ソニービズネットワークス
“Salesforceのとどまることなく進化を続けているという点は、我々の事業内容と一緒です。そして、我々がエリアを拡大し事業を拡大する中で、Salesforceの拡張性や技術への期待を導入当初から抱いていました”
サービス提供エリアの拡大に対応できるSalesforceの拡張性の高さ
“通信の常識を変え、ビジネスを変える。”ソニービズネットワークスは、こんなビジョンを掲げる法人向けインターネットサービス提供企業だ。同社はISPサービス「So-net」を提供するソニーネットワークコミュニケーションズの子会社として2012年7月に設立された。個人向けのインターネット回線として確かなブランド地位を築き上げた「NURO 光」とブランドを明確化させるために、法人向け次世代ICTソリューションである「NURO Biz」という新たなブランドで法人向けインターネットサービス市場に進出した。
サービス提供を始めたのは2013年4月、当初は関東一都六県のエリアに限定していたが、事業の拡大に合わせ2017年には東海と関西地区にもエリアを広げたという。
会社設立時より活用するSalesforceについて、同社の執行役員パートナー営業本部 本部長 新井俊介氏は次のように話す。「Salesforceのとどまることなく進化を続けている点は、我々の事業内容と一緒です。そして、我々がエリアを拡大し事業を拡大する中で、Salesforceの拡張性や技能への期待は導入当初から抱いていました」。
月間の個人レベルの進捗状況がダッシュボードで可視化される
「NURO Biz」の営業活動においては、同社の営業が直接エンドユーザーに販売を行う直販事業とチャネル販売を行うパートナー事業の2種類に分かれている。その中で、同社の顧客管理はすべてSalesforceで一元化されているという。営業状況の進捗確認や会議ではSalesforceのダッシュボードが活用されており、新井氏は「見込み顧客の管理だけでなく月間の案件達成率や販売件数、売上から、各個人の目標管理、スケジュール管理まで一元化してSalesforceのデータを見ながら打ち合わせをしています。社内工数も減りますし、進捗状況がグラフィカルに可視化され、視覚的に分かりやすいので、今月はどれくらい進捗しているというのがSalesforceのダッシュボードだけで管理できます」と話す。個人レベルで進捗状況が可視化されることにより社員のモチベーションも向上し、営業の生産性は上がっているという。
また、第2営業本部では営業戦略室という営業の生産性をどう上げるかをミッションとする部署が立ち上げられ、Salesforceの運用管理、データ活用の提案を行っている。執行役員 第2営業本部 本部長の竹澤公規氏は「営業戦略室は、Salesforceを運用していくとデータの重複や、運用状態の課題等が見えてきますので、そこを整理することとSalesforceをさらに効率的・効果的に活用する方法を模索することを目的に立ち上げた組織となっています」と話す。
グループの厳しい審査をクリアする信頼性と負担の少なさが決め手に
もともと同社がSalesforce導入の検討を始めたのは、同社の設立前まで遡る。新井氏は「当初、顧客管理システムは自社で開発をして、それを活用していこうと、管理は社内で立ち上げていこうという前提がありました。しかし、事業開始までの短い期間で、顧客管理システムを自社開発することが難しくなったのです。そういった事情もあり、設立前にクラウドの顧客管理システムの導入を決定しました」と話す。
そういった事情もあり、設立前からクラウドの顧客管理システムの導入を決定していたものの、クラウドのシステムを導入するにあたってはソニーグループ内の厳しい審査もクリアしなければならない状況であった。Salesforceはその点を問題なくクリアできていたため、拡張性や、開発の負担の少なさという点を踏まえて導入を決定したという。
法人営業に合った中長期での成約にも効力を発揮
Salesforceを導入して以来、各部門でどのような効果を実感しているのであろうか。「NURO Biz」の直販を行う執行役員 第1 営業本部 本部長の柏原秀行氏は次のように語る。「弊社の事業は法人営業なので、短期的に成約につながると言うよりも中長期で成約が決まるケースが多いです。そのため、契約にならなかった案件も含めて、Salesforceにはすべてのデータが集約されています。当初は契約に結びつかなかったものでも、過去の顧客接点や案件詳細をもとにアプローチを掛けていくことで長いスパンで契約に繋がるケースも多々あるからです。過去のデータの管理から更新まで一元的に管理できる点は、中長期での成約獲得に非常に役立っています」。
事実、直販においては前年度比130%で成長しているという。
チャネル販売での案件状況も可視化して一元管理
Salesforceはチャネル販売でも役立っている。チャネル販売においては「NURO Biz」を再販してもらうか、代理店にエンドユーザーを取り次いでもらう取次という2種類の形態で行っている。代理店経由の案件管理や受注管理もSalesforce上で行っており、代理店の販売状況も一元管理できているという。
新井氏は「各代理店様の成約状況だけでなく案件進捗状況もSalesforceのダッシュボードで見ることが可能です。ダッシュボードに可視化されたデータを見ることで直感的に今月の案件がどれくらいあるのか、受注状況がどうなっているのかということが一覧で確認できるようになっています。そこでメンバー全員が共通認識として、『今月はこれくらい案件が進んでいる』とか、『今月の見込みはこれくらいある』、『来月の案件創出はどうしよう』といった内容を確認することができます」と話す。
パートナー事業部では前年度比で150%の成長率となっているという。
Pardot、スケジュール管理ツールをSalesforceに連携させさらなる効率化を実現
また、同社がSalesforceの導入を決定をした大きな要因でもあるSalesforceの拡張性についても見てみよう。
特に効果を発揮しているのは、同社が2016年2月に導入したSalesforceとの連携ができるMAツール、Pardotである。新井氏は「Salesforceに入力した見込み顧客全てに電話かけて、お客様のところに伺って、成約まで繋げるということには限界があると思っていました。そのため、オンラインとオフラインの顧客の行動を可視化出来るMAツールは絶対必要だなと思い導入しました」と話す。同社の直販事業部ではPardotと過去の商談内容を参考に顧客に寄り添ったアプローチ、提案を心掛けている。フォローアップを行う際にはPardotと商談概要を事前に確認し、顧客が抱えている課題に沿ったフォローアップやメールによる情報提供を行っており、その効果からサービス開始年度比で年間7.5倍のお問い合わせが入っている。
また、チャネル販売の新規開拓においては代理店担当者様が同社のサイトでどのようなサービスを閲覧しているかなどデータを取り、そこから狙いを定めたサービスの提案を行っている。実際、Pardot導入によって代理店とのコミュニケーションのスピード感が上がったと新井氏は指摘する。「代理店様とは、すでにある程度の関係性もできあがっている中で、Pardotによるスコアリングによって、弊社サイトのどんなサービスに興味を持って閲覧しているのかなど、手に取るようにわかるので、ニーズに則した提案ができます。時には、“最近あのサービスをよくご覧になっていますね”とオープンに話すこともあります」
取次代理店においてもエンドユーザーのサイト閲覧行動を起点に代理店に情報提供し、アプローチをお願いしたりしているという。
Pardotのタイムリーなメール施策による効果の高さも同社が評価するポイントだ。2016年の10月から7回に分けてサービスエリア拡大のお知らせを、Pardotによる一斉メールで送信したところ、例えば2018年6月に送信したメールでは、26.5%と非常に高い開封率であった。Pardot活用前に送った案内メールは2%ほどの開封率だったので、大きく改善されたことになる。さらにインサイドセールスの新メンバー教育のためにPardot研修資料を自社作成するなど、今では同社の営業施策に欠かせないツールになっている。
もうひとつ同社が導入しているのが、営業のスケジュール管理を行うためのスケジュール入力支援アプリケーションCalsket(カルスケット)だ。営業担当者のスケジュール管理をSalesforceと連携させることで、担当に紐づく顧客の営業進捗もSalesforceに連携させることができているという。Calsketにスケジュールを入力するだけではなく、営業後に顧客のステータスを入力することで担当と顧客のデータがSalesforceに紐付けられる。
さらに今後は、他にも営業担当の電話数や訪問数をSalesforceに紐付かせ、Salesforce上で管理できるBIツールも導入を予定している。
“足を使わない”新しい形の営業プロセスを構築したい
今後の活用については、まずは現在親会社の基幹システムと連携している部分を全てSalesforceに移行し一元管理したいという。
また、Salesforceによる顧客管理を代理店にも使ってもらうことも大きな目標だという。そのことについて新井氏は次のように語る。「私はこれからの新しい営業活動の形として、“座っていても成約を取れる組織づくり”を目指しています。そのため、代理店様を経由して、自分たちが特に出向かなくても、SalesforceやPardotなどを活用することで、効率的に申込みがくるような仕組みづくりというのも進めていきたいと考えています」。