ニューメキシコ州財務管理局における
緊急家賃支援プログラム

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次世代のトレイルブレイザー

ニューメキシコ州財務管理局(以下、DFA)は、行政が財政的な責任を果たすために、州政府や地方自治体に対する監督や助言、問題解決の支援、および予算指示を行う機関です。

同局でCIOを務めるJoseph Baros氏は、次のように話しました。「ニューメキシコ州には様々なルーツを持つ方々が暮らしています。そのため、住民の生活スタイルも、ほかの州にはない独特のものがあります。すべての住民は、個々のニーズに合ったサービスを受ける権利があり、社会階層の違いによって不平等を起こしてはなりません。それを実現するのが私たちの仕事です」。

 
 

DFAは、ニューメキシコ州の職員を支援し、市民の利益を守ることを目的として財政の健全性を保つことを支援しています。具体的には、DFAは州及び行政機関に対する責務として、行政機関の問題解決能力が高いレベルで維持され、執務能力が正しく発揮できるように実務を支援しなければなりません。連邦政府の補助金や支給資金の拡大・延長に伴い、DFAは、求職中などで支援が必要な住民への家賃補助の支給管理やコンプライアンスに対する監査機関としての役割を担うことになりました。その理由は、支給プロセス全体で透明性を確保した上で、専門的かつ効率的な方法で、本当に資金を必要とする住民に支援金を提供するためです。

「ニューメキシコ州は、経済的に恵まれていない州ですが、私たちは目の前に立ちはだかる障害や悪影響を克服しながら、人々に成功をもたらすことに誇りを持っています。私たちがなすべき事には文化的背景があり、物語があるものです。それが分かれば、誰もが失敗を予想されるような困難に立ち向かい解決する力になります。」とBaros氏は話しました。今回のミッションを遂行する新たな方法として、DFAは、資金を迅速かつ効率的に支給することができる新たなシステムを導入することにしました。「クラウドを採用した結果、私たちのミッションに成功の道筋が見えました。申請者と職員はどちらも、いつでもどこからでもサービスを利用できるようになったのです」とBaros氏は付け加えました。

(プラットフォームにSalesforceを採用)
農村地区でのデジタルトランスフォーメーション。

今回のプロジェクトは、新型コロナのパンデミックを受けてのものです。DFAは、前代未聞の状況の中、どうすればサービスや業務を継続できるかという課題に直面しました。「ニューメキシコ州は都市型の地域とは違いブロードバンドの普及率が低く、そのことがDFAの職員がリモートワークを推進する上での課題となりました。住民サービスの継続のためにも職員が自宅でも仕事をできる環境を整えなければならなかったのです。ハードウェア機器を揃え、VPNアクセスを可能にし、セキュリティ対策を行うことが必要でした。しかしそれでもなお、インターネットへの接続環境と無線LANのスピードにはバラツキがあったため、当初職員のリモートワーク環境は大きな課題を抱えたままでした」とBaros氏は述べました。

DFAにとって、支援金を迅速かつ効率的配分することができるプラットフォームは不可欠でした。「いつでもどこでもサービスを提供できる体制が整い、それが新たな日常となった後も、すべての職員のネットワーク環境が同じというわけではありませんでした」とBaros氏は言います。さらに、同氏はこう続けます。「州政府の職員として、私たちが業務に最善を尽くし、デューディリジェンスを確保するためには、遵守すべき規則とコンプライアンスが存在します。私たちは、DFAの職員に対して本来の仕事に集中してもらえるように正しい仕事の進め方のトレーニングを実施し、ブロードバンドの利用が難しい場合はワイヤレス環境の活用方法に関するベストプラクティスを共有しました」

また、限られた時間でシステムを稼働させるため、ニューメキシコ州はパートナーであるMTX社(米国テクノロジーコンサルタント会社)と協力して、導入作業を進めました。Baros氏は、「MTXはSalesforceの導入に関しての専門性を活かし、最高のユーザーエクスペリエンスを開発・展開できるよう尽力してくれました。私たちが市民に対するのと同じように献身的にプロジェクトにコミットしてくれたおかげで、検討事項に優先順位をつけ、業務をモダナイズし、予想外の事態にも対応することができました」と話しています。

セキュリティを確保しながらスピーディにミッションを遂行

DFAは、連邦から州に割り当てられたすべての助成金や資金を管理できる緊急家賃支援アプリケーションの運用を開始しました。これにより、DFAは2つの役割を持つ機関になりました。1つ目は、以前から実施している居住者の給付認定の条件をチェックする役割。そして今回新たに、資金の流れを追跡し、適切な公的機関に資金を割り当て、緊急家賃支援プログラムを運用する役割が加わりました。Baros氏は、「これまでの経験を生かしながら、支援金アプリケーションを利用して支給プロセスを迅速に処理しています。支給前にセキュリティを確保した上で、支給対象の個人とその理由を検証し問題がないことを確認します。このアプリはシンプルで優れたユーザエクスペリエンスを備え、安定した運用環境を実現しています。支援金が意図せぬ使い方をされず、間違いなくニューメキシコ州とその市民の未来への投資となっていることを確認するために、州の税務局と連携して、クロスチェックを行っています」と話します。さらに、省庁間の協力により、すでに州の他のプログラムで受給資格を満たした申請者を認識し、資金の支払いを自動化することで、業務を最適化することができました。

MTXの協力により、3週間後にはDFAのウェブサイトからアプリケーションが公開され、市民が申請を開始できるようになりました。開発を担当したMTXのアカウントエグゼクティブ Bryce Sutherland氏は、「DFAのような組織であっても、クラウドを利用すれば堅牢なシステムをわずか数週間で立ち上げられることを実証できました。Baros氏の率いるチームは、厳しいスケジュールではありましたが、明確なビジョンの下で、チームワークよく、エンドツーエンドのERAPソリューションを迅速かつ効率的に開発した」と話しています。その仕組みは以下の通りです。

  • セキュアでコンプライアンスの確保をクラウド上で

新たなシステムは、Government Cloud Plus(英語)上のSalesforce Customer 360 プラットフォームに構築しました。住民中心のデータモデルによって、住民の体験を高め、その期待にこたえられるシステムです。セキュアで、絶えず変化するコンプライアンス要件にも対応できるソリューションになっています。

セキュリティ対策には万全を期し、Salesforce Shieldを導入し、Platform Encryptionを使用することで、システムに保存されているデータの保護と監視を強化することができました。

  • ニーズの特定

このシステムを使って住民が支援金を申請するには、Experience Cloudで構築されているDFAのWebサイトにおいて、ユーザーID(電子メールアドレス)とパスワードを設定します。その後、申請者は個人情報や申請に必要な各種情報を入力すれば、承認申請書が自動生成され、ワンクリックで提出できます。申請後には、連絡先に対して、手続きが完了するまで最新情報をリアルタイムに提供します。

  • 顧客満足の向上

”提出された承認申請書データは、税務局および厚生局と連携して認定条件をクロスチェックします。すべての申請は、「ケース」としてService Cloudの中で管理され、事前審査の段階から、支援金が支給されるまでのすべてのプロセスを監視・管理します。Baros氏は、「申請プロセスを自動化することはもちろん、申請者の資産の調査など、申請者の情報をあらゆる角度から見られるようになりました。これこそがSalesforce Customer 360の価値でしょう。その結果、私たちは申請が適格であるという確証を得た上で、支援金を迅速かつ効率的に支給できるようになりました」と話しています。

 

これまでの経験を生かしながら、Salesforceプラットフォームを使って支援金支給プロセスを迅速に処理しています。”

ニューメキシコ州財務管理局(DFA) 最高情報責任者 Joseph Baros氏

あらゆる側面からの検討を可能にするクラウド上のケース管理

2021年4月5日以降、5,370万ドルの支援金が支給され、2021年10月には第2回目の支給が始まりました。Baros氏は、「今後数年にわたって、最高のユーザー体験を提供しながら、迅速かつ効率的に支援金を支給し続けられると確信しています。優れたサービスを提供するためには、物事の両面からプロセスを眺めることが重要です。私たちは、市民の視点に立って、システムを選定しました。そして、住民にとっても職員にとっても、シンプルで利用しやすいシステムを開発することができました」と話します。

DFAは、およそ半年間で2万件以上の申請を受理し、2万2000人を超える個人に支援金が支給されました。しかし、この素晴らしい仕事は1人でできたわけではありません。Baros氏は、「私たちが州の税務局や厚生局と連携したように、他の部局や団体と協力できる部分を見出し、外部のリソースを活用し、ベストプラクティスに学ぶことが重要」と提案しています。最後にBaros氏はこう締めくくりました。「適切なパートナ、私たちの場合はMTXでしたが、との高いレベルのコミットメントとチームワークがあれば、どんな高い目標も達成できるのです」

 

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