コールセンターの品質向上のための3つのポイント

投稿日:2020.11.27

カスタマーサクセスの実現に向けたビジネスの最前線を担うコールセンターのオペレーターは、顧客と1対1で向き合い、時には厳しいクレームにも対処しています。オペレーターのコンディションが、コールセンターの対応品質に影響を及ぼす場合もあります。

日々のオペレーションでオペレーターが抱く孤独感やストレスを和らげ、高いモチベーションを保ってもらい、その結果、長期的にコールセンターの品質を高めていくためにはどのようにすればいいのでしょうか。

ここでは、コールセンターの品質向上のために実行したい3つのポイントをご紹介します。

一般的なKPIから見えない実態を可視化する

オペレーターが日々行う応対が運営方針に沿うものかどうか、明確な根拠を示して評価をするためには、適切なKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)の設定が欠かせません。

現在コールセンターで用いられる代表的なKPIとしては「応答率」「稼働率」「平均処理時間」などが挙げられます。中でも応答率は「顧客から着信した電話のうち、つながるまでに切られる(放棄呼)ことなく応答できた割合」を示す数値であり、きわめて一般的なKPIとしてどのコールセンターでも重視されています。

しかし、「10秒以内」「4コール以内」といったわずかな呼び出し中に切れた電話(ショートアバンダン)を、長い待ち時間が生じた放棄呼と同じように扱うのは実態にそぐわない面もあります。というのも、ショートアバンダンでは「確認に必要な会員番号が手元にないと気づき、かけ直そうとした」といった顧客側の事情も大いに考えられるからです。

こうした問題点に気づいているコールセンターの中には、ショートアバンダンを応答率の集計対象から外し、独自のKPIを設定しているところもあります。

応答率で見落とされがちな要素は、これだけにとどまりません。例えば「10人の顧客からの電話が集中し、いずれもつながらなかった場合」と「同じ1人の顧客が、いらだちのあまり10連続で電話してもつながらなかった場合」は、応答率としては同じ数値を示します。しかし、状況が全く異なるのは言うまでもありません。

Webマーケティングの世界では、「同じ日に」「同じ端末環境から」「複数回のサイト閲覧」があっても「同一人物によるひとまとまりの行動」とみなして1件と数える「ユニークユーザー数」という指標があります。これと同じ考えに基づき、同一顧客からの着信が一定時間内に集中した場合、まとめて1件と数える「ユニーク応答率」を用いた集計を採り入れるコールセンターも、近年では増えています。

コールセンター運営で一般に用いられるKPIは、個別のコールに関わるさまざまな事情を度外視し、極限まで単純化した指標ですから、表面的な増減だけにこだわるのは危険です。実績をもとにコールセンターの現状を正しくつかみ、オペレーターを的確に評価するには、これまで以上に多くの観点を採り入れた指標を設け、運営方針に沿った判断材料が得られるか確かめながら、より効果的なKPIへと常にブラッシュアップしていく必要があります。

こうした複雑な設定・集計作業を、現場の管理者が自らExcelシートなどを使って行うには多大な労力がかかります。KPIに関する高度な集計・分析をリアルタイムで行う専用ツールを活用しながら、得られたリソースをオペレーターとのコミュニケーションや、本社との情報共有の強化に充てることも有力な選択肢といえるでしょう。

現場完結型の業務改善でPDCAサイクルを高速化する

コールセンターのpdca

 

オペレーターの知見を反映してアップデートされたFAQのほか、顧客対応の模様を記録したコールログ、品質向上に向けたKPIの進捗、クレームの発生状況など、コールセンターの運営において参照すべき情報は多岐にわたります。

新たな施策への反映をスピーディーに行うためにも、また実態にマッチした運用への見直しでオペレーターのモチベーションを高く保つためにも、これらの情報を読み解いて業務にフィードバックしていく中心的な役割は、実務から遠い本社ではなく現場で担うのが理想的です。とはいえ現状では、PDCAのサイクルを自律的に回すコールセンターばかりではありません。

現場主導での業務分析・業務改善が難しい理由は、大きく分けて2つあります。1つは、データ分析や、それに基づいたフィードバックに関して「そもそも現場の管理者が果たす役割がはっきりしない」という根本的な問題で、依然ここを克服できていないコールセンターは相当数にのぼるとみられます。

同じコールセンターが同じミスを2度、3度と繰り返すようでは、顧客の信頼を失うばかりでなく、オペレーターの士気も大きく損なってしまいます。重要なのは、長期にわたるオペレーションの中で管理者が交替しても、業務の検証や見直しに対するしっかりした基本方針が引き継がれていくことであり、そのためには具体的な手続きを整備した上で、管理者が果たすべき役割に対応する権限を持つことを明確化しなければなりません。

現場主導のPDCAサイクルを阻むもう1つの理由となっているのが「業務の見直しに伴って発生するシステムのカスタマイズを、現場だけで完結できない」という問題です。これは「コールセンターで使うシステムの管理権限が本社にある」などの形式面と「スキルや仕様の関係上、現場対応が困難」といった実質面の双方が理由となりえます。

コールセンター向けの管理システムには、直感的なユーザーインターフェースで容易にカスタマイズでき、ユーザーの利用場所にかかわらず権限を付与できるクラウドベースの製品も増えています。こうしたシステムに移行することで、双方の課題を一挙に解決するアプローチも考えられるでしょう。

人の強みを活かすためにシステムを活用する

コールセンターのシステム活用

 

「今後、いっそう重要性を増すコールセンターのミッションを、限られた人員できちんと果たすためには、ここまでご紹介した方法に加え、システムを最大限に活用し、オペレーターには「人間にしかできない業務」に集中してもらうことで、強みを引き出す戦略が欠かせません。

自動音声による振り分けで、担当者が集中すべき業務を絞り込む

「オペレーターの長期勤続によるコール品質向上」という課題に対し、システムの効果的な活用は、大きく3つの側面から寄与すると考えられます。

その1つが、IVR(自動音声応答)を用いた「担当業務の絞り込み」です。オペレーターによる応対に先立って顧客に番号入力を求め、用件を大まかに振り分けて誘導すれば、担当のオペレーターが覚えておくべき業務知識の範囲を区切ることが可能です。

これによって情報の抜け・漏れが減り、習熟のスピードも速まるため、より確実な応対が期待できるほか、オペレーターのストレス軽減による離職率の改善が見込めます。

実際には「お客様からの電話に機械がいきなり対応するのは失礼」と考える経営者も、依然少なくありません。とはいえ、表面的な“おもてなし”だけにとどまらず、顧客が真に求めるサービスを提供するためには「簡潔な音声ガイダンス」「迷わず選べるメニュー」「高いレベルの応対」というトータルで満足度を高めていく発想こそ大切だといえるでしょう。

マルチチャネル化で散在した情報を自動集約する

コールセンターの情報の集約 

 

コール品質に直結する従業員の定着率改善を図る上で、システム活用が有効と考えられる2つ目の領域が「情報の集約」です。

急速なスマホの普及は、とりわけBtoCビジネスの現場で顧客接点の多様化をもたらしました。その結果、顧客理解の参考とすべきデータは、既に企業のCRMで管理している通話履歴、取引履歴のほか「メールでの問い合わせ履歴」「ECサイトの閲覧状況」「アプリからのクーポン利用」などに広がり、データの所在は分散していく傾向にあります。

個別の応対時に、こうした各種のデータを適宜、的確に照会できるのは“神業”に近いスキルを持つベテランのオペレーターに限られます。調査に手間取って保留時間を長引かせ、顧客の不満を招くような事態は、コールセンターに携わる誰もが避けたいところでしょう。

顧客に関する多面的なデータを、オペレーター全員が短い通話中にフル活用できる体制を整えるには、データを自動集計し、それらの内容をまとめて表示できるシステムを導入し、手作業での確認を要する事項を極限まで減らすのが合理的です。

オペレーションの改善を通じた顧客満足度の向上やエンゲージメントの強化などをオペレーターが実感し、さらなるモチベーションにつなげるためにも、究極的には顧客体験に関するあらゆる情報を、コールセンター以外も含めた全社全部署で共有する、包括的なデータ活用戦略が望まれるといえるでしょう。

顧客の自己解決を支援する

今日のコールセンター業務において、システム活用が有効と考えられる3つ目の領域が「顧客の自己解決への支援」です。具体的に想定されるのは、よくある質問(FAQ)への回答のようにコールセンター内部で管理しているナレッジを、簡単な操作で外部公開のWebコンテンツに転換できるクラウドベースのソリューション活用などです。

コールセンターを利用する顧客は、オペレーターによる「丁寧な対応」と同等以上に「迅速な問題解決」を望んでいます。「何か気になることがあれば、まずWeb検索で調べてみる」という主体的なスタンスを持つ人も少なくありません。

わざわざ電話するまでもなく、コールセンターで伝えられるのと同レベルの情報がWeb検索からもヒットする状態であれば、リテラシーの高い顧客からは「すぐ自己解決できた」と高い評価が得られるでしょう。

それ以外の場合でも、例えば「検索数が多いキーワードを盛り込んだナレッジ記事の末尾で関連情報を案内し、それでも不明点が残る人向けにコールセンターの番号を伝える」といったサイト設計をしておけば、「ネット検索だけでは解決しなかったけれども、サポートはしっかりしている」という実感を顧客に持ってもらえます。

「自己解決した顧客からはコールがなくなり、電話してくる顧客からの心証もよい」という環境が、オペレーターとの対話に余裕と円滑さをもたらすのは言うまでもありません。実り豊かなコミュニケーションは確かな実績につながり、コールセンターでの長期的なキャリア構築を大きく後押しすることでしょう。

 

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