顧客の属性や特性に合わせたマーケティング手法、ABMの基礎知識

顧客となりうる企業に対して、その属性や特性に合ったアプローチをする。それがABMの本質です。顧客に寄り添う発想をするこのマーケティング手法について確認してみましょう。
ABMという言葉は知っているけど、どんなものかはわからないという人に向け、ここではその概要を解説します。

そもそもABMとは何か

ABMとは「Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)」の略語です。ここでいうアカウントとは、企業の購買担当個人ではなく、企業そのものを指します。つまり、企業を対象単位としてターゲティングし、その企業に合ったアプローチをしていく、BtoBにおけるマーケティング手法となります。
個人の嗜好や行動、価値観に合わせてマーケティングしていくのは、BtoCであれば必須のことです。しかし、BtoBにおいては、個人の印象が必ずしも購買に結びつくわけではありません。社内稟議を通す必要もあるでしょうし、その際に自社製品を気に入ってくれた担当者の意見が必ずしも反映されるとは限らないのです。そこで、「購買担当者」である個人を対象にするのではなく、企業そのものをターゲットに設定して、その企業に合った提案を行っていくのがABMの概念です。

日本ではすでにABMが行われていた?

顧客のニーズをベースに、その課題の解決策を提供する。こうした機能は、ABMの持つひとつの側面です。そして似たような営業手法は、すでに日本においても実践されてきました。
しかし日本の場合、顧客企業に営業担当者が頻繁に出入りし、顧客側の情報を収集しつつニーズをくみ上げ、要求に応じて顧客ごとに最適化された提案を行う形が主流でした。どちらかといえば、既存顧客の御用聞き的な動きの中で、ニーズをベースにした提案が行われることが多かったのです。この方法であれば、既存顧客をつなぎ止めるには力を発揮するでしょう。
しかしABMでは、マーケティングの段階から、個人ではなく企業にフォーカスします。どのような企業・組織に対して、どうアプローチするかを営業の初期段階から絞り込むので、案件化、さらには成約までの確率を高め、効率的な営業活動を実現することができるのです。

なぜ今、ABMが必要なのか?

ABMの概念は、着々と普及しつつあります。その背景には、「ABMを必要としている企業が多いから」という実情があります。ではなぜABMが必要になるのでしょうか。その理由は、おもに次の2つが考えられます。

顧客側の意思決定プロセスの変化

これまで、日本の企業の多くは、トップダウン方式でさまざまなことが決められてきました。トップダウンの企業を相手にする場合、最もパワフルな交渉相手は「経営者」となります。トップを納得させることができれば、その会社を顧客とすることができるからです。ですから、アプローチの対象をできるだけトップに近い、役員クラスに絞り込むことで、高い営業効率を保つことができました。

しかし、業務効率化や生産性向上が企業の大きな経営課題になると、現場をいかに効率良く回していくかが優先課題となります。そのため、ボトムアップ型の意思決定も行われるようになりました。こうなると当然ながら、意思決定に関わる人数が増えていきます。それらすべての人にアプローチすることは、現実的ではありません。
その結果、個人に対するのではなく、その集合体である「企業」をひとつのリードととらえてアプローチするABMの有用性が高まってきたのです。

技術の進歩による環境の整備

リード企業の中で意思決定に関わる人が増えたことは、裏を返せば「その企業に向けてアプローチすれば、意思決定関係者にヒットする確率が、以前に比べて高くなった」ことでもあります。
現在では、多くのビジネスパーソンが活用しているSNSや、展示会・セミナーなどで収集した名刺・アンケートなど、リード企業に関する個人情報は、さまざまなところに眠っています。これまでは、そうしたデータはそれぞれが独立していましたが、MAツールの登場によって、一元管理できる環境が整ってきました。技術の進歩によって生まれたこれらのツールを、活用しない手はないでしょう。また、こうしたツールを活用してこそ、より実効的なABMが可能になるのです。

ABMを行うメリットとは?

ABMとは何か、なぜ必要なのかをご説明したところで、それによってどのようなメリットが生まれるのか見ていきましょう。

クローズしやすい環境を作れる

先にご紹介したように、ボトムアップ型の組織では、経営陣にアプローチをかけたからといって安心はできません。また、購買担当者を確実に押さえても、担当者の意見が導入製品の選定にどれほど活かされるかは未知数ですし、その意見が反映されるとも限りません。
そうした不確定要素を含んだ状況を迎える可能性があるならば、初期の段階で企業全体の需要や課題にスポットをあて、ターゲティングしていくほうが、より成約しやすい環境を作ることができるはずです。
個人はもちろん、企業全体のデータを収集し、管理・分析することで、より的確なアプローチのポイントを見つけることもできるはずです。これは同時に、マーケティング活動の効率化にもつながります。

自社リソースを集中できる

従来は、業種や企業規模といった切り分けで、リードを選別するやり方が主流でした。あるいは、ウェブ上での問い合わせや、展示会・見本市での名刺交換で得られた組織の中の個人に対してアプローチをしていました。もちろん、こうしたやり方が不適切というわけではありません。
しかしABMの場合、組織内の個人ではなく、組織そのものに標準を合わせます。マーケティングの段階で対象組織を絞り込むことで、活動に要する予算や人的リソースを有効に活用することができます。これは、投資対効果の点でも有利でしょう。

PDCAを高速化できる

PDCAの高速化は、どんな場面でも常に考慮すべき課題です。ABMの場合、ターゲット企業をあらかじめ絞り込んでおくことで受注の確度を高めていますから、アクションに対する結果の効果測定がしやすいというメリットがあります。
ABMを使わない場合、さまざまなマーケティング施策はより広い範囲に行うことになります。しかしこの場合、アクションに対する結果のばらつきが大きく、マーケティング施策の仮説と検証がしにくい、というデメリットが生まれます。
しかし、ABMに沿ってキャンペーンやABテストなどの施策を実行すれば、その結果の検証が容易で、確度も高まります。そのため、次の有効なアクションにつなげることができ、結果としてPDCAの高速化・効率化に寄与するのです。

ABMの具体的な手順

ABMはどのような手順で進めていけばいいのでしょうか。もちろん、業界の体質や扱う商材によって違いが出てきます。
ですから、必要に応じてカスタマイズすることが大切ですが、ここでは一般的なプロセスについてご説明します。

1. 対象企業とキーパーソンを選定する

まず、自社の顧客リストや、今後リードとなりうる企業のリストを分析し、それぞれ優先順位をつけていきます。ここでの優先順位は、期待できる取引額やリピートの可能性などを考慮して決めていきます。同じ時間と労力を使って商談を進めていくのですから、自社にとって長期的な利益になり、高いLTVが見込める企業を優先するのは当然のことです。
さらに、企業ごとに意思決定に関わるキーパーソンが誰か、確認します。もしもキーパーソンが不明な場合は営業部門で調査したり、社外から情報を仕入れたりしてもいいでしょう。企業を対象とするABMとはいえ、話をする相手が誰でもいいわけではありません。必ず特定しておくようにしてください。

2. アプローチの方法とその内容を決める

続いて、ターゲット企業のキーパーソンにどのようにアプローチするかを固めていきます。
このプロセスでは、ターゲットに合わせたシナリオを作り、フィットしたコンテンツを作成することが重要になります。どのようなニーズが想定できるかを分析した上で、その課題解決を提案するコンテンツを作れば、キーパーソンが興味と関心を持つ可能性は大いに高まっていくからです。また、コンテンツ内の各要素は、提出資料や営業トークにも十分に反映させ、一貫性を持たせておくことが大切です。
あとは電話やメールなど、最適と思われるチャネルを選び、コンタクトをとりましょう。

3. 必要ならば、補強手段を打つ

自社が発信した情報を見てもらえるよう、補強手段を活用することも有効です。
たとえば、パーソナライズド広告機能を活用すれば、自社製品に興味を持ちそうな層に、優先的に関連性の高い広告を表示したりすることができます。
こうした補強手段は、ウェブやメールをはじめ、オフラインの媒体なども絡めて実施することができますので、必要に応じて実施するといいでしょう。ただし、そのタイミングとメッセージの一貫性には、十分な配慮が必要です。

4. フィードバックで効果測定する

一通りのアプローチが完了したら、効果測定を行いましょう。つまり、PDCAを回していくということです。
ABMは一昔前の、「新規開拓」とは違います。当時であれば、闇雲に電話営業を行い、反応が今ひとつであれば「次だ、次!」という感覚が強かったと思います。つまり、質より量の考え方です。 しかし、ABMはそもそもの発想として「価値が高く、しかも優良顧客となりうる企業」に対象をしぼったマーケティング手法です。ですから、分母は小さくても、案件化・顧客化する確度は高く、ある程度の時間と労力をかけてアプローチすることができます。
ですから、最初のアクションで好反応が得られなかったからといって、そこで終了するのはもったいないことです。結果を測定・分析して、次のアプローチにつなげることが重要です。それを何度も繰り返すことで、優良リードを優良顧客へと導いていくのです。

テクノロジーが実現したABM

ABMが普及しつつある背景には、その実効性や効率が知られるようになったということが挙げられます。過去の日本では、新規開拓といえば、獲得したアポイント数がおもな指標とされることが多かったのですが、それ以上に質が重要であることに、多くの企業が気づき始めました。
そして、もうひとつの大きな要因が、デジタルツールの普及です。効果的なABMの実践にはMAが不可欠ですし、その後のプロセスであるナーチャリングや商談を一元管理するSFAとの連携も重要です。こうした、デジタルツールの使用が日本でも普及してきたことで、それによって実現するABMの概念が普及してきた側面もあります。

日々進化するデジタルツールは、それによって営業スタイルに新たな変化をもたらし、さらなる効率化へと導いてくれます。自社のさらなる拡大のための手法のひとつとして、ABMとともに、MAやSFAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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