、生産性向上までの時間が短縮され、チームに参加する全員がスムーズに業務を開始できるようになります。
ITSMは、さまざまなフレームワークや手法を用いて実装できます。それぞれのフレームワークが独自の構造やベストプラクティスを提供し、ITサービスを効果的に管理するための指針となります。これらのフレームワークは、組織がビジネス目標に沿ったIT業務を実現し、サービス提供を改善し、複数のシステムにわたって一貫したパフォーマンスを維持するための指針となります。とはいえ、すべての組織に当てはまる単一のアプローチがあるわけではありません。組織の規模、業界、成熟度、具体的なビジネスニーズに応じて、最適な方法が異なります。
最も広く採用されているITSMフレームワークの1つがITILです。ITILは、ITサービスを効率的かつ効果的に提供するための包括的なベストプラクティスを備えています。戦略策定と設計から、移行、運用、継続的な改善に至るまで、サービスライフサイクル全体を重視している点が特徴です。ITILが広く支持されている理由の1つは、その柔軟性と拡張性により、あらゆる規模の組織に適していることです。また、ビジネス目標に沿ったITサービスの運用とサービスの可用性の向上に重点を置いているため、ITが事業運営の中心となる企業で特に評価されています。
ITSMで利用されるフレームワークには、他にもガバナンスとコンプライアンスに重点を置くCOBIT(Control Objectives for Information and Related Technologies)や、ITサービス管理の国際規格であるISO/IEC20000があります。また、FitSMやVeriSMのような軽量な代替フレームワークは、従来のフレームワークほどの複雑さを必要としない組織にとって、よりシンプルで効率的なアプローチとなります。
フレームワーク以外にもLean、Agile、DevOpsなどのさまざまな手法があり、継続的な改善や迅速なサービス提供、ITとビジネス部門の連携強化を実現するために、ITSMのプラクティスと組み合わせて活用されることがよくあります。これらの手法は特定の状況で価値をもたらしますが、業界において最も広く参照されているフレームワークは依然としてITILです。
組織が1つのフレームワークに縛られる必要はありません。多くの場合、複数のアプローチから要素を組み合わせ、自社の文化や顧客の期待、運用上のニーズに合ったITSM戦略を作成します。重要なのは、決められた手順に厳密に従うことではなく、高いサービス可用性や事業継続性を支える適切なフレームワークを選び、柔軟に適応させることです。特にITILは、インシデントの管理やダウンタイムの最小化、そしてITサービスが重要な業務機能を継続的に支える仕組みを確保するための実績ある基盤を提供します。
ITSMを導入した後に発生しがちな失敗やつまずきを避けるため、以下の点を念頭に置いておくことが重要です。
効果的なITSMフレームワークは、企業の優先事項と直結し、過度に制約的になることなく内部効率を高めます。プロセスが多すぎると業務が滞り、逆に少なすぎても遅延を招く可能性があります。重要なのは、その適切なバランスを見つけることです。組織としての「完璧」を目指すのではなく、生産性や従業員体験を意義のある形で向上させることが目的となります。
目標の明確化は極めて重要です。従業員のオンボーディングを加速させる、ダウンタイムを最小化する、内部ワークフローを高速化するなど、まず何を達成したいのかを明確にする必要があります。目標が定まれば、それを支えるプロセスを逆算して設計できます。ITSMフレームワークを設計する際は、ITILが最も一般的かつ包括的な出発点となります。しかし、最終的な成功は、プロセスを組織の目標に徹底的に一致させることによって実現されます。
たとえば、ノートパソコンや機器の注文から納入までに通常3日かかる場合、新しい従業員が入社翌日から業務を開始できるようにするには、そこから逆算して準備する必要があります。そのためには、入手可能なアイテムのカタログを整備し、明確な発注手順を定め、必要な自動化を導入するといった仕組みづくりが求められます。
効率的で信頼性の高い、ユーザー中心のサポートを提供すると同時に、継続的な改善と長期的な成功のための基盤を構築するには、ITSMのベストプラクティスを採用することが不可欠です。
ITSMは、自動化やカスタマーサービスAIを抜きにして考えることはできません。これらのテクノロジーはITチームを支援し、内部プロセスを効率化するために不可欠なツールです。ここで、押さえておきたい主なメリットを紹介します。
組織内のIT業務の効率をITSMがどう支えているのかを十分に理解するには、その中核となるプラクティス(構成要素)に分けて考えることが役立ちます。以下は、ITSMの重要な構成要素です。
効果的なITSMを実現するには、自社のニーズに合ったプラットフォームを選ぶことが重要です。日々の業務を効率化し、事業の成長や、従業員や顧客の期待の変化に柔軟に対応できるプラットフォームが適しています。
基盤は特に重要です。セキュリティと拡張性を備え、統合された単一のプラットフォーム上に構築されたITSMソリューションが推奨されます。こうした基盤であれば、導入がシンプルになり、メンテナンスも容易で、ニーズの変化に柔軟に対応できます。
すべてのデータを統一された単一のプラットフォームに集約し、チーム間の連携を促進し、カスタマーサービス業務の強化に役立つAIや自動化機能が組み込まれたソリューションが有効です。AIエージェントは重要な情報の抽出や要約をすばやく実行し、トレーニングをすれば担当者のワークフロー全体を処理することも可能です。さらに、自動化ツールを活用することで、手作業にかかる時間を削減し、問題解決のスピードを高め、より良い顧客体験を提供できます。
Service CloudはSalesforceのプラットフォームを基盤としています。このプラットフォームは、大規模組織のITチームが求める堅牢性、信頼性、拡張性、セキュリティを備えた、6万社以上のお客様に信頼されている統合基盤です。この実績あるプラットフォーム上で提供されるインテリジェントなワークフロー、リアルタイムのインサイト、カスタマーサービスAIエージェントを活用することで、担当者は必要な情報をすばやく見つけ、業務をより正確に遂行できます。さらに、振り分けや承認、システム更新などを高度な自動化で処理することで、全体的な業務効率を大幅に高められます。
カスタマーサービスは、表に見える対応だけで成り立っているわけではありません。シームレスなサポート体験は、裏側で稼働するシステム、ツール、プロセスに支えられており、ITサービス管理(ITSM)はその基盤となるフレームワークです。
ITSMをビジネス目標に合わせ、可視性を高め、定型業務を自動化することで、チームはより迅速に動き、質の高い体験を提供できるようになります。適切なITSM戦略があれば、オンボーディングの遅れから機器のトラブルに至るまで、これまで業務の妨げになっていたあらゆる課題を、高品質で生産的な運用に変えることができます。
ITSMの主要なプロセスには、インシデント管理、問題管理、変更管理が含まれます。これらは、迅速な問題解決、根本原因の特定、統制された更新を実現するための重要な仕組みです。さらに、サービスリクエストへの対応や資産管理のようなコアプロセスも、信頼性が高く効率的なITサービスの提供を支えます。
ITSMがもたらすプロセスの効率化や問題解決の迅速化により、顧客はより速く、より信頼性の高いサービスを受けられるようになります。また、透明性と一貫性も向上し、顧客体験全体の向上にもつながります。
はい。ITSMは、プロセスの標準化、ダウンタイムの削減、定型業務の自動化を通じて、組織全体の業務効率を向上させます。ITチームの迅速な問題解決、適切なリソース管理、サービスとビジネス目標の整合を支えます。その結果、運用がよりスムーズになり、コスト削減にもつながります。
ITSMフレームワークは、ITサービスの提供と管理のベストプラクティスを体系化したものです。ITILのような代表的なフレームワークを活用することで、プロセスの標準化やサービス品質の向上、ITとビジネス目標の整合が可能になります。また、ワークフローの効率化、エラーの削減、一貫性のある顧客中心のサービス提供が実現します。
ITSMは、プロセスの標準化、明確なサービスレベルの設定、ビジネスへの影響にもとづいたIT施策の優先順位付けによって、ビジネス目標との整合を確保します。これにより、ITチームは価値提供に集中し、パフォーマンスを向上させ、戦略的な目標の達成をサポートできます。こうした整合が、組織全体のより良い成果につながります。