今のスタートアップ企業は、最初からSalesforceを導入して ”最速の成長" を目指すことができる。紆余曲折を経てやっとSalesforceの活用にたどり着いた私からすると、その過程を全部すっ飛ばせる今の起業家の方たちが本当にうらやましいです”

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長  大石 良 氏
 

「今のスタートアップ企業は、いいアイデアを持っていれば初期段階でまとまった額の資金を調達できるので、最初からSalesforceのような優れた製品を導入して“最速の成長” を目指すことができる。紆余曲折を経てやっとSalesforceを活用できるようになった私からすると、あの過程を全部すっ飛ばせる今の起業家の方たちが心底うらやましいです」

 株式会社サーバーワークス(東京都新宿区)の代表取締役社長・大石良氏は、2000年の創業から2019年3月の東証マザーズ上場までの19年間の道のりを、感慨深げにそう振り返る。

 同社は、「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンのもと、米Amazon社のクラウドサービス、アマゾン ウェブ サービス(以下︓AWS)に特化したソリューションサービスを提供するクラウドインテグレーターだ。同社は2009年、自社でAWSを利用し始めたことをきっかけにAWS関連事業を開始。世界1万社超のAWSパートナー企業の中でわずか88社(2019年7月現在)しか保持していない最上位の「プレミアコンサルティングパートナー」に2014年以降毎年認定され、この分野の先進的企業として名高い存在となった。そして、2019年2月にAWSの導入実績が700社を突破、翌月には念願の上場を果たしている。

 「私たちがここまで来られたのはSalesforceのおかげ」と謙遜する大石氏だが、冒頭の言葉通り、その道程は決して平坦ではなかった。AWSのインテグレーション事業へ参入する直前の2008年にSalesforceを導入したものの、当初は社内で利用が定着しなかった苦い経験がある。

 そんな同社がどのようにして、Salesforceをフル活用するようになったのか︖ そして現在に至るまで、Salesforceでどんな成果を上げ続けているのか︖ その軌跡をたどってみよう。

 

Salesforce導入前、同社は、勤怠やプロジェクト工数の管理を複数のシステムで行っていた。そのため、データの入力に手間がかかり、またデータ同士を連携させて経営改善に活かすことができない、という課題を抱えていた。それらを解決するため、Salesforceの導入を決意した大石氏。「当時当社は出資を受けていなかったので、銀行から借り入れまでして、まさに清水の舞台から飛び降りるような気持ちで導入に踏み切った」という。

 にもかかわらず、Salesforceの利用は現場で定着しなかった。その原因について、大石氏はこう分析する。

 「今にして思えば、経営者である私自身が、Salesforceというクラウドサービスの重要性を理解していませんでした。また、経営改善のために全社的に使っていくんだ、という強い意志にも欠けていました」(大石氏)

 そこで同社は一時、社外の製品に頼るのをやめ、システムを自社開発する方向へかじを切る。しかし、その取り組みも失敗に終わってしまった。

 「社員の7割はエンジニアなのだから、当社の用途に合うシステムを自作すればいいじゃないか、と思って作ってみたんです。ところが実際には、想像したようにはうまく機能しませんでした。自作すれば、自分たちの手にすごくフィットするものができそうな気がしますよね。でも、それは一種の錯覚なんです。現実には、エンジニアのリソースに余裕があれば開発が進むけれど、余裕がないとまったく進まない。つまり、サービスをアップデートするスピードが、自社のリソースによって制約を受けてしまうわけです。結局、現場からシステムの改善要求があっても、使い勝手はいつまで経ってもよくならない。ユーザインターフェースやセキュリティなど、Salesforceと同等の機能を持つシステムを内製で実現するには、とてつもないリソースが必要なのだと痛感しました」(大石氏)

 今度こそSalesforceの利用を定着させなければならない。そのためには、経営者自身がSalesforceの利点を熟知し、率先して改革を推し進める必要がある。そう悟った大石氏は、活用方法や経営上のインパクトなどについて懸命に学び、自らの主導でSalesforceの全社展開を開始。社内の理解を得て、ようやく定着化に成功したのである。

 同社は、Sales Cloudを本格稼働させると同時に、勤怠管理・工数管理・経費精算などの機能をひとつに融合したクラウドプラットフォームであるチームスピリットを導入。そこへ各プロジェクトに費やした時間などを入力することによって、プロジェクトの稼働状況や損益をSalesforceのレポート機能で確認できるようにした。

 「Salesforceとチームスピリットの連携によって、各プロジェクトの採算や、エンジニアごとの売上がひと目でわかるようになり、各プロジェクトにどの程度のリソースを投入すべきかを的確に判断できるようになりました。そういうレベルにまで一気に高められたのは、率直にいって驚きでしたね」(大石氏)

 そのように、通常は目に見えにくいエンジニアの売上が数字として明示されるようになったことは、思いがけない副次的な効果を生み出した。

 「それまではエンジニアに対して、『あの人はいいエンジニアだよね』『あの人はもっとがんばれる』といった定性的な評価しかできなかったのが、売上という数字で定量的に評価できるようになりました。すると、実はエンジニアに対する定性的な社内評価というのは、売上の金額とほぼ一致していることがわかったんです。

 それによって、『もっと勉強して開発スピードを上げろ、といわれても、自分ではちゃんとやっているつもりなんだけど』と思っていた人が、『やっぱりできていなかったんだ。もっとがんばらなくちゃ』と発奮するようになりました。もちろん、数字を見てへこんでしまう人もいたと思いますが、全体としては競争意識が高まって、開発の現場に活気が生まれたと感じています」(大石氏)

 同様の変化は営業の現場でも起きていた。商談や売上など、営業活動に関するあらゆるデータを入力、可視化したことで、営業担当者たちが、より高いレベルを目指して考え、行動するようになったのだ。

 Salesforceは、現場に与えた好影響をも上回るメリットを経営側にもたらした。Sales Cloudには、商談の数や進捗状況、確度など、営業に関するすべてのデータが入力されている。ダッシュボードでそれらを見れば、正確な売上予測を立てることができる。経営者にとってそのメリットは大きい、と大石氏は話す。

 「なぜなら、先行投資が非常にやりやすくなるからです。売上予測が立っていれば、営業やマーケティングにどの程度の予算を費やしてもペイするか、という観点から的確な判断を下せる。会社を成長させるため、経営者としてより積極的に行動できるようになりました」(大石氏)

 続けて大石氏は、Salesforceによって売上などのデータの正確性が担保されていることは、IPOを目指す上でも極めて重要な意味を持った、と強調する。

 「当社では、商談がSalesforce上で一定のフェーズに達すると、自動的に会社の売上としてカウントされる仕組みになっています。ただしかつては、その後の商談でなにか問題があったりしたとき、一旦確定したはずの売上を営業担当者が確定前の状態に戻せるようになっていた。そうすると当然、会社の売上の数字が狂ってしまいます。

 IPOにせよバイアウトにせよ、イグジットの際には、そういう売上の正確性などを含めたオペレーション面がちゃんとしていてはじめて、企業としての価値を最大化できる。ですから当社では、その部分をより厳格に管理するようにしました。『Salesforceには売上をはじめ、ビジネスに関する100%正しい情報が丸ごと入っていますから、どうぞ見てください』といえる状態になったことは、IPOの審査をスムーズに進める上で大いに役立ちました」(大石氏)

 さらに同社は、Pardotの機能のひとつであるEngagement Studioを利用し、見込み客の発掘・育成にも取り組み始めている。展示会で獲得した名刺のデータをPardotに取り込み、そこに対して自動的にメール配信するなどして、これまで手をつけられなかった膨大な数のリードを有効活用できるようになりつつあるという。

 そのような営業・マーケティング改革の結果、主力事業であるAWS関連の売上は、Sales Cloud導入1年後の2013年に約5億だった売上は、2019年に44億7,700万円と9倍近くまで増加した。「もちろん、そのすべてがSalesforceの効果というわけではありませんが」と前置きした上で、大石氏はいう。

 「当社にとってSalesforceは、業績を伸ばすためのツールというより、もはやこれがないと日々の業務が回らない、置き換えのきかない“社内インフラ” になっている。IPOを目指すにあたって、データの正確性を担保し、リスクのないオペレーションを実現できるという意味でも、現代の起業家には欠かせないものだと実感しています」(大石氏)

 
 
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